冒険者 カイン・リヴァー
七神と神話
「少し長くなりますので、今回は神話に登場する七神の絵をお借りしてきました」
ホープは生徒らを飽きさせない配慮で、人物が描かれた紙を前に貼りだした。ホープほどの大きなその紙は幾重にもなっているようであった。カインは一番後ろからそれを凝視する。そこには斧を肩に担いだ筋骨隆々の男が描かれていた。
「火と本能を司る闘争の神、ハキロ様です。非常に力持ちの神様ですが、少々荒っぽいところがあるとされています」
ホープは紙をめくって見せた。次に現れたのは、凛とした様子で弓を構えている細身の男性であった。こうして七神を説明してもらえるのは、学がないカインにとって非常に助かるものである。
「水と風を司る流麗の神、ピカルス様です。淀みないその腕と、風を巻き起こすとされる指輪を使って自由自在に矢を操るとされています」
続いて現れた盾を腕に着けているその女性は、淡いだいだい色の服を身に着け、優しげに微笑んでいる。
「この方は、生と昼を司る安寧の神、メティア様です。神聖魔導術を使う方々はこのメティア様を信仰されている方が過半数です」
「生と昼、ヘルズとは対極の神、か……」
次に現れたその神に、カインの心臓は高鳴り、全身の鳥肌がざわりと立った。長い黒髪の女性であった。青白いその顔と特徴的な深紅の瞳がこちらに薄ら笑いを浮かべている。まさに、合同クエストで出くわしたヘルズと名乗った少女に瓜二つなのである。
「そして、メティア様とは反対の存在、死と夜を司る静謐の神、ヘルズ様です。七神の中でも特殊な彼女は、神話上、アーティアの人々の命を弄んだために他の六人の神々と争いになり、神々によって遠い遠い天の彼方の星、月と呼ばれる場所に封印されているそうです。そして彼女は封印される間際、こう放ったそうです」
『幾星霜の時をかけ、星々を渡り、必ずや顕現してみせよう。その時が、全ての終わりの時である』
カインは身体の力が抜けた感覚に襲われた。あまり考えは纏まらなかったが、当然でもあると自身で納得した。超常の存在とは感じていたが、まさか本当に神と対面していたとは考えてもみなかったのだ。そして、その言葉通りならば、この世界自体に危機が訪れることに他ならなかった。
カインが放心しているうちに、ホープは話を進めていた。
「でも大丈夫です。ここからお伝えする七神の中でも特に強力な神々が私達を守ってくれます」
紙をめくると、槍を手に持ち、全身を白い鎧で包んだ男が描かれていた。
「この方は先ほどもお話した、大地と理性を司る荘厳の神、ジィソ様です。その槍は、放っただけで狙った相手に向かっていく力を持ち、籠手や兜など、鎧の各部位にも異なる力が備わっているとされています」
次にめくった紙には、巨大な白い羽根を持つ、白い衣服に身を包んだ美しい女性が、見たこともない武器を携えていた。片刃でかつ細く反っているその剣は、白い印象の女性と相反して赤黒い色をし、更には身の丈ほどの長さを誇っていた。
「この方は天と雷を司る天翔の神、ルメス様です。とても美しいお方ですが、その剣はひとたび振るえば、触れたものを塵にしてしまう恐ろしいものだと言われています」
ホープが「そしてとうとう最後です!」とめくった紙には、全身黒い衣服に身をまとった男性が剣を肩に担いで、快活に笑っていた。
「悪いホープ、この神が一番頭悪そうだ」
「コラッ、カインさん! 失礼ですよ! このお方こそ、七神を集められた神様です。全てを拓き、治め、視る開神、シント様です。ジィソ様とは親友でありながら、ルメス様とは夫婦関係にあるシント様は、アーティアを創世された神様です。ちなみに、ルメス様の持つ特殊な武器は、かつてシント様のものだったんです」
ホープは半ば興奮気味に語りだしたが、授業終了の時間が差し迫っていたため、残念そうにしながらも紙を片付け始めた。
「先ほどのヘルズ様の言葉で少し怖がらせてしまいましたが、ジィソ様にルメス様やシント様を筆頭にして、神々がアーティアを守護してくださっているとされているので、皆さん心配はありません。というところで、今日の授業はここまでです。明日テストしますから、よく勉強してくるように! 気をつけて帰ってくださいね」
ホープの掛け声により、生徒らは席を立ち、家に帰る者や授業の復習をする者など、自由に時間を過ごし始めた。
ホープは生徒らを飽きさせない配慮で、人物が描かれた紙を前に貼りだした。ホープほどの大きなその紙は幾重にもなっているようであった。カインは一番後ろからそれを凝視する。そこには斧を肩に担いだ筋骨隆々の男が描かれていた。
「火と本能を司る闘争の神、ハキロ様です。非常に力持ちの神様ですが、少々荒っぽいところがあるとされています」
ホープは紙をめくって見せた。次に現れたのは、凛とした様子で弓を構えている細身の男性であった。こうして七神を説明してもらえるのは、学がないカインにとって非常に助かるものである。
「水と風を司る流麗の神、ピカルス様です。淀みないその腕と、風を巻き起こすとされる指輪を使って自由自在に矢を操るとされています」
続いて現れた盾を腕に着けているその女性は、淡いだいだい色の服を身に着け、優しげに微笑んでいる。
「この方は、生と昼を司る安寧の神、メティア様です。神聖魔導術を使う方々はこのメティア様を信仰されている方が過半数です」
「生と昼、ヘルズとは対極の神、か……」
次に現れたその神に、カインの心臓は高鳴り、全身の鳥肌がざわりと立った。長い黒髪の女性であった。青白いその顔と特徴的な深紅の瞳がこちらに薄ら笑いを浮かべている。まさに、合同クエストで出くわしたヘルズと名乗った少女に瓜二つなのである。
「そして、メティア様とは反対の存在、死と夜を司る静謐の神、ヘルズ様です。七神の中でも特殊な彼女は、神話上、アーティアの人々の命を弄んだために他の六人の神々と争いになり、神々によって遠い遠い天の彼方の星、月と呼ばれる場所に封印されているそうです。そして彼女は封印される間際、こう放ったそうです」
『幾星霜の時をかけ、星々を渡り、必ずや顕現してみせよう。その時が、全ての終わりの時である』
カインは身体の力が抜けた感覚に襲われた。あまり考えは纏まらなかったが、当然でもあると自身で納得した。超常の存在とは感じていたが、まさか本当に神と対面していたとは考えてもみなかったのだ。そして、その言葉通りならば、この世界自体に危機が訪れることに他ならなかった。
カインが放心しているうちに、ホープは話を進めていた。
「でも大丈夫です。ここからお伝えする七神の中でも特に強力な神々が私達を守ってくれます」
紙をめくると、槍を手に持ち、全身を白い鎧で包んだ男が描かれていた。
「この方は先ほどもお話した、大地と理性を司る荘厳の神、ジィソ様です。その槍は、放っただけで狙った相手に向かっていく力を持ち、籠手や兜など、鎧の各部位にも異なる力が備わっているとされています」
次にめくった紙には、巨大な白い羽根を持つ、白い衣服に身を包んだ美しい女性が、見たこともない武器を携えていた。片刃でかつ細く反っているその剣は、白い印象の女性と相反して赤黒い色をし、更には身の丈ほどの長さを誇っていた。
「この方は天と雷を司る天翔の神、ルメス様です。とても美しいお方ですが、その剣はひとたび振るえば、触れたものを塵にしてしまう恐ろしいものだと言われています」
ホープが「そしてとうとう最後です!」とめくった紙には、全身黒い衣服に身をまとった男性が剣を肩に担いで、快活に笑っていた。
「悪いホープ、この神が一番頭悪そうだ」
「コラッ、カインさん! 失礼ですよ! このお方こそ、七神を集められた神様です。全てを拓き、治め、視る開神、シント様です。ジィソ様とは親友でありながら、ルメス様とは夫婦関係にあるシント様は、アーティアを創世された神様です。ちなみに、ルメス様の持つ特殊な武器は、かつてシント様のものだったんです」
ホープは半ば興奮気味に語りだしたが、授業終了の時間が差し迫っていたため、残念そうにしながらも紙を片付け始めた。
「先ほどのヘルズ様の言葉で少し怖がらせてしまいましたが、ジィソ様にルメス様やシント様を筆頭にして、神々がアーティアを守護してくださっているとされているので、皆さん心配はありません。というところで、今日の授業はここまでです。明日テストしますから、よく勉強してくるように! 気をつけて帰ってくださいね」
ホープの掛け声により、生徒らは席を立ち、家に帰る者や授業の復習をする者など、自由に時間を過ごし始めた。
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