魔王に堕ちて討伐されたけど、何とか生きてます。

ノベルバユーザー255848

幕間8 黒がお似合いです……(お腹のあたりが)

 「あらあら、とても仲がお宜しいことですね。」


 ロサリオとサーラブが微笑み合う所に、アルカイックスマイルを浮かべた可愛らしい司祭が現れた。
 夕闇の中に浮かび上がるその微笑みは、客観的に見ると桃色の髪に荘厳な司祭服も相まって、非常に美しいのだが、ロサリオとサーラブの心奥に得も言われぬ恐ろしさと不安感が去来する。


 「お二人とも、何か失礼なことを考えてませんか? 」


 「い、いや!? 全然そんなことはないよっ! 」


 「そ、そうですよ…… アハハ…… では私は広間に戻りますのでこれでっ。」


 その妙な鋭さが怖いんだよとロサリオは思いながらも否定しつつ、足早に去っていったサーラブを若干恨めしそうに見るも、視線をフリーンに戻す。


 「どうもサーラブさんには苦手意識を持たれている見たいですね…… 」


 残念そうな顔をするフリーンに対し、ロサリオはサーラブの気持ちに大いに共感する部分はあるが、当たり障りなく応えるように気を使う。


 「獣人族はイグレシア教を信仰していないから、教会関係に苦手意識があるんじゃないかな? 」


 「あら、ということはロサリオ様もですか? なにせランサローテでは中々布教が済んでいませんから…… 酷いです。」


 「あ、いや、それは…… 」


 ロサリオはしどろもどろになりながら慌ててしまった。苦手意識を持っている相手に直接、苦手意識がありますかと問われても、上手く切り抜ける術などは、13歳を目前にした少年には持ち合せていないのも無理はない。
 隠しても仕方がないかと、晩餐会の雰囲気も手伝って素直に言うのであった。


 「まぁ、フリーンさんには、最初から僕自身の正体を見抜かれてましたからね…… どうしても見透かされてしまいそうで、どうにも…… 」


 苦笑しながら頬を掻くロサリオに対し、フリーンは特に気にした様子もなく応じる。


 「私もグレゴリオの人間ですから、ランサローテ、特にバルトロメ公爵家の事は気に掛かってましたからね…… それにこれからは、母がランサローテに赴く事になりましたしね。本来であれば、私も赴く予定でしたが…… まぁ、ロサリオ様の近くに居たかったので断っちゃいました。」


 「えっ!? フリーンさんのお母さんがですか! やっぱり兄さんとの教会敷設の件ですよね? 同行を断って大丈夫何ですか? 」


 ロサリオの矢継ぎ早の質問にも、特に慌てることなく、くすりと微笑と共にフリーンは答える。


 「母は枢機卿の1人ですからね。今後はランサローテでフェメス公爵との直接的なやり取りをする事になるでしょう。うふふ、私がこちらにいれば、フェメス公爵の事もロサリオ様に教えて差し上げる事ができますよ! 」


 「えっ!? いいんですか? 僕にとっては願ってもいない事ですが…… あっ、でも僕の事は…… 」


 「わかっています。ロサリオ様の事は母には内緒にしますから。グレゴリオにも教会内で色々ありますので…… 」


 微笑を浮かべながら寄り添うように近づいてくるのを、あまりにも自然であったためにロサリオは反応が出来ずに受け入れ、耳元で囁かれるのであった。


 「ですから、ロサリオ様の事もよく教えて下さいね。」


 妙に艶めいた調べの口調に、さしものロサリオも頬を紅く染めて固まってしまう。


 「ぼ、僕の事ですかっ!? 」


 「ロサリオ様は、教会とは別の色々な古いお話知ってそうですから。私の趣味でそういう書物を読んだり、聞いたりするのが好きなんです。ランサローテではそういうお話や書物が大陸より多いと聞きましたから。」


 なるほど、そのような意味での言葉かと納得しながら、教会の事情や教義に疎いロサリオは、御安いご用だとでもいうように軽く引き受けてしまう。


 「書物云々は持ってないですけど、僕が知っている事であれば、折りをみて状況が落ち着いた時にでも話しますよ。」


 「では、落ち着いたら二人でお茶でも飲みながらお話しましょう。」


 フリーンは、 これでアザゼルに関するランサローテに伝わる内容の確認、ひいてはランサローテに赴く母である、ディンプナ枢機卿の助けにもなるであろうと、内心小躍りしそうなくらい喜ぶ。
 ただしアザゼルに関する話しとはまた異なるが、教会が布教する教義の根幹が脅かされるような内容を聞かされる事となり、悶絶することになろうとは、未だ知るよしもないのであった。
 

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