魔王に堕ちて討伐されたけど、何とか生きてます。

ノベルバユーザー255848

幕間5 ランビエール子爵邸

 ヘルツォーク公爵領を王都ティファニアに向けて足ってから1日目の夕方、ロサリオ達一向はランビエール子爵邸に到着していた。
 ランビエール子爵、子息を次々に病や魔物行進モンスターパレードで亡くしており、その後はランビエール子爵領の跡継ぎを狙う貴族の売り込みにこの数十年辟易としていた。


 実はヘルツォーク公爵もランビエール子爵も共に、ヘルツォーク公爵の従兄弟であるエルザリオ・ヘルツォーク子爵を後継ぎと考えていたが、当の本人にその気も無く、さらに昨年エルザリオ子爵が鬼籍に入ってしまったために話も立ち消えてしまっていた。


 屋敷の使用人も一新することなく、また新たに雇い入れることもなかったために皆が高齢と化していた。
 いよいよこのランビエール子爵領をヘルツォーク公爵に返領することになるかと、誰もが考えるそのような状況の中、急遽ではあるが、エルザリオの隠し子である人間がランビエール子爵領を継ぐ事となり、屋敷中は上を下への大騒ぎとなってしまった。
 しかも、自らの主人であるランビエール子爵からは、1週間程の内に王都ティファニアへの移動の際に、アメリア公爵令嬢を伴って訪れるというので驚きである。
 加えてヘルツォーク公爵からは、新たなランビエール子爵のメイドとしてアードリゲ孤児院出身の5月で13歳を迎えた少女を専属に据えるというから、受け入れの体制や部屋の準備にと大忙しであった。


 この少女、ロザリーは元々とある侯爵の息女ではあるが、故あって3歳の頃よりアードリゲ孤児院に預けられていた。同い年ということもあり、ティファニア王立魔法学院でロザリーも学院に席を起きながら、アメリアの身の回りの世話をしていた少女である。
 グランクルス帝国での国境会談のためにアメリアと一緒にヘルツォーク公爵領へ戻っていたが、国境会談へはロザリーよりも年長であり、アメリアがローゼンベルク城で生活するにあたっての幼少の頃よりの専属であるアンナが帯同していた。
 ロサリオをアードリゲ孤児院出身ということにしているため、アードリゲ孤児院の事を教え、且つ場面場面で手助けを行える人物として幸いであったためにヘルツォーク公爵が手配した少女である。


 その少女に出迎えられたロサリオ達一向の中で、アメリアは非常に驚いていた。まさかランビエール邸にティファニア王立魔法学院での級友兼メイドであるロザリーに、先回りされるように出迎えられるとは夢にも思っていなかった。


 「ようこそ、ランビエール邸へアメリア様。そして、おかえりなさいませ御館様。」


 「ロ、ロザリー!? どうして……? 」


 「御館様って僕の事か!? あ、いや、確かにそうなるのか…… 」


 口に手を当てて驚いた様子のアメリアに対してロサリオは御館様と呼ばれて戸惑っていたが、自身の今の肩書きから理解する。


 「この度、ヘルツォーク公爵様より、ロサリオ様付きのメイドとして拝命されましたロザリーと申します。以後宜しくお願い致します。」


 カール掛かった金髪をハーフアップに纏めた無表情で一礼して答えるのであった。
 アンナは無表情を装いながらも目の奥が表情豊かではあるが、13歳という年相応に見えるこの少女は、本当に無表情だなとロサリオは観察する。


 (なんかやりにくそうな娘だなぁ…… )


 「貴女がロサリオ様の専属…… 」


 驚きながらも旧知の人物が、ロサリオに付いているほうがいいのではないかと、瞬時に考えを巡らすアメリアであった。


 「皆様御疲れでしょうから一先ずは屋敷にお入り下さい。大御館様も御疲れで御座いましょう。」


 その言葉にロサリオもアメリアでさえ、屋敷の主であるヴェルナー卿を差し置いて、入り口で話しこんでしまった事を謝罪するが、老齢の優しさを以て二人に対して、「気にすることはありませんよ。」と笑顔で応えていた。









 夕食を歓待された後、ロサリオ、アルラオネ、アメリア、フリーン、アンナ、ロザリー、そしてヴェルナー卿は執務室に集合して打ち合わせに入るのであった。


 「まぁ、打ち合わせというよりも小僧に対するレクチャーや助言じゃな。馬車内でヴェルナー卿からランビエール子爵領の事は大まかに聞いとるのじゃろ? 」


 アルラオネから集まって貰った目的を発し、ロサリオとヴェルナーは同じ馬車での移動であったので、その際における二人の会話の内容を確認する。


 「細かい内容や実務に関する事は時間が足りなかったですが、ランビエール子爵領の概要は説明しておきましたぞ。」


 ヴェルナーが答える事に合わせて、ロサリオも首肯するように首を縦に振るのであった。


 「専属の宮廷魔法師の件はどうじゃ? ちなみに今のランビエール子爵領にはいるのかの? 」


 「いえ、3年前に引退してからは、当家には専属と呼べる宮廷魔法師殿はおりませんな…… ヘルツウォーク公爵にこの地をお返しするかと考え出した頃でしたからのぉ。」


 確かにランサローテにも各家には、専属と呼べる宮廷魔術師がいたなぁと、思い出すロサリオであった。


 (屋敷内の使用人も高齢であったから、家の存続を諦めていたのが明白ということか。ヘルツウォークから代官を派遣するだけであれば、館までは要らず、ましてや宮廷魔法師も要らないと
雇い入れも止めていた訳か。)


 「では、ロサリオ様も新たに魔法師を雇い入れたほうがいいとアルラオネ様は仰るのですか? 」


 アメリアがアルラオネの意図を予測して質問した。フリーンは、さも結果が解ったかのように、出されていた紅茶に手を付けている。


 「結論から言えばそうじゃが、貴族家としては魔法師のネットワークも外務に関する情報収集の重要な手段じゃからな。小僧にはなんぞ希望でもあるかの? 」


 「この段階でいきなり僕に希望!? じゃぁ…… マルティーナで! 」


 さして迷うこともなく告げた名前にアメリアとアルラオネは反応する。フリーンはやはりと言った具合で、紅茶を飲みながら静観している。


 「即答か、ずいぶん仲がいいのぉ。ひひひ。」


 「あら、そんなにマルティーナの事が気に入っているんですか? フフフ。」


 アルラオネはマルティーナとの事を揶揄するように厭らしい笑いを発しながら弄ってきた。アメリアの笑みが出た辺りから場の気温が下がったように思われ、ヴェルナー卿は訝しむように見回して、身体を擦るのであった。


 「何でそうなるんです…… ここで知ってるのはマルティーナしかいないし、軍所属という事は、個別に雇われてはいないということでしょ。それに…… おい、糞幼女! あんたと俺はパイプはあったほうがいいだろうが。」


 ロサリオの最後の素に戻った言葉に周囲は首を傾げるが、アルラオネは、さもありなんとロサリオと二人で聞いたリリスの情報に思考を切り返るのであった。

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