庭には、
7話 能力の発動
「ひっ…………。」
悲痛な声にならない叫び。
「どうだ?」
今、目の前には、目潰しの状態で氷柱が向けられている。
「何ですか、これ……。」
そして、氷柱を向けている張本人、笠井未鈴は、とても冷静な目をしていた。
俺は、何でこんなことに…………。
それは、1時間程前の、
例の自己紹介の後のこと……。
喫茶店の中にいた。
「あのー、ところで、さっきの氷のやつ」
ソファーに座る白髪(はくはつ)の少女が目を輝かせている。
「あれって、魔法ですか?私もできますか?」
そう聞かれた巨乳ポニーテールの女性は、
「いや、白髪(しらがみ)、お前には、まだ早い。出直してくるといい。」
と、さっぱりとした返事をする。
「笠井さん、それはひどいんじゃ?何故彼女はできないんですか?」
俺は聞いてみた
「あぁ、すまん言い方が悪かった、能力ってのは、一回こっちに来ただけじゃ発現しないんだ、二回目に、再びこっちに来たときに初めて能力があらわれる。」
そうだったのか、初耳だ。
あの時は、適当に話を合わせてたってことか…。
「何だか蜂のやつみたいですね?」
「アナフィラキシーショックのことかな?」
横から虎白(こはく)が教えてくれた。
「そうそう、そんな感じ。だから、能力がつかいたきゃ出直して来いってこと。」
「そっか~、私まだ魔法少女には、なれないか~。」
虎白は落胆しながら、ステッキを振るような素振りをみせる。
「でも能力が手に入ったところで、って感じはするけど?うまく戦えるんでしょうか?」
一つの疑問を投げ掛けてみる
平和な島国で暮らしていた高校生にはかなりの難題、というか無理だと思うのだが。
プロフェッショナルの意見はというと、
「習うより慣れろ。3割が特訓、7割が実践といったところだ。そして、特訓とは、特訓の特訓ではないので、特訓が特訓だとは思わないように特訓しろ!ちなみに、後半のは自分でも何言ってるか分かんなかったから気にするな!」
「つまり、特訓と実践どっちが大事なんです?」
「実践。」
だ、そうです。
てゆうか特訓て、なんだ?いや、想像するだけでも寿命が縮みそうだから、考えるの止めておこう。
この人、手加減とか知らなそうだし。
「あ!そうだ、今日からやろう!特訓!」
「え?」
そんな、京都行こうみたいなノリで言われても困る。
「あ!それ私も見たいです!」
虎白が足をバタバタさせている。
なんで、こいつもノリノリなの?
俺は見せ物じゃない。
「もちろんOK、よし、決まりだな。私はこれから仕事があるので出かけるから、君達も一旦家に帰ってから、5時頃に来てくれ。」
「はい!」
手を上げて返事をする、虎白
「はい…。」
肩を落とす、俺
「それなら、白髪も能力を使えるかもしれないしな!」
それを聞いて「やった!」と嬉しそうにはしゃいでいる白髪の彼女。
しかし、
次の瞬間、彼女は氷に包まれていた。
ミサンガを着けた左腕を残して。
「!?、笠井さん?」
「お前も彼女のことは一旦忘れろ。もし、また会えれば、その時はもっと話をさせてやるさ。」
そう言いながら、虎白の腕からオレンジ色のミサンガを取ってしまった。
「……。」
何も言えなかった。
これは、きっと彼女のためなのだろう。
俺だって、2,3分後に氷付けになっていない保証はない。
しかし、彼女自身はどうなんだろか?
彼女はどうして、この危険な世界にいるのだろう。
いや、危険が分かっているからこそなのかもしれない。
そして、ミサンガをポケットに入れた笠井さんは、ソファーに座り直した。
それと同時に氷が溶けて、虎白の姿が露になった。
何も知らない彼女はまだはしゃいでいる。
「あれ?でも、どうやって帰るんですか?」
急に我にかえった虎白が笠井さんに質問した。
「そのドアの前に立って帰りたい場所を思い浮かべてから、開けば帰れる。水分は持ってきた方がいいな、いくら冬といえど喉は乾くからな。」
「はい!」
元気よく返事をする彼女の腕にはミサンガはない。
しかし、それに気付くこともなく、ドアの前まで行くと、
「未鈴さん、一奈くん、また後でね!」
そう言って手を振りながらドアの向こうへ行ってしまった。
すると、仕切り直しだ、というようにパンッと手を叩く音がした。
「さてと、巻き込みたくないとは思っていたが、お前には戦えそうな素質がある。ので、今から特訓を始める!」
「はい?」
俺の返事を聞く間もなく、外に連れ出された。
「あ、あの特訓って?」
「能力を身体に馴れさせる特訓だ。」
「能力を馴れさせる……。」
響きがもうすでに人体実験。
外の寒さとは別に鳥肌がたった。
「具体的には、こうする。」
「ひっ!」
目の前に、文字通り眼球まで数センチの所に氷柱が迫っていた。
「何ですか、これ……。」
何してんだろ、俺?死ぬのかな?
いや、訓練だったな。
「能力は発動しないか、或いは……。」
笠井さんは、とても冷静だった。
それが逆に怖いんだけど。
氷柱は一旦引っ込められた。
「え?能力が発動しないって、どうしてですか?」
「う~ん、今度はこれに触ってみてくれ。」
「はい。」
氷柱を差し出されたので、言われた通りに触れてみる。
「…………。」
「……何も起こりませんけど?」
「意識を氷柱に向けてみろ、何かイメージが湧いてこないか?」
「イメージ……。」
氷柱に意識を向けると…、何だか、何度も氷柱を落としているイメージが頭に浮かんだ。
「じゃあ、もう一度!」
その言葉に反応し、避けようとした時には、すでにそこにあった。
再び氷柱が目の前に。
しかし、今回は少し様子が違った。
笠井さんは、何故か何度も氷柱を突き刺す行為を繰り返していた。
「どうしたんですか?」
「フッ。」
笠井さんは氷柱を突き刺す行為を止め、腕を下ろした。
不気味な笑みを浮かべていた。
「あ、あの?」
「おもしれぇ能力じゃねぇか!」
「はい?」
「どうやら、お前の能力はループさせてしまう能力のようだな。ただし、対象に触れる必要があるが。」
「ループさせてしまう?」
「あぁ、させてしまうってのは、私がそう呼んでるだけだ。能力ってのは、別に必要のないものだからな。
ちなみに、私の能力は、見たものを凍らせてしまう能力だ。」
「なるほど、それで、俺の能力はループさせてしまう能力ですか。」
「能力も分かったことだし、これからバンバン鍛えていくぞ!」
「はい……………。」
先が思いやられるなぁ……。
ズシン ズシン ズシン
「なんだ!?」
「何ですか、この揺れ?」
揺れの正体はすぐに分かった。
分からざるをえなかった。
建物の向こうから顔を出したのは、ナナフシの様な巨大な蟲だった─────────。
悲痛な声にならない叫び。
「どうだ?」
今、目の前には、目潰しの状態で氷柱が向けられている。
「何ですか、これ……。」
そして、氷柱を向けている張本人、笠井未鈴は、とても冷静な目をしていた。
俺は、何でこんなことに…………。
それは、1時間程前の、
例の自己紹介の後のこと……。
喫茶店の中にいた。
「あのー、ところで、さっきの氷のやつ」
ソファーに座る白髪(はくはつ)の少女が目を輝かせている。
「あれって、魔法ですか?私もできますか?」
そう聞かれた巨乳ポニーテールの女性は、
「いや、白髪(しらがみ)、お前には、まだ早い。出直してくるといい。」
と、さっぱりとした返事をする。
「笠井さん、それはひどいんじゃ?何故彼女はできないんですか?」
俺は聞いてみた
「あぁ、すまん言い方が悪かった、能力ってのは、一回こっちに来ただけじゃ発現しないんだ、二回目に、再びこっちに来たときに初めて能力があらわれる。」
そうだったのか、初耳だ。
あの時は、適当に話を合わせてたってことか…。
「何だか蜂のやつみたいですね?」
「アナフィラキシーショックのことかな?」
横から虎白(こはく)が教えてくれた。
「そうそう、そんな感じ。だから、能力がつかいたきゃ出直して来いってこと。」
「そっか~、私まだ魔法少女には、なれないか~。」
虎白は落胆しながら、ステッキを振るような素振りをみせる。
「でも能力が手に入ったところで、って感じはするけど?うまく戦えるんでしょうか?」
一つの疑問を投げ掛けてみる
平和な島国で暮らしていた高校生にはかなりの難題、というか無理だと思うのだが。
プロフェッショナルの意見はというと、
「習うより慣れろ。3割が特訓、7割が実践といったところだ。そして、特訓とは、特訓の特訓ではないので、特訓が特訓だとは思わないように特訓しろ!ちなみに、後半のは自分でも何言ってるか分かんなかったから気にするな!」
「つまり、特訓と実践どっちが大事なんです?」
「実践。」
だ、そうです。
てゆうか特訓て、なんだ?いや、想像するだけでも寿命が縮みそうだから、考えるの止めておこう。
この人、手加減とか知らなそうだし。
「あ!そうだ、今日からやろう!特訓!」
「え?」
そんな、京都行こうみたいなノリで言われても困る。
「あ!それ私も見たいです!」
虎白が足をバタバタさせている。
なんで、こいつもノリノリなの?
俺は見せ物じゃない。
「もちろんOK、よし、決まりだな。私はこれから仕事があるので出かけるから、君達も一旦家に帰ってから、5時頃に来てくれ。」
「はい!」
手を上げて返事をする、虎白
「はい…。」
肩を落とす、俺
「それなら、白髪も能力を使えるかもしれないしな!」
それを聞いて「やった!」と嬉しそうにはしゃいでいる白髪の彼女。
しかし、
次の瞬間、彼女は氷に包まれていた。
ミサンガを着けた左腕を残して。
「!?、笠井さん?」
「お前も彼女のことは一旦忘れろ。もし、また会えれば、その時はもっと話をさせてやるさ。」
そう言いながら、虎白の腕からオレンジ色のミサンガを取ってしまった。
「……。」
何も言えなかった。
これは、きっと彼女のためなのだろう。
俺だって、2,3分後に氷付けになっていない保証はない。
しかし、彼女自身はどうなんだろか?
彼女はどうして、この危険な世界にいるのだろう。
いや、危険が分かっているからこそなのかもしれない。
そして、ミサンガをポケットに入れた笠井さんは、ソファーに座り直した。
それと同時に氷が溶けて、虎白の姿が露になった。
何も知らない彼女はまだはしゃいでいる。
「あれ?でも、どうやって帰るんですか?」
急に我にかえった虎白が笠井さんに質問した。
「そのドアの前に立って帰りたい場所を思い浮かべてから、開けば帰れる。水分は持ってきた方がいいな、いくら冬といえど喉は乾くからな。」
「はい!」
元気よく返事をする彼女の腕にはミサンガはない。
しかし、それに気付くこともなく、ドアの前まで行くと、
「未鈴さん、一奈くん、また後でね!」
そう言って手を振りながらドアの向こうへ行ってしまった。
すると、仕切り直しだ、というようにパンッと手を叩く音がした。
「さてと、巻き込みたくないとは思っていたが、お前には戦えそうな素質がある。ので、今から特訓を始める!」
「はい?」
俺の返事を聞く間もなく、外に連れ出された。
「あ、あの特訓って?」
「能力を身体に馴れさせる特訓だ。」
「能力を馴れさせる……。」
響きがもうすでに人体実験。
外の寒さとは別に鳥肌がたった。
「具体的には、こうする。」
「ひっ!」
目の前に、文字通り眼球まで数センチの所に氷柱が迫っていた。
「何ですか、これ……。」
何してんだろ、俺?死ぬのかな?
いや、訓練だったな。
「能力は発動しないか、或いは……。」
笠井さんは、とても冷静だった。
それが逆に怖いんだけど。
氷柱は一旦引っ込められた。
「え?能力が発動しないって、どうしてですか?」
「う~ん、今度はこれに触ってみてくれ。」
「はい。」
氷柱を差し出されたので、言われた通りに触れてみる。
「…………。」
「……何も起こりませんけど?」
「意識を氷柱に向けてみろ、何かイメージが湧いてこないか?」
「イメージ……。」
氷柱に意識を向けると…、何だか、何度も氷柱を落としているイメージが頭に浮かんだ。
「じゃあ、もう一度!」
その言葉に反応し、避けようとした時には、すでにそこにあった。
再び氷柱が目の前に。
しかし、今回は少し様子が違った。
笠井さんは、何故か何度も氷柱を突き刺す行為を繰り返していた。
「どうしたんですか?」
「フッ。」
笠井さんは氷柱を突き刺す行為を止め、腕を下ろした。
不気味な笑みを浮かべていた。
「あ、あの?」
「おもしれぇ能力じゃねぇか!」
「はい?」
「どうやら、お前の能力はループさせてしまう能力のようだな。ただし、対象に触れる必要があるが。」
「ループさせてしまう?」
「あぁ、させてしまうってのは、私がそう呼んでるだけだ。能力ってのは、別に必要のないものだからな。
ちなみに、私の能力は、見たものを凍らせてしまう能力だ。」
「なるほど、それで、俺の能力はループさせてしまう能力ですか。」
「能力も分かったことだし、これからバンバン鍛えていくぞ!」
「はい……………。」
先が思いやられるなぁ……。
ズシン ズシン ズシン
「なんだ!?」
「何ですか、この揺れ?」
揺れの正体はすぐに分かった。
分からざるをえなかった。
建物の向こうから顔を出したのは、ナナフシの様な巨大な蟲だった─────────。
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コメント
古宮半月
ありがとうございます。
まだ初心者なので矛盾点などあるかもしれませんが何卒暖かい目でよろしくお願いします。