魔王に堕ちて討伐されたけど、何とか生きてます。

ノベルバユーザー255848

第86話 拷禍綣爛




 「ぐわぁぁぁあああ!? 」


 「ぎゃぁぁぁあああ!? 」


 血飛沫と悲鳴が、ナーダ伯爵邸来賓室内一面に飛び散り谺するのを冷酷な目でロサリオは見つめている。


 「アメリア、フリーン、回復を…… 」


 「んーっ!? んーっ!!」


 エレーナがロサリオの行った所業を抗議するように喚き立てるが、猿轡を噛ませられているため、声にする事が出来ずに場を支配している恐怖をただ彩るための音楽に成り果てている。
 その中をロザリーは顔色を失いながら、回復魔法がかけられる前に、切断面から滴り落ちる血を壺で受け止めている。


 ロザリーを退かしたアメリアとフリーンは、アルセリーとサラトフの切り落とされた腕の切断面に回復魔法をかけて止血している。


 「どうした? 黙りこんでいるではないか、グランクルス帝王。早く回答しないと四肢が無くなってしまうぞ。」


 映像通信用魔道具に写し出されている、威厳ある風体をしている人物に向かってロサリオは語りかける。


 「な、何が回答だっ!? こんな交渉があるかっ! 狂っているぞ貴様っ!! な、……ぐぉぉぉおおお!? 」


 ロサリオは喚くパーヴェルに対して剣先を閃かせて、右足の腿から切り飛ばしてしまう。


 「あははははっ、そんなに威勢がいいとつい斬りたくなってしまうではないか…… なぁアメリア…… 」


 「はい。」


 アメリアは従順に言われるがまま、氷の表情を保ちながら回復魔法をかけている。その姿にさえ帝国首脳部は恐怖を覚えてしまう。


 「安心しろ、必ず生きて返してやるさ…… そのためにこいつらには、自殺防止用に特注の奴隷の首輪を装着させているんだからな。」


 魔道具越しのグランクルス帝王は、余りの惨事を見せつけられて言葉も出ない。同席しているイヴァーン第1王子や第1王女も同様である。
 身体を支える支柱に棒を2本交差させて、両腕を左右に開かせ、両足も開かせて括りつけられている。
 ちょうど、Жのような形で3名が部屋に立て掛けられていたが、既にパーヴェルの右足大腿部、サラトフの左腕、アルセリーの左腕が斬り飛ばされて欠けてしまっていた。
 グランクルス帝国首脳部同様、この様子を見ているティファニア王やヘルツォーク公爵も絶句している。


 「ほらっ! 何を黙りこんでいるっ!? 」


 「ぎゃぁぁぁあああ!? ひぃぃ…… 」「ぐ、くそがぁぁぁあああっ!! 」


 停滞した場を再び絶叫で満たし、動かすかの如くロサリオが握っている剣が舞い踊る。アルセリーの右足とパーヴェルの左腕が弧を描くように舞い、壁にぶつかる音で漸くグランクルス帝王は反応した。


 「こ、このような悪魔のような脅しで交渉だとっ!? しかも大白金貨10,000枚とはずいぶん吹っ掛けるではないかっ!? 」


 ロサリオは嘆息しながら腕を振るう。


 「や、やめ…… いやぁぁぁあああっ!? 」


 「ふははははっ! 女のような悲鳴をあげるかっ、王族がだらしないな…… 勝手に侵攻してきて全滅させられたくせに、何が吹っ掛けるだっ!! 寝惚けるのも大概にしろ!! 」


 サラトフの右腕を斬り飛ばし、さらに返す刀でアルセリーの右腕も斬り飛ばす。


 「こ、このような所業…… 他国からも抗議がくるぞっ!? わかっているのかっ、ヘルツォーク公爵にティファニア王よっ!! 」


 堪らずにイヴァーンがロサリオではない、王や公爵に抗議の声をあげるが、二人は黙り軽々しく言葉を発しない。
 二人ともロサリオに任せたはいいが、ここまでするとは思っていなかったというのが正直な気持ちである。
 事ここに至っては、国として最大限の利益を得るために、敢えて容易い言葉をかける事なく、黙す事に徹しているのは見事と言えよう。
 さらに一息、溜息を付きながらパーヴェルの左足とサラトフの右足を地に落とすのであった。
 二人は痛みに気絶しかかっていた所に、さらなる痛みが加わり意識を引き戻される。アメリアとフリーンが息つく間もなく切断面に回復魔法をかけ続けるのをロサリオは一瞥した後に口を開く。


 「もはや、パーヴェルは右腕、アルセリーは左足、サラトフも左足しか残ってないぞ…… ふぅ、お互い引くに引けないな…… 」


 (何と苛烈な…… これがランサローテの常だとでもいうのですか…… )


 フリーンは顔を青褪めさせながらも回復に努めている。
 この交渉という名の拷問が起きる前のロサリオの言葉を思いだし、消え去りたいとまで思う程の狂気の場に留まるために、必死に血の噎せ返る匂いに耐えながら、自らの役割を果たすのだった。


 





 夜半とはいえナーダに到着後、引き渡されたパーヴェル達の身柄を受け取った後に、ローゼンベルクとティファニアに連絡を取ったロサリオは、ヘルツォーク公爵とティファニア王に中継するという前提の元、グランクルス帝国との交渉を執り行う許可を得ることが出来た。
 特にヘルツォーク公爵もティファニア王も否定することなく速やかに許可を貰えたのは、ナーダ伯爵邸にスカイドラゴンで降りるやいなや、アメリアに通信用魔道具で両者に打診し、了承を得ていた事に起因する。
 現在は既に夜深いとはいえ、明日の交渉の打ち合わせというよりも伝達のために、執務室に主要な人物達が集められている。


 「ナーダ伯爵から来賓室の使用許可とナーダ冒険者ギルド長のヘルナーゼから、映像通信用魔道具を借りる許可も取れたから、明日の朝から帝国との交渉を行うぞ。」


 「お父様とティファニア王経由で、帝国には段取りを付けてあります。」


 ロサリオの発した段取りにアメリアも自らが取り計らった段取りを伝えた。そしてロサリオはマルティーナに願いでる。ある意味、今後の交渉、そして交渉後の肝になる部分である。


 「奴隷の首輪は? 」


 「まだ調整前の奴隷の首輪を4個用意して貰ったわ…… 後はあんたがこれに魔力を籠めればいいだけよ…… 注意しなさい、あんたが全力で籠めたら確実に壊れるわよ。」


 マルティーナの言葉に頷きながら受け取る。


 「明日は皆が想像を絶する程の非道を行うが、決して声を上げずに黙っていて欲しい…… 特にアメリアとフリーンには回復魔法をかけ続ける事態になる。」


 その言葉にこの場にいるアメリアにフリーン、そしてマルティーナとサーラブ、メルダの魔法師であるミラは目を見開く。メイドのアンナとロザリーはとりあえずは無表情である。


 「ロサリオ卿、一体何をしようというのだ? 」


 ナーダ伯爵はロサリオから、エレーナ以外を拘束するための磔の用意を頼まれていたが、まるで処刑を思わせるあの形状を考えると心中穏やかではいられなくなる。
 そのナーダ伯爵の言葉を受けてロサリオは問い、そして語るのだった。


 「もし、戦争で他国の都市、今回の場合はナーダを考えればいいが、そこが落とされた場合、そこで何が起こると思う…… 」


 ロサリオは意図して女性陣を見据えながら問い掛けた。


 「まずは占領のため、領主館を抑え貴族を拘束、そして住民達の暴動が起きないようにある程度の数を纏めて管理して、占領の段取りが済んだ後に領主が変わった…… 国が変わったと通達するというのが常道ですか…… 」


 軍人のオリビアがロサリオの問に答え、アメリアもそれに頷いて肯定を表している。
 そのオリビアの回答にヴァルターやナーダ伯爵は甘いという感想を抱く。教科書通りの回答ではあるが、ティファニアは侵略戦争をもう何百年と行っていないので、その答えも致し方ないのかもしれない。
 ある意味想像通りの答えにロサリオは表情を険しくする。


 「ふぅ、馬鹿なことを…… まず侵略した兵達が行うのは、徹底した略奪と凌辱だっ! 」


 ヴァルターとナーダ伯爵は存じていた上で目を伏せ、女性陣は何を言われたか一瞬わからないような表情を浮かべる。


 「あぁ、アメリア達のその表情を浮かべる意味はわかるぞ。そんな事、効率も悪く後の統治に悪影響が出ると言いたいんだろう…… だが甘い、暴走し人を殺して理性のタガが外れた兵達は、そんなことすら考えずに盗賊よりも非道な事を平気で行うぞ。女は犯され老人は殺され、財は奪われる…… 元々が他国の都市だから遠慮もしない。男連中は奴隷として強制労働だな…… 犯された女達が産んだ子供達は洗脳して兵士まっしぐらか、労働奴隷といったところか…… 」


 「そこまで非道なことは…… 」


 ランサローテだけではないかという言葉を飲み込みフリーンが堪らずに抗議の声を上げる。


 「サーラブとマルティーナはその一端を見て、そして感じたはずだ…… サーラブ、お前が帝国兵に何をされそうになったか状況含めて教えてやれ。」


 ロサリオに指示されたサーラブは、あの時の事を思い出すと恐怖と羞恥で表情を青褪めさせる。


 「は、はい…… 戦の影響で周囲に火の手が上がる中、腹部に強力な当て身を受けて身動きが取れず、拘束されました…… 付近には戦死した人達の遺体があるなか、あ、あいつらは、私の服を切り裂いて…… 」


 「サーラブッ、もういいわよ! ちょっとロサリオ、趣味が悪すぎるわっ! 」


 鮮明にあの瞬間を思いだし、自らの手で身体を抱きしめて崩れ落ちそうになるサーラブを、マルティーナはあの場に居た者としてやるせなさを感じ抱き止める。
 サーラブの告白にサーラブとマルティーナを除いた女性陣は絶句する。アメリアは両目に涙を溜め、オリビアは拳を握りしめて震えている。


 「まぁ、間一髪俺が間に合って事なきを得たがな…… ナーダではそれが住民に向かっていたはずだ。戦争で被害を被るのは兵や貴族じゃないっ! 住民達だ!! しかもその略奪行為を指揮官が率先して行う…… 兵達を発奮させるために黙認どころか許可さえ出す始末なんだよ…… これが戦争だ。」


 最早言葉を差し挟まなくなった面々を見据え、ロサリオは続ける。


 「だから思いしらせてやるんだよ。帝国どころかこの大陸に! 貴族や王すらも関係ない、負ければ等しく死んだほうがマシだと思える程の恐怖をっ! 馬鹿な理由で戦争を始めて、後方でぬくぬくと戦況を眺めるだけの無責任な貴族どもにっ! 実感させてやるんだよ、民が受ける苦痛や恐怖…… サーラブやマルティーナが味わった屈辱をっ!! 明日は徹底してあの3人に味わわせ、帝国の無能を晒してやるっ!! 」









 「くくく…… ふははははっ!! 中々強情じゃないかグランクルス帝王。大丈夫か? 頭の血管が切れそうな顔をしているぞ、ククククク…… 」


 マルティーナは飛び出してロサリオを止めたいのを必死に堪えている。あのような姿は見たくないというのが本音であるが、昨日のロサリオの言葉を考えると、マルティーナやサーラブが酷い目にあったからこその反動であるとも気づいていたため、動く事が出来なかった。
 本来ロサリオにとってヘルツォークでの出来事などは、そこまで責任を負わずとも他人事でいいとさえマルティーナは思っている。
 ロサリオのこの姿を目の当たりにすると、自分達が頼り、そして彼を縛ってしまったと後悔すらしてしまう。


 「こ、この小僧がっ!? ここまでされて交渉も糞もあると思っているのかっ!? しかもそんな状態の3人など、既に人質としての価値など失せているわっ!! 」


 激昂するグランクルス帝王に対して、ロサリオは表情に笑みを張り付けたまま言葉を返す。


 「おやおやずいぶん冷たいじゃないか…… まぁ、お前がそう言うだろうとは考えていたさ。だからな、7日後には俺が直接クラスにこの3人と引き換えに賠償金を受け取りに行く…… もし大白金貨が1枚でも足りなければ、クラスはもちろん、隣接するエレーナとサラトフが管理していた直轄領には俺が攻めこんで切り取らせて貰うさ。面倒くさいと感じた瞬間に皆殺しにするがな…… まぁお前らは味わうがいいさ、勝手に攻め込んで、全滅させられたあげくに、王家の直轄領まで奪われるという屈辱を…… 大陸中にその無能を晒して、今後1,000年笑われればいい…… ククク…… フハハハハハ、アーッハッハッハッハッハッ!! 」


 「な、なんだと!? 期間も短い…… 無茶苦茶だぞっ!! ティ、ティファニアやヘルツォークはそれでいいのか!? 」


 怒りを通り越し、表情が青褪めている帝王はわなわなと震えているだけであり、イヴァーンが驚き声をあげる。
 帝都からクラスまで、早馬で何とか7日ぐらいであるので、イヴァーンの無茶という言葉も道理ではあるが、ロサリオには関係ない。


 「ああそういえば言ってなかったが、うちは形の上では俺の養親といえる前当主をお前らに殺られているからな…… 代替りしたばかりで、対外的にはまだヴェルナー卿が当主だと諸外国は認識してる所も多い。ランビエール領でも然別…… 影響力は俺より強いだろう。だから、俺が…… ランビエール領が引くことはない…… 例えティファニアや主筋のヘルツォークが何を言おうともだ…… 貴族が当主筋を獲られて、引くわけにはいかんよなぁ! そんな事をしたら、ランビエール領は大陸中のいい笑い者になってしまう。」


 対外的な戦争で当主筋が死ぬ事などままあることだ、ふざけるなとイヴァーンとグランクルス帝王は思うが、筋の話としてランビエール領は、グランクルスに対しては道理であるので口答え出来ない。
 このランビエール伯爵を止める事ができるのは、ティファニアやヘルツォークしかいないと、再度問うようにティファニア王やヘルツォーク公爵を見るが、二人は冷たい視線で見返すだけであった。


 「いやいや、中々帝国としても引けないのは解るが…… 滑稽を通り越して、腹に据えかねてきたな…… 」


 こみ上げてきた怒りを払うかのように、唯一残っていたパーヴェル達の部位を斬り飛ばしてしまう。


 「がぁぁぁぁあああっ!? 」「ヴぃぁあああああぁぁ…… 」「ぎゃぁぁぁぁああっ!? 俺の手足がぁぁぁぁあああ!! 」


 「アハハハハッ、素敵な置物の出来上がりになってしまったじゃないか…… まぁ今さらもうお前らと話す事はない。クラスで返答を聞くさ。覚えておくといい、俺はクラスにランビエール領兵100名程度と赴くからな…… 」


 「ロ、ロサリオ様!? 」


 「ちょ、あんた…… たったそれだけで…… 」


 そのロサリオの兵数にグランクルスの面々だけでなく、ティファニア王やヘルツォークの公爵、この場にいる人間も驚いてしまう。アメリアにマルティーナは驚きを声に出してしまっている。
 そこに今まで口を開かなかった、グランクルス帝国第1王女がロサリオに向かって問い掛けてきた。


 「もう今さら堅苦しい挨拶はいいでしょう…… そのような少数で来るとは、何か考えがあるのかしら? それとそちらのエレーナは返して頂けるのかしら? 」


 年の頃は20代も半ばに差し掛かるが、宮廷内の謀略に生きており、未だに独身である所に異質さを伺える女性である。
 射抜くようにすぼめる目線に口元は扇子で隠しており、表情全体は窺えないが、力強いその瞳は常人であれば、即座に竦み跪かせてしまう程の迫力だ。
 エレーナはまさか自分を気にかけてくれるとは思っていなかったのか、猿轡で声にはならないが、唸り声を上げて反応してしまう。


 「やっと口を開いたかと思えばそんなことか。こいつは俺の戦利品だ、無条件で貰っていく。それに、もし俺がヘルツォーク公爵領に接する帝国領の領土を落とした時、この女がいればその後の統治もやりやすいだろうからな…… もうこいつには、俺に逆らうよりも帝国に反旗を翻すほうを、喜んで選択する程の恐怖を植え付けてあるからな。」


 そう言って地の滴り落ちる剣の鍔鳴りを聞かせながら、這いつくばらせてあるエレーナをロサリオが見下ろすと、必死に懇願するように首を縦に降って恭順を示している。
 第1王女はそのエレーナの姿に、まるで別人を見ているかのような目を向けて驚きを態度で表している。
 本国では、気丈にも自分に逆らいイヴァーンの派閥に加わり、齢12ながら戦場で勇ましく指揮を奮っていた妹の成れの果てに驚愕する。
 敵対していたとはいえ、政治力は皆無であり、兵には多大な人気を誇る妹は、利用価値が大きく取り込みたいと考えていた。
 その妹も既に死に体とされていたかと考えを改めるのであった。


 「恐怖に慄き大白金貨を用意するも良し、少数を好機と攻撃を加えるのもいいだろう…… グランクルス帝国北部を失う覚悟があればな…… ハハハハッ、以上だ、通信は終わりだマルティーナ。」


 「わ、わかったわ…… 」


 「なっ!? ま、まて…… 」


 グランクルス帝王が一方的なロサリオの言葉に驚き、声を上げるがマルティーナがロサリオの言葉を酌んで映像通信魔道具のグランクルス帝国側を魔力遮断してしまう。


 「アメリア、まず残ったランビエール領兵から100名選抜してくれ、それ以外はヴェルナー卿達の遺体をランビエール領に運ぶように。それから、ランビエール領全体に、ヴェルナー卿はメルダと俺の従者を守るために奮戦し壮絶な戦死を遂げた…… そして現当主のランビエール伯爵は、仇討のためにクラスへ赴くと。主筋のお前から言われたら彼等の忠義も少しは報われるだろう…… それからロザリー、壺を持って来てくれ…… 」


 ロサリオは悲痛な表情を浮かべながらアメリアに告げる。グランクルス側との通信が切れたために、傲慢な表情は鳴りを潜めている。ロザリーは言われるがまま素直に3人の血を注ぎ集めた血の入った壺を持ってくる。その姿は全身が恐怖で小刻みに震えていた。 


 「わかりました…… その壺は何に使うんですか? 」


 「ああ、エルザバトに吸わせるんだよ…… あれだけ人が死んだのにこいつを使わなかったからな…… よくは解らんが、不穏な雰囲気を発し出したからな…… おぉ、正解だな。治まってきている。」


 ロザリーの壺を恐怖を噛み殺して見るアメリアはロサリオに問うが、ロサリオはそれに答えながら、取り出したエルザバトを壺に放り込むように無造作に血液が溜まっている中に漬け込む。
 只でさえ黒い魔力が漏れ出す刀身から、さらに魔力が吹き出しているように感じられる。
 これで治まっているのかと、ロサリオ以外は心の中で詰問してしまうが、声に出すことは剣の圧力に負けてしまい発する事は出来なかった。


 「フリーンはそいつらをポーション漬けにしても構わないからとにかく回復させてくれ。」


 「わ、わかりましたが、もう気が触れてます…… 正気に戻るかどうかは…… 」


 必死に切断面に回復魔法をかけ続けてきたフリーンが、息も絶え絶えになりながら答えるが、ロサリオはそれを「問題無い、生きていればどうでもいい」と一蹴する。


 「では、ランビエール領兵達の段取りを付けてきます。しかし100名では襲ってくれと言っているようなものでは? 」


 「それならそれで構わないんだよ…… さて、何か言いたい事があれば御二方から聞こうかな。」


 アメリアやフリーンに対してはぞんざいに答えて、ロサリオはティファニア王とヘルツォーク公爵に向き合うのであった。

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