冒険者 カイン・リヴァー
学び舎
第三章 【無配慮冒険者と無限迷宮】
「────はい、ということで、今回はモンスターや動物との戦いに詳しい、冒険者のカイン・リヴァーさんに来ていただきました! みんな、拍手ー!」
ホープの掛け声とともに教室中に拍手が巻き起こった。教室の扉からは、不自然な苦笑いを浮かべたカインが教室へと入ってくる。教室には十から十二歳程度の子供らが、三十人ほど並んで座っていた。
入室したカインを見た彼らは、その笑顔をわずかに曇らせる。活発な男子らがカインを茶化し始めた。
「もっと厳ついのが来ると思ったのに」
「ちっちゃ! 本当に冒険者なのかよー」
ホープは慌てながら「コラッ!」と叱りつける。
「な、なあホープ、これ何から話しゃいいんだ……」
「なんでも良いんです。カインさんの冒険のお話でも、護身術のお話でも、この子達のためになると思うことを、お願いします」
騒がしかった教室が、少しばかり静まる。ホープの真っ直ぐな眼差しに、うろたえていたカインも、深く息を吐き、生徒らに目を向けた。
「今日は、お前らの先生として特別に呼ばれた、カインってもんだ。まず聞きたいことがある。お前らは命の危険を感じたことがあるか?」
開口一番の質問に、子供らはきょとんとした様子でカインを見つめる。暫く皆の反応を見ていたカインは「ちょっと庭に出るか」と皆を連れて庭に出た。
「俺が大事に担いでたこの斧、今からここに置く。試しに誰か持ち上げてみてくれ」
カインは敢えて、魔斧ドラードをそっと地面に寝かせた。大きな斧ではあったが、あまりにもカインが軽々と扱うため、まずは先程の活発な男子らが躊躇うことなく挑戦した。
一人ではビクともせず、二人、三人と加勢していき、やがて十数人で持ち上げようとするが、斧がその場からずれることすらなかった。
その状況に驚いていたホープも試しに持ち上げてみるも、生徒らのイタズラなどではなく、本当にビクともしなかった。
「お前達が守ってもらってるこの街の外には、こんな斧を軽々と振り回すようなモンスターがいっぱいいる。この斧を突き飛ばせる動物も多い」
そう言ったカインは斧を片手で持ち上げ、両手に持ち替えてから、思い切り振りかぶった。前方に強風が巻き起こり、地面の雑草と砂埃が頭上まで舞い上がった。生徒らはもはやカインの妙技を見るしかなかった。
「もし何かの間違いで、モンスターや動物に出くわしたら絶対に戦わないこと。なるべく見つからないように逃げる。見つかったら、なるべく刺激しないように逃げる。敵わないと確信した相手からは、逃げて、逃げて、いつか自分の命を守れるようになったら、戦えばいい」
────カインはそれからも実践に基づいた逃げ方や護身術を生徒らに教えた。
カインの持ち時間が終わる頃には、すっかり生徒らに懐かれていた。暫しの休憩を挟んだのち、次の授業が始まろうとしていたところでホープが声をかけてきた。
「カインさん、先程はありがとうございました。あの、もし良かったら、普段の授業も見学されませんか……?」
「ええ? 良いのかよ、部外者が参加しちまって」
「もちろん! さ、席を用意しておきますので、教室へどうぞ。みんなも待っています」
「────はい、ということで、今回はモンスターや動物との戦いに詳しい、冒険者のカイン・リヴァーさんに来ていただきました! みんな、拍手ー!」
ホープの掛け声とともに教室中に拍手が巻き起こった。教室の扉からは、不自然な苦笑いを浮かべたカインが教室へと入ってくる。教室には十から十二歳程度の子供らが、三十人ほど並んで座っていた。
入室したカインを見た彼らは、その笑顔をわずかに曇らせる。活発な男子らがカインを茶化し始めた。
「もっと厳ついのが来ると思ったのに」
「ちっちゃ! 本当に冒険者なのかよー」
ホープは慌てながら「コラッ!」と叱りつける。
「な、なあホープ、これ何から話しゃいいんだ……」
「なんでも良いんです。カインさんの冒険のお話でも、護身術のお話でも、この子達のためになると思うことを、お願いします」
騒がしかった教室が、少しばかり静まる。ホープの真っ直ぐな眼差しに、うろたえていたカインも、深く息を吐き、生徒らに目を向けた。
「今日は、お前らの先生として特別に呼ばれた、カインってもんだ。まず聞きたいことがある。お前らは命の危険を感じたことがあるか?」
開口一番の質問に、子供らはきょとんとした様子でカインを見つめる。暫く皆の反応を見ていたカインは「ちょっと庭に出るか」と皆を連れて庭に出た。
「俺が大事に担いでたこの斧、今からここに置く。試しに誰か持ち上げてみてくれ」
カインは敢えて、魔斧ドラードをそっと地面に寝かせた。大きな斧ではあったが、あまりにもカインが軽々と扱うため、まずは先程の活発な男子らが躊躇うことなく挑戦した。
一人ではビクともせず、二人、三人と加勢していき、やがて十数人で持ち上げようとするが、斧がその場からずれることすらなかった。
その状況に驚いていたホープも試しに持ち上げてみるも、生徒らのイタズラなどではなく、本当にビクともしなかった。
「お前達が守ってもらってるこの街の外には、こんな斧を軽々と振り回すようなモンスターがいっぱいいる。この斧を突き飛ばせる動物も多い」
そう言ったカインは斧を片手で持ち上げ、両手に持ち替えてから、思い切り振りかぶった。前方に強風が巻き起こり、地面の雑草と砂埃が頭上まで舞い上がった。生徒らはもはやカインの妙技を見るしかなかった。
「もし何かの間違いで、モンスターや動物に出くわしたら絶対に戦わないこと。なるべく見つからないように逃げる。見つかったら、なるべく刺激しないように逃げる。敵わないと確信した相手からは、逃げて、逃げて、いつか自分の命を守れるようになったら、戦えばいい」
────カインはそれからも実践に基づいた逃げ方や護身術を生徒らに教えた。
カインの持ち時間が終わる頃には、すっかり生徒らに懐かれていた。暫しの休憩を挟んだのち、次の授業が始まろうとしていたところでホープが声をかけてきた。
「カインさん、先程はありがとうございました。あの、もし良かったら、普段の授業も見学されませんか……?」
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