私が、宇宙の女王になるわ!だから、貴方は私を守りなさい!

ちょこぱい

猫とネズミ



 パンケーキの店を出ると、何やら通路が騒がしい。皆が同じ方向に向かって走っていた。


 「なんの騒ぎ?皆が逃げて来る方向から大きな音が聞こえるけど」


 「トラ吉!どうしたの?」


 トラ吉は、咲良とレイカの足元で威嚇の姿勢をとっていた。


 《咲良!レイカ!早く逃げるんだ!》


 トラ吉は人の波を、縫うように走って消えてしまった。


 咲良はトラ吉の後を追おうとしたが、レイカに止められた。


 「ちょっと待って、この人の波に逆らって追うのは危険よ!」


 「でも!トラが!」


 「もう少し待ちなさい!そしたらトラを追いましょ!」


 5分位経つと人がまばらになり、逆行して走れるだけのスペースが出来始めた。


 依然として、通路の奥からは大きな衝突音が連続して響いてくる。


 「行きましょ!咲良」


 「うん!」


 咲良とレイカは、トラ吉が向かった方へ走り出した。進むにつれて、通路側の店の壊され方が酷くなってきていた。よく見ると、大きな爪痕と鋭利な物で切断された柱等があった。


 「なんなんよこれ!?怪獣でも暴れてるの⁉」


 その時だった、煉瓦張の壁を突き破って、咲良とレイカの前に、大きな固まりが飛び込んできた。


 現れたのは、大型犬位の大きさになったトラ吉と、その2倍は有るだろう超巨大なネズミだった。


 お互いを牽制しあっている。普通のサイズなら猫がネズミを一方的に追いかけているはずだが、体格差があると立場が逆転している。


 トラ吉も上手くネズミの攻撃を交わしているが、なかなか攻撃に移れないでいる。


 《猫族よ!なぜ、人間を庇う!今こそ、皆で立ち上がり、地上から人間を消し去り 、地球を取り戻す時が来たのだ》


 《違うニャ!そうじゃないニャ!分かり合える人間もいるニャ》


 《人間の味方をするなら死ね!》


 トラ吉は、巨大ネズミの両手に捕まってしまった。ネズミは口元にトラ吉を持っていくと、岩をも砕きそうな前歯を使い、トラ吉の頭を砕こうとした。


 「トラを放しなさい!」


 ネズミの頭に火の玉が当たった。咲良は、手のひらから野球ボール大の火の玉を出して、ネズミの身体中に当てた。


 巨大ネズミは、燃え上がる炎と熱さに耐えきれずトラ吉を放した。燃え上がる巨大ネズミは 理性を失い、咲良に狙いを定めて突進体勢に入った。


 「させないわ!」


 レイカは、手のひらから野球ボール大の氷の玉を作り出した。ボールからは冷気が勢いよく立ち上っている。


 炎に包まれた巨大ネズミに氷の玉を当てた瞬間、ネズミの動きが一瞬で止まり、凍り付いた。巨大ネズミのオブジェの出来上がりだ。


 すかさず、トラ吉が鋭い爪でネズミの頭と体を引き離した。


 「トラちゃん!これはどういう事なの?」


 《助けてくてありがとうニャ、今は、説明してる余裕がないニャ、早くここから離れるニャ》


「そうね、クロスゲート達も来るだろうし、とりあえず、こいつは灰にしときましょ」


 咲良は、ネズミの死体に炎を付けた。


 クロスゲートは、この都市の警察的な役割を担っている国連直轄の組織だ。その実質的な目的は、ECの監視と保護だ。


 「とりあえず、落ち着いて話せるところに行きましょ」


 「うん、寮が良いんじゃないかな。トラちゃんの事を一度寮母さんにも許可貰わなきゃだし」


 「そうね、でも、この大きさの猫はさすがに……」


 《大丈夫ニャ、元の大きさに戻れるニャ》


 そう言うと、トラ吉はお店に居たときの大きさに戻った。


 咲良達は人目を避けながら、モールを後にした。

















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