のぶなが! 【だんます!! After Story】

慈桜

第7話

 
 見た目は少女、頭脳はチョンマゲ、超絶プリチーなメイファーちゃんですオツー。

 ウサギとかギザッ歯とかにボコられた傷も癒えないままに、飛んできましたリアースはソフマダンジョン。

 バトル中だから下っ端冒険者はダミーコアまで一気に飛べないけど、ソフマダンジョンぐらいならメイファーでも余裕です。

 弱くないけど全てに痛みが伴うのはマイナスだよな。

「あ、そうだコアちゃん。途中で俺ちゃんとだんますの反応が消えるけど、俺ちゃんの反応が戻った時に声かけてあげて」

「いいけど、なんで?」

「おセンチモードにて、この世界ぶっ壊しちゃう危険性を大いに孕んでいまして候」

「うん。それは絶対に阻止しなきゃだね」

 だんますの反応が跡形もなく消えるから結構焦ってたんだよね。
 結果として名前も知らない閻魔騎士が作った仮想世界では星ごとぶっ壊したわけだし。

 鬼ダッシュのままに攻略してると、いつの間にやらダミーコアのフロアに到着。ふっ、他愛もない。

 そこには罪喰いシンイーターの面々が手持ち無沙汰に駄弁っている姿が見て取れる。

「やーやーやー! 見せ場無しのバイプレイヤーども! 我が名はメイファー! 少女冒険者随一の魔眼の使い手! 貴様達の加勢に来てやったぞ!」

「メイファーちゃん、ここは危ないから、グラナダかケモミミ旅飯店に避難した方がいいよ。それにコアさんも早くダンマスの所に戻ってあげてください」

 俺の渾身の口上はスルーでブチ猫のブッチーが腰を落として同じ目線で話してくるが甘い。

 仲間から離れて接近するなど笑止!

「ひぎゃぁぁあああ!!」

「いや、私に頼めば良かったのに」

 血涙垂れ流しで、なんとかブッチーは夢幻拉致完了。

 後はシシオかガンジャかホリカワの内2名を拉致れば第一段階終了だ。

 同じ場所に戻ろうとしたらソフマダンジョンの入り口だった件。
 でも安心。瞬殺でござる。

「こっちはダミーコアの死守を命じられてるんだ。邪魔をするならお仕置だ」

 五月蝿いトカゲさんですこと。

「邪魔をするなら、戦うしかない」

「はっはー!! 手加減はしてやらねぇぜ!!」

 大剣ニキとライオンのおじさんもやる気満々、わい幼女、漢が滾る。

 出戻り速攻でリザードマンのホリカワトカゲ氏が短槍での捕縛系槍技を撃ち込んでくるが甘い。

 弱くはないが、こいつらのレベルで戦うにはメイファーは強すぎるし、対抗手段としての冒険者権能の発動時間が限られている以上は、俺に無駄撃ちはしたくないはず。

 つまり出し惜しみをしている間に、戦況は此方に傾いている。

 最初から権能を剥き出しにして、極悪なブッチーの闇ルーン連発を出しながらに攻めていたら苦戦はしただろう。
 むしろ撤退を余儀なくされたかもしれない。

 だが、こちとら舐めプでヤられる程のマヌケでもない。

「これは持論だが……痛みに効くのはロキソニンだと思う」

「何言ってん、だよっ!」

 背後から槍が飛んでくるのは定番です。未だに磁槍使ってるトカゲさんの得意技だけど、罪喰いシンイーターの面々の戦闘は暇な時に映像化して見たりしてるから余裕で躱せちゃう。

 何するかわかってしまうのだよ。

 厄介なのは、背中めがけて飛んでくるトカゲの槍よりも、それを避けた直後のガンジャの大剣。

「死んじゃったらどうすんのぉ?罪喰いシンイーター失格になるんじゃなぁい?」

「それぐらいの加減はできる」

 秒間7発の斬撃、とても加減してるとは思えないが、このガンジャのディレイカットの斬撃は7発が限界で、その後に微かなディレイがかかる。

 即ち。

「二匹目ゲットォ。ひ、ひ、ひぎゃぁぁあああ!!」

 髪の毛鷲掴みで大剣ニキゲットだぜ。でもやっぱり転移するの痛い!

「だから私に言えば転移するよ?」

「ボルタレンくださぁい!!」

「ロキソニンって言ってたのに」

 再びソフマダンジョンダッシュです。
 メイファー不便だぞこんにゃろ。

 罪喰いシンイーターの連中に関してはブッチーを送り込んだ時点でコッチの勝ちだ。
 後は作業ゲーなわけだが、この後は何も知らないケットシー三匹を相手にする極悪タイムが待ってる。

 下準備として痛みに慣れてメイファーをもっと扱えるようにしとかなきゃ危ない。
 ケットシー三匹放し飼いとか、この世界マジで悪夢だよね。
 そこに痺れて憧れちゃうけど。

「別にこの後リアースで冒険者同士の殺しなんて起きないけど……抑止力で一人は残しといた方がいいよな」

「……悪いホリカワ。ちょっと本気出すぞ」

 ここに来てシシオが冒険者権能を発動時して顔面だけ人間の王種ワーレグルスに種族進化したけど、叫ばせなければ、どってことはない。

 鳩尾にミサイル頭突きからの、サマーソルトキックで喉仏ドーンだYO!

 パンチラはサービスだ、萌えろライオンめ。

 ホリカワの数十本単位の磁槍が槍衾の要領で襲い掛かってくるけど、ノープレブレム。
 助けるついでにワーレオンちゃんも回収。

「じゃあトカゲ先輩。しばらく一人で罪喰いシンイーター頑張ってねひぎぃぃぃ!!」

「待てよっ!!」

「ドエムなの? ドエムなんだよね? 私ここにいるんだよ?」

「ああ……ホリカワも来ちゃった」

 転移の痛みに耐える一瞬の隙に腕を掴まれてホリカワも連れてきてしまった。

 戻してる時間もないし、よしとしよう。
 罪喰いシンイーターの代わりはグレイルさんあたりにやってもらえばいいわけだし。

 うん、これで生贄の準備は完了。

 次はケットシー大捜索でござ。

 もうちょっとメイファーの体の練習したいけど、本格的に時間がない。

「目ぇ、いったぁ……コアちゃん。もふ猫連のとこに飛ばして! ハリーハリーハリー!!」

「まだ何も教えてもらってないんだけどな」

「後でPDFに纏めて提出しますから!」

 いやいやながらに飛ばしてもらった先には、小学生ぐらいの子供を縛り上げて、蝋燭と鞭で甚振ろうとしてる極悪なキジトラケットシー二匹と、青っぽいケットシーがいる。

 いいかい? 大事なことだよ。

 小学生が縛り上げられて、鞭を持った猫と蝋燭を持った猫がいるんだ。

 猫と小学生のSMだ。

 これがまさしく混沌か。
 ノストラダムスの大予言は今まさに的中した。

「ヒナタさんキイロさん、お客様です。みゃ」

 マロンちゃんも青毛って事は閃技モードだから気をつけなきゃだな。

 やっとここまでこれたけど、交渉ミスったら心臓ぶっこぬかれるかもしれんから、警戒は最大限に。

「お前はなんにゃにゃん! 」

 女王様系の仮面をつけて鞭をピシパシしている猫が威嚇してくる。
 これの中の人が、あの黒髪美人とか世の中おかしい。

「熱いにゃんにゃん? 悶えろにゃんにゃん」

「ふごーー! もごぉーー!」

 小学生相手に蝋燭垂らしまくってるドエスが、あの物優しそうな医者なんだよな。

「やっぱり二人はこっちの方が似合う」

「何を意味深な事を抜かしてるにゃにゃん? 」

「気をつけるにゃんにゃん! ロリメスはすぐ事案にするにゃんにゃん!」

 小学生縛り付けて、蝋燭垂らしながら鞭打ちにしてる時点で事案どころの騒ぎじゃないんだけどな。

「えーと、要件を話す前に、まず聞きます。ヒナタさん、妊娠してます?」

「にゃ、にゃんで知ってるにゃにゃん!?」

「コアちゃん、本当かどうか確認できる?」

「うーん、うん。本当に初期段階だけど、確かに妊娠してるよ」

 よし、よしよしよしよし。
 猫の繁殖力と人間verのヒナタさんの戯言を全力で信じて突っ走って来た甲斐があった。

 こうなったら後は土下座外交だ。

「御三方、どうか私の話を聞いて頂きたい」

 これから起こる全てを話してしまおう。
 コアちゃんが知りたがっていた内容でもあるので包み隠さず。

「まず、この夢幻は消滅します」

「にゃ、にゃんだってー?」

「空返事ありがとうございます、さて」

 ヤムラの事、夢幻の事、閻魔のこと、そして戦いが唐突に終息し、この世界でヤムラに喰われた者は、リアルアースで人生をやり直す事。

「リアルアースで遠海夫妻は幸せに暮らしていて、ヒナタさんも不治の病にもなっていません。そしてめでたくご懐妊もしています。ですが私は、無理を承知で此方の世界に戻って頂きたいと願いました。そこで出された最低の条件として、今ヒナタさんのお腹にいる子供を返してくれれば考えないでもないと言質を頂きまして」

「そいつら本当にヒナタらにゃにゃーん? 記憶があったら早い段階で戻して貰うようにするはずにゃにゃん」

「そうだにゃんにゃん。マロンと別々に暮らしてるのもおかしいにゃんにゃん」

「「にゃー!」」

 ねー! みたいな感じで猫どもが共感を得て謎ダンスを始めたが、これに関しては何も考えないでおこう。

「もしかしたら、そのお腹の子供を失ったことで、此方の世界への興味が薄れた、もしくは思い出したくなかったのかもしれません」

「ふーん。で、お前は何がしたいにゃにゃん?」

「簡単に言うなら、ケットシーとしての遠海夫妻の子供と、人間としての遠海夫妻の子供には因果関係がある。つまり同一存在として融合できる」

 遠海夫妻とヒナタ、キイロが同一存在であるのと同じように、お腹の中の子供も同一存在となる。

「だから、その体を私に預けてもらいたいのです。それが、遠海夫妻のもっとも最良の形だし」

「どちらにせよ、何かを失って割り切った幸せよりは、まるっと全部手に入れて幸せの方が楽しいにゃにゃん」

「だにゃんにゃん! お前だけなら信じなかったけど、コアさんもいるから信じてやるにゃんにゃん!」

 マロンちゃんは二人が良ければそれでいいよとアイスを舐めながらにウンウンと頷いている。激かわぬっこぬこ。 

 てかホリカワ巻き込んだけど、結果オーライでよかった。
 妊娠してたからマロンちゃんは諦めてね、なんて言ったら絶対ブチギレてたよ、この猫達。

「マスターと信長の反応が消えました」

「うん、本格的に時間がない。俺の反応が消えた場所に飛んで自販機で待機しよう。確かドクぺを買いに行くはず、そこに合流だ。コアちゃんは俺を励ました後は、」

「それは言われないでもわかってる。ヤムラを拾いに行く」

「おーけい、おっけいおっけい」

 これで完璧……いや違うな。

 よくよく考えれば、どうしてヤムラとコアはラビリの元に行けたんだ? 話で聞くにはラビリに繋がってたって言ってたけど、おかしくないか?

「いや、待てよ。夢幻とリアースを繋げた葬儀屋アンダーテイカーの鎖をヤムラとラビリに紐付けしておけば……」

「うん? それは私がやってるし、のっぶのパートじゃないよね?」

「だよね、知ってた。よし、じゃあ転移おなしゃす!」

 猫ちゃんズと共に転移して、コアちゃんは離脱。
 自販機横で五本のドクぺを買って体育座り待機。

「ふぁ……眠た」

 きました俺! イキってます!
 バトルハイで調子に乗りまくってる俺が来ました! 間に合いました!

「はい。これ飲みたいんでしょ」

 バレないようにメイファーに徹しよう。
 慎重に世界線にあまり乱れが無いように踏襲して来たから、ここでごちゃごちゃしたくない。

「おーう、メスガキちゃん。ユーのセレクトはエェェクセレンッツ!!」

 しばきたい。
 ナチュラルに全方位馬鹿にするスタイルって言われたりして心外だと思ったりしてたけど、普通にムカつくな俺。

「あのね、そこの缶コーヒーのサイコロみたいに、時空間を折り畳んで圧縮して、ケットシー達の時間を止めたままインベントリに保存して欲しいの」

「んー? んんん? うーん」

 顔近い。
 細目を見開いたらこんな感じなのな。
 ホラーじゃん。俺ってホラーじゃん。
 貞◯さんでも、もうちょい可愛げあるよ。

「お前って、俺ちゃん? メイファーじゃなくない?」

「……何言ってるの?」

 そうなんだよなぁ。
 自分で言うのもなんだけど、ダンジョンバトルしてる時ってドッカンバッコン暴れまくってビッキビキに脳みそフル回転させて全知全能モードだから、鋭いんだよ。

 平時の俺みたいに発散場所失って性欲に極振りしてるダメナガさんとは違う。

「喋らない方が吉と見ちゃう感じ? それぐらいに時間がないってことね」

 よし、いいぞ、物分かりいいぞ俺!
 言った通りにケットシー達を時空間の檻にブッ込んで回収。
 これで大筋は整ったが、問題は俺だ。

 否、メイファーだ。

 メイファーはダンジョンバトル後、リアースにもリアルにも確認できていない。

 つまりそれはシステマと同じで、本当の意味で死んだことになるのだが、だんますとコアが言うには、ヤムラが連れて行った、もしくはヤムラの元に残りたがっているのではないかと推測されていた。

 一度目ではメイファーは確実にヤムラに喰われてる。
 それはコアが確認してる。
 にも関わらず、メイファーが存在していなかったって事はヤムラの元にいるはずだって安い計算ね。

 整合性を取るためには、ここでメイファーを夢幻に捨てに行くべきだが、中の人の俺はどうすんのって話なんだけどどどど、ちょ、まってめっちゃ目が痛い。

「あぁいったぁぁぁ……」

 ……あのさ、小学女児が目の前で顔面おさえこんでのたうち回ってるとするじゃん? 

 みんなならどうする? 声をかけたり、手助けしようと思うよね。

 でもね、俺ちゃんは放置するの。
 この小学女児の中身、多分俺だから。

 いや、何言ってるかわかんないよね?
 俺もわかんないの。

 なんか、俺が幼女化して、のたうち回ってるのを見せつけられてる。

 俺の記憶には、こんな体験は無いから、多分未来の俺なのかな?

 だとしたら絶対に嫌なんだけど。
 そうなる未来を避けたい件。

「んん……あ、戻った」

「おお、大丈夫かいロリ「メイ」ファーちゃそ」

「うぅ……こっちくんな」

「ホワイ?」

 何故かめちゃくちゃ嫌われてる件。
 苦手だけど割りかし仲良くしてやってるつもりなんだけどな。

「ジャイール」

 すると幼女さん、目玉からルーン噴出させて、赤髪ツインテの鎖に大剣繋いだ厨二感満載の幼女を召喚した件。

「少し強くしておいた。だから次から勝手にメイファーを使わないで」

「なにそれ下ネタ?」

 その一言を最後にあっかんべーとメイファーたんは消えてしまいましたとさ……。

「なんだってのよ」











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