同志スターリンは美少女です!?
4話 おっさん(ヤゴーダ達)に囲まれるなんて嫌だ!
総合産業委員部からの報告を纏めるとこうなった。
現在、ソビエト連邦の産業は主に重工業だが、農業の壊滅状態を解消させるために総合産業委員部に任せていたのだが、その結果、色々と優秀な人達が頑張って土地を買って、それを開墾して、そこに農場を建設して、農家を誘致して、結果を待って、農家の意見を聞いて、それを取り入れて、改善した結果は顕著に現れた。
1935年8月現在、年間餓死者数は一万以内に収まっている。これでも多いように感じるかもしれないけど、1933年の時点で数百万人だった事を考えると劇的な改善で、国民からの私への支持は大きくなっていると共に、ソビエト国民権利団体から国民の権利拡大の要求が再三来ている。これまでなら即刻鎮圧されただろう団体だが、私はその意思を汲んで国民の権利を拡大させた。と言うより、今までが縛りすぎなのだ。これまでに資本主義の導入と共に権利も増やしてきたが、まだまだ不十分だった。
なので、流石にアメリカレベルでとはいかないが、それなりの権利。言論、宗教は自由化した。まあ、今までの事が染み付いて、政府への批判を出来る人は少ないが・・・・まあ、反乱の芽が少ないのは良いことだ。
「ふむ、報告ご苦労だ。下がってよいぞ。」
私がそう言うと、報告しに来てくれた職員は退室した。
はぁ、それにしても、とため息を吐く。
「やっぱり、周りがおっさんだらけだと気が滅入るよなぁ。」
そう言いながら、壁に備え付けられた鏡を見る。
そこには到底スターリンとは思えない(少なくとも自分の知るスターリンとは違う)美少女が映っていた。その美少女は白い軍服にスカートと言う、中々な格好をしている。と言うより、それしかなかった。断じて私の趣味ではない!
さらには、少し赤みがかった髪の毛を肩下辺りまで伸ばしている。その瞳は地球人とは思えないほど紅く、まるで宝石のように光っている。
と、自分を見て癒しにする等ナルシストな事をしていてふと思う。────あいつら(ヤゴーダ達)が美少女だったなら────と。
思い立ったが吉日だ!!早速私は連邦科学技術開発部に連絡を入れて要望を伝えた。すると、二つ返事で了承との旨が返ってきて、私は今日一日を上機嫌に過ごすのだった。
■■■■
その数日後、とある一室で赤軍の至宝、トゥハチェフスキーとNKVD長官のヤゴーダが話し合っていた。
「なあ、同志トゥハチェフスキー。ここ数日だが、何だか同志スターリンの機嫌がすこぶる良いのだが、なにか知らないか?」
「んん?そうなのか?最近私は同志スターリンに会っていないから分からないな。そこまで上機嫌なのか?」
トゥハチェフスキーの問いかけにヤゴーダは首肯した。
「そうなんだ。最近同志スターリンから呼び出されると何故か同志はとても良い笑顔で迎えてくれるんだが・・・・はっきり言ってしまうとこのままでは私がロリコンになってしまいそうだ。不躾ながら、あの美少女の同志スターリンがあのような笑顔をされるとロリコンに成らざるを得ないと言うか・・・同志トゥハチェフスキーも一度会えばわかる!」
「そこまでなのか!?あの普段はとても冷静そうに見える同志が!?と言うか、お前、ロリコンだったのか?引くわー。」
「ちょっ!そうじゃないって、俺はロリコンじゃない!危うくなりかけただけだ!!兎に角!同志に会えば分かる!!」
「・・・・そこまで言うのなら、会いに行ってみましょう。」
■■■■
後日。
「同志スターリン。失礼します。」
「同志トゥハチェフスキーか。入れ。」
「失礼します。」
「それで、私に何か?」
「はい、軍備の報告をと。」
内心トゥハチェフスキーは思う。うわぁー、めっちゃ可愛い!と。
実際それほどの顔をしていたスターリンであった。それは、どんな男でも恐らく一発で堕ちるだろう、天使のような笑みだった。
「そうですか。それでは聞きましょう。」
と、それからトゥハチェフスキーはスターリンから視線を反らしつつ報告をつらつらと述べた。元々、今回スターリンの元を訪ねた理由は軍備の報告なんかではなく、スターリンが本当に嬉しそうにしているのか確認しに来ただけだ。で、結果はご覧の通りだった。
「ふむ、分かりました。が、しかし何故報告している間私の顔を見なかったのですか?」
不味い!と、トゥハチェフスキーは思う。
「そ、それは・・・・・」
ヤバい!まさか、正直にスターリンちゃん可愛い!!なんて言えるわけがない!
「まさか・・・・・」
ゴクリ、とトゥハチェフスキーは唾を飲み込む。
「私の、顔を見に来たの?」
「は、は、はい。その通りです・・・・その、軍備の報告は次いでで、申し訳ありません。」
恐る恐るという風にトゥハチェフスキーは謝る。
「ふむ、まあ良いでしょう。理由はどうであれしっかりと報告してくれた訳ですし。ただ、罰としてこれを飲んでもらいます。」
そうやってスターリンがトゥハチェフスキーに渡したものは瓶に入った何かの液体。その色は普通に透明だが、何処か怪しい。
「そ、それは?」
「別に毒ではありません。とある薬です。まあ、栄養はありますね。では、飲んでください。」
それを聞いて、トゥハチェフスキーはゆっくりとその瓶の蓋を開けて、中身を飲み干す。
「ふう、同志スターリン。とても美味しかったです。」
「そうですか。美味しかったのですか。」
トゥハチェフスキーは内心不審に思った。罰としては軽すぎないか?と。まあ、確かに得体の知れない薬を飲まされたことは罰としては十分だろう。一種の人体実験と言っても過言ではない。しかし、結果はただ、甘い薬で今のところ効果も不明だ。と、その時だった。トゥハチェフスキーの視線が急にガクッと下がった。
「ど、同志!?これは!?え!?声が!!」
その直後に発せられたトゥハチェフスキーの声は丸で女の子の様に甲高い声だった。
「ふふ。ふふふ。これを見なさい。」
そんなトゥハチェフスキーに不敵に笑みを溢しながら鏡を向けるスターリン。
「こっ、これは!!何で、何で私が女になってるんですかぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
そう、そこに映るトゥハチェフスキーは元の面影も全くない、頭から金髪を背中辺りまで伸ばしている美少女だったのだ・・・・・
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