魔王に堕ちて討伐されたけど、何とか生きてます。

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幕間7 サーラブの決意

 魔物大狂乱パンデモニウムを殲滅後、公都ローゼンベルクへ戻ってからの晩餐会で、アメリアとマルティーナがロサリオから離れていった後は、ヘルツォーク公爵及びメリアンヌ公妃らと共に貴族達への御披露目と相成った。
 娘や孫を新たなランビエール子爵となったロサリオに売り込みもあったが、メリアンヌ公妃がやんわりと断るように話を持っていくのには、ロサリオも助けられたが精神的に疲れてしまい、区切りのいいところで、休憩も兼ねてそそくさとホールから退出してしまった。


 ホールを退出すると、獣人族ということもあり、場に馴染めなかったのか、廊下にある出窓から夜空を眺めるサーラブを見つけるのだった。


 「どうしたの? こんなところで。」


 「あっ!? 御主人様こそ? 」


 パーティー用の黒いドレスに身を包んだサーラブは、月光に麦穂のような濃い金髪が煌めき、それらを靡かせてこちらに振り返る。
 その綺麗な金髪の煌めきと、長く細い手足に溢れんばかりの胸元が撓む姿に、ロサリオは頬が熱くなっていくのを感じてしまう。


 「いや、僕は流石に疲れてしまって…… サーラブも休憩かい? 」


 「私は…… 狐人族っていう差別的なものは驚くほど少なくて吃驚したんですが、騎士や貴族の方達の目付きにちょっと…… アハハハ…… 」


 「あ、あぁ…… なるほどね…… 」


 男の欲望を刺激する扇情的な格好をしているので、しかも抜群のプロモーションときている。それも致し方無いかと二人とも苦笑してしまう。


 「サーラブは奴隷のままで良かったの? アルラオネさん達に何を言われたかはわからないけど、僕からヘルツォーク公爵やアルラオネさんに言えば、解放は出来るはずだよ。冒険者になりたかった訳でしょ? 」


 二人きりであり、広間からはパーティーの喧騒が聞こえるだけである。それらを背景に普段よりも踏み込んで聞いて見るかと質問をする。
 ロサリオとて流れでサーラブを奴隷としただけであって、そう扱うには抵抗があるし、何より不憫に思う気持ちが大きい。
 ロサリオの言葉を受けてサーラブは、そのようなことは何ていうことではないというように微笑みかけた。


 「何をおっしゃるんですか、御主人様がいらっしゃらなければ、私は既にあの魔族によって殺されていたでしょう。」


 サーラブは、自身のチョーカーのような奴隷の首輪を指差しながら、ロサリオに言う。そう、奴隷の主人の魔力波のみで、死に至らしめることの出来る凶悪な物であった。


 「御主人様があのデカラビアを倒して下さったからこそ、私は今、このようなドレスを纏ってパーティーに出席出来ているのです…… 冒険者では無理です。感謝してますよ、貴方が私の御主人様で! 」


 「でも奴隷だなんて…… せっかく助かったんだ! もっと自由になれるのにっ!? 」


 サーラブは憂いなく気持ちを言ったが、ロサリオはまだ奴隷という今の縛られているサーラブの状態を気にしてしまう。


 「何を言ってるんですか…… ロサリオ様は全然命令もしませんし、自由に過ごさせて貰ってますよ! 皆さん、特にオリビアさんやマルティーナさんとは仲良くさせて貰ってます。アメリアさんとフリーンさんはちょっと怖いですが…… あっ!? 内緒にして下さいよ! 」


 あっけらかんとした物言いにロサリオは毒気を抜かれてしまった。後半の意見にはロサリオもつい同意してしまう。


 「僕もあの二人はなんか怖くてね…… その気持ちは分かるよ。」


 「ははっ! 」


 「ふふふ」


 ロサリオの意見につい吹き出してしまうのを止めることが出来ないでいた。


 「それにですね、獣人族は基本的に強いものに従うのは嬉しいんです。それが御主人様のような優しくて強い方ならなおさらです。」


 「ありがとう、ナーダでは僕のほうが君に助けられたよ…… 本当に助かった。奴隷のようには決して扱わないから、これからもお願いするよ。」


 ここまで言ってくれると、ロサリオも心の奥に引っ掛かっていた棘のような痼が取れるのを感じ取ることが出来た。兼ねてより伝えたかった、ナーダ城壁まで満身創痍の自分を連れていき、魔物達の分断に幻術で助力してくれた事に対し、礼を述べる事が出来るのであった。


 「サーラブ、これをそのチョーカーに。」


 呼ばれて素直に近づき、首を差し出してくるサーラブにマジックポーチから取り出した魔術細工が施されたブローチを取り付ける。


 「このような高価そうな物、私にいいんですか!? 」


 ロサリオが取り付ける前に目に入ってきた精緻な模様に、魔力が帯びているのも感じ取る事ができたサーラブは、恐縮してしまう。


 「サーラブはこれからナーダに行く、砦建設や他の獣人族との繋ぎ役も含めて、あちらは危険になるかもしれない…… 状態異常耐性と魔力耐性が格段に上がる。それにこれなら万が一にもそのチョーカーが奴隷の首輪とは気付かれないだろう。僕の母の物で申し訳ないけどね…… 」


 母のお古を渡してしまう申し訳無さと、その母をどうしても思い出してしまうため、郷愁と心墺にこびりついた悔恨が混ざりあった表情で苦笑してしまう。


 「そ、そのような大事な物を私などに…… 受け取れませんよぉ。」


 サーラブもロサリオの母がどのように殺され、その悔恨と苦悩の果てにロサリオがどのような行動を取ったかを聞いている。そな形見を貰うなど、とてもではないが分不相応だと考えるのも仕方がない。


 「いいんだ、その代わり何があっても生き残る事…… それは絶対にサーラブを助けてくれる筈だ! だから、絶対に僕の下に帰る事! いいね!! 」


 自分に身に余る物を頂いて畏れ多いとおののくサーラブの両肩を掴み、瞳を覗き込みながら強く言い聞かせる。


 「は、はいっ! わかりました。必ず御主人のお側に…… このブローチに誓って! ですので、私のこともちゃんと相手して下さいね! アメリア様達の事もあるので、愛人でもいいですよ! うふふ。」


 決意を顕にした途端、思い付くように悪戯っぽく流し目で言うサーラブに、まだまだ少年の身と言えるロサリオは、顔を赤くしてタジタジになることしか出来ないでいた。
 そんなロサリオを楽しげに見つめ微笑むサーラブには、奴隷としての悲壮感などは、微塵も感じさせる様子は見えないのであった。

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