同志スターリンは美少女です!?

蛇に足

10話 衝撃はフィンランド(と親愛なるソ連)より







あれからフィンランド政府からの返答はない。しかし、だからと言ってそれを理由に開戦することは出来ない。それは、私が先に送った書状のこともそうだし、何よりたかが返答が無いだけで宣戦布告等と蛮族のすることだからだ。


しかし、それでもこのような重大案件を長らく白紙のままで放置するのは宜しくはない。今回の件を起こしたのは此方とは言えども、フィンランド政府もこれに返答する義務がある。例えそれが拒否の意思決定であってもだ。それに、今回の場合に限っては私の書状により即時の開戦はない。別に破ることも出きるがそれも前に言った通り、国際的な信用を失うこととなる。つまり、世界から相手にされないと言うこと。それと似たような状況にあるのが、ドイツ、イタリア、大日本帝国の3国だ。アメリカは相変わらずモンロー主義(孤立政策)を取っているが・・・・それも太平洋戦争までだ。元々、あの戦争自体がアメリカが対枢軸に参戦するが為の作戦であり、アメリカの目論見では大日本帝国等、片手間で済ませるつもりだったのが、大日本帝国の予想外の軍の質と精強さでアメリカは当初連戦連敗を重ね、一時では講話の声もあったのだ。しかし、戦争を始めるのは簡単でも終わらせるのは至難の技で、如何にアメリカと言えども自ら始めた戦争を止めることなど出来よう筈もなかった。それに、アメリカの場合は軍需産業を民間に委託しており、それらの資本家が利益を得るために戦争継続を致し方なしなのだ。だから私は資本経済を導入したときに軍需だけは国営にしたのだ。軍需を民間に任せると下手をすると利益を得んが為に戦争マシーンになってしまう可能性がある。だから私はその芽を摘んだのだ。


さて、こう長々と語るのはここまでにしようか。次の事を話すとフィンランドのことになってしまうが・・・・さて、フィンランド政府はどう返答してくれるのか。






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「リュティ首相。先のソ連からの要求にはそろそろ返答をしなければなりません。向こうはそこを明示していませんが、外交上返さねば失礼に値します。」


部下のその言葉に、リュティは尤もだと思った。いくら仲が悪い国とは言え、一国だ。それに対して返答を寄越さないと言うのは些かの失礼が過ぎる。まあ、それを逆手に侵略する国もあるが、少なくとも今回のソビエト連邦はそれには当てはまらなかった。ので、早急に、とまではいかなくても近日中に返答をする必要はあった。


「分かっている。丁度私もそれについて考えていた所だ。そして結論を出した。」


「それで、どうされるのですか?」


その問いにリュティは覚悟した様子で返した。


「ソビエト連邦と、交渉しようか。」


「承知しました。直ちに外務省に調整させます。」


「頼んだぞ・・・・」


そして、リュティは部下が退室したのを見て嘆息を吐いた。


「はぁ。さて、この交渉が、どうか我が国の平和を脅かさんとせんことを祈るしかないか。後は、我が国の優秀な外交官に全てを託す。この国も、国民も。そして、運命を。」








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1938年3月12日。この日、世界は2つの同時に起きた出来事に驚愕することになった。


一つは、ナチスドイツによるオーストリアの併合。これは史実でも起こった事で、ドイツによる最も平和的な方法での併合だったと言えるだろう。実際はドイツの軍事力を背景に押し通した要求だ。という意見もあるようだが、プロパガンダに踊らされたとは言えこれはオーストリア国民が自ら選んだことだったのだ。ので、諸外国にはどう言うことも出来ない。


そして、二つ目。こちらの方がより、衝撃的だった。皮肉にも、オーストリア併合の報と重なったこの事は、後にこう呼ばれた────ソフィン同盟────と。勿論これはソビエト連邦及びフィンランド共和国の両国の間で結ばれた経済的、そして軍事的な同盟だった。これは世界に驚愕の波となって波及した。そして、大日本帝国でとある人物はこう言ったという。『欧州情勢複雑怪奇なり』と。




そう言うことで、欧州はまた新たな展開を迎える事となったのだが、この行く末を知るものはこの世界にただ一人を除いて誰もいない。


勿論、その一人とは憑依者であるスターリンなのだが、それでも、自身の歴史改変により少しづつではあるが行く先想定不能となってきている。しかし、大まかには変わらないだろうというのは確定している。史実ではフィンランドとは冬戦争、継続戦争で戦いあった両国であるが、この世界線では何と同盟を結ぶに至った。これが両国に何を翻すかはまだ分からないが、少なくともこれが善き方向へと向かうことをフィンランド国民と、ソビエト連邦国民も願っていた。





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