魔王に堕ちて討伐されたけど、何とか生きてます。

ノベルバユーザー255848

第66話 第2章 エピローグ

 慌ただしくも翌日には、ローゼンベルクからメルダースを経由して王都へ出発することとなった。
 王都へ向かう護衛部隊は、なるべく早い行軍速度を維持したいというロサリオの提案もあり、50騎の近衛騎士隊という少数となった。それらをヴァルターの副官であったサブナクが率いる。帯同する神官もフリーンのみとなり、王都への移動自体も他の貴族達に危ぶまれたが、帝国の動きを気にするロサリオと、彼がいれば道中の安全に問題無いと判断しているヘルツォーク公爵に押し切られるのであった。


 ヘルツォーク公爵はナーダへ軍展開させるために、ヴァルターにはヘルツォークで軍の編成に当たらせて、オリビアと共に軍を率いて城塞都市ナーダへ向かうこととなった。
 アルラオネは王城にも顔が利き、何より有識者としてこの度のヘルツォークで起こった各騒動の質疑に答えるために王都に赴く。
 マルティーナは魔法師団と共にヴァルター編成軍と同様に城塞都市ナーダへ赴くこととなり、出立準備時にアルラオネより、自筆の魔導書と魔法師が持っている魔力制御と威力の補助となる媒体である杖をアルラオネが秘蔵している物の中から受け取っていた。


 彼女はアルラオネと同様に四つの魔力属性を備えており、且つその属性もまた火、風、氷、雷と同じ攻撃に特化したものであった。無属性は誰しもが持っているものなので、カウントはされない。
 大陸にも10人いるかいないかという屈指の才能を持つ魔法師である。中級魔法は全て修得済みであり、実戦を経験したことにより応用も利くようになってきている。
 この世界の人々がほとんどが1属性持ちであり、2属性で100,000人に一人、3属性で1,000,000人に一人であり4属性となると10,000,000人に一人という希少な存在となる。


 アルラオネは、この際であるから上級魔法と一つくらいは最上級魔法を使えてもいいだろうと考えて、行軍中とナーダで読み説いて修得せよと命じた。マルティーナ自身のレベルは24というDランクであり、年齢を考えるとこのティファニア王国では高いが、魔力量は持って生まれたものが大きいのと、魔力制御は練度に起因するので問題ないだろうと判断した。
 加えてそれらを補助するための魔道杖には、Aランクの魔物の魔核という結晶が埋め込まれた逸品であるので大いに役立つであろうという算段である。
 魔物の素材の中でも高く取引されるものであり、魔道具の起動核や武器防具等の装備品への需要がある。低レベルの魔物の魔核は、小さすぎるので合成などの加工段階で質が悪くなるので安いが、B以上の魔物となってくるとそのまま使えるほどの大きさであり、品質も高くなるので非常に高価となってくる。


 アメリアは今まで攻撃魔法を習得はしてこなかったが、アルラオネから身に付けておいた方がいいと助言されたので、アメリアは、光、水、氷という3属性持っていることもあり、氷属性の攻撃魔法が収録された魔導書を渡され、道中で学んで実践しておけと言われてしまった。


 公妃メリアンヌは、王都に赴くロサリオに一通の書状をしたためた。そして、出立前のロサリオに言伝てを加えてそれを渡す。


 「もし、王都で困った状況に陥ったら、王都にあるリントヴルム王国の大使館を訪れてこの書状を渡しなさい。後は…… 貴方の御加護が祝福を与えてくれるでしょう。」


 「僕の加護ですか? リントヴルム王国……!? 」


 「アメリアにはこのネックレスを渡しておきますね。」


 メリアンヌが掛けているネックレスを外し、アメリアに手ずからつける。


 「これは、お母様がヘルツォークに嫁ぐ前から付けていたものではないですか!? いいのですか? 」


 「もしかしたら役に立つかもしれないわ…… これは、もう私が持っていても意味をなさないから。何かあった場合は、ロサリオ殿をしっかりと手助けして差し上げなさい。」


 「?…… 」


 母の意図が解らずアメリアは疑問に思う。渡されたネックレスが持つ意味をアメリアは知らない。


 リントブルム王国は、イグレシアス大陸の中央部から東部にかけて10ある中堅国の一つであり、ティファニア王国に接している。ティファニア王国とグランクルス帝国を遮っているイグレシアス迷宮大森林の東側にも接しているが、リントブルム山脈でほぼ遮られているために、迷宮大森林にはティファニア王国との国境付近からしか入れなくなっている。
 何よりこの王国は、ヘルツォーク公爵領よりも国の規模は小さいが、少数ながらワイバーンを駆る竜騎士団の存在がある。騎士団とは言っても100騎に満たない数ではあるが、200年前の魔族戦役でも機動力を駆使して活躍し、ティファニア王国とも良好な関係を築けている。
 公妃メリアンヌは、ヘルツォーク公爵に嫁ぐまでは、リンドブルム王国の第一王女であったという経緯がある。


 その母からのネックレスであるのでリンドブルム王国所縁のものであろうが、メリアンヌは懐かし気な微笑を浮かべるだけで、敢えてアメリアには説明することはなかった。
 ロサリオは少数ながら、竜騎士がいる国があるということまでは知っていたが、アメリアに公妃メリアンヌがその国の第一王女であったと聞かされて驚いてしまった。
 ランサローテでもティファニアでも見ることのない、光り輝く白銀のプラチナブロンドは、その国の王族固有の物であると聞かされて、ランサローテ皇族のストロベリーブロンドのようだと妙に感じ入るのであった。


 アリアほどではなかったが、自分の赤味がかった金髪を懐かしく思う。自らの髪に付いてはやはり疑問に思い、ローゼンベルクへの帰路中にアルラオネに尋ねはしたが、彼女自身詳細は不明とのことであった。
 魔術師で研究に没頭するあまり、寝食を忘れたものや失敗のショックが原因で白髪化した事例があると言ってはいたが、根本的な原因は定かではないと言っていた。
 魔力を開放してある程度力を発揮した戦闘態勢に移行するときに髪色が黒く変わるのは、自分自身の魔力が全身に浸透した結果であろうとアルラオネは推測しており、それをロサリオに伝えた。
 ロサリオ自身も魔力には、各個人で質や波形が異なるということを知っているので納得であった。


 帝国の動向が気にかかり、ロサリオ達はナーダへ向かうマルティーナとオリビア、サーラブの身に一抹の不安を覚えてしまう。
 ロサリオはせめてもの思いで、オリビアには以前貸し与えた剣をそのまま譲り渡し、マルティーナには、自身のマジックポーチに入っていた魔術細工の施された指輪を譲るのであった。
 この指輪は、レベルが50を超えると装備者には効力が無くなってしまうので死蔵していたものである。オリビアは先の魔族との交戦や魔物大狂乱パンデモニウムでレベルが51に上がり、晴れてAランクとなっているので意味をなさない。
 賢者の石の粉末と魔核が合成された紫色の宝石が嵌った指輪は、身体能力向上と魔力耐性と状態異常耐性が上がる代物であり、Bランクまでの冒険者であれば垂涎の逸品である。
 指輪の効能を聞いたマルティーナは驚き、加えてロサリオが手ずから左手の薬指に嵌めたこともあって、卒倒してしまうという一幕があったのはおまけである。
 サーラブは狐人族としての種族特性もあり身体能力が人族とはかけ離れており、本人も冒険者を目指して修練に励んでいたためにレベルも21に達しており、登録前の身としてはDランクと高く、種族的補正を考えると身体能力ではCランクの人族に匹敵する可能性もある。
 マルティーナへ渡した指輪よりは劣る品ではあるが、魔力耐性と状態異常耐性が上がるブローチをチョーカー型の奴隷の首輪に取り付ける。
 8歳の冒険者登録の時に母から贈られた思い入れのある品であるが、死蔵させておくよりは使った方がいいだろうと考えて渡すのであった。これであれば、万が一にでも奴隷の首輪だと気付くものは出ないだろうという配慮である。
 後に何も貰うことのなかったアメリアとフリーンに詰め寄られるのは、女性の心の機微に疎いロサリオの自業自得であるのかもしれない。


 言葉にすると、良い意味でも悪い意味でも実現すると言われることもあるように、ランサローテでフェメスが言っていた大陸の状況を自分の経験と合わせて推測して述べたことから、ロサリオも自身の言葉によって不安に囚われてしまっている。


 聖イグレシアス歴998年6月19日、ロサリオ達は帝国の動向に不安を覚えながら、招集に応じるために王都へ向かうのであった。

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