魔王に堕ちて討伐されたけど、何とか生きてます。

ノベルバユーザー255848

第55話 公都ローゼンベルク

 翌日、アメリア一行はローゼンベルク公都へと出発を果たした。後5日もすれば、逆に城塞都市ナーダに増援の部隊が到着するだろう。
 砦の構築や防衛体制が形に成り次第、ナーダ伯爵領の他の都市や町から増援を編成し、ローゼンベルクの派兵部隊と交代して帰還させるという形で、ヘルツォーク公爵とナーダ伯爵で落ち着いた。


 ロサリオ自身は当初、馬を貸してくれれば馬に乗っていくと主張したのだが、少しでも身体を癒せという方々の声により、アメリアの乗る馬車へ同乗させられるのであった。
 最終的には、アメリアの「私のことがお嫌いですか? 」などと言われてしまえば、断ることなど出来るはずもなかった。
 氷炎の牙やローゼンベルクの薔薇、はたまたサブナク達にまで笑われてしまい、出発時は身を小さくしてしまったのは愛嬌である。
 道中は多少の魔物が街道を逸れたところにいたのを発見して討伐したぐらいで、これといってトラブルに遭遇することもなく、ナーダを出発してから5日目の昼過ぎに公都ローゼンベルクを一望できる高台に到着するのであった。
 ここからは、1時間と少しぐらいで城門に着けることもあり、アメリアの希望により少々の休憩を挟む。


 ロサリオはこの後、ヘルツォーク公爵へ謁見後にランビエール子爵と顔合わせをすることとなっている。状況次第では、このままランビエール子爵領の領都メルダースに足を運ぶこととなるだろう。
 大陸に飛ばされて以来、状況に流されるままに巻き込まれてしまっていたため仕方ないとはいえ、もう少し自分のペースで物事を進められないものかと、思わず溜息がでそうになってしまった。
 そんなロサリオの胸中を知ってか知らずか、アメリアが誇るように尋ねてくるのであった。


 「どうですか、ロサリオ様! ヘルツォークが誇る我が公都ローゼンベルクは!! 」


 「おおっ!? これはまた凄く大きい都市ですね!! 」


 中央に要塞とも言える頑強な城を中心に、円を描くように内壁二つと外壁で3層構造となっている。


 「一番外側の層にあたる外壁の内側の外層は商業区、内壁と内壁の間にある中層は居住区、内壁と城壁の間にある内層は、主に貴族邸や限られた商業施設に商会などがあるんです。約70万人が生活する大陸でも有数の大都市ですよ。」


 この規模の大きさを誇る都市はランサローテには無かったので、ロサリオは非常に驚いていた。
 それだけではなく、東西南北にはローゼンベルクの衛星都市として、40km圏内に人口3万人から5万人規模の都市があるとアメリアは言う。
 もちろん交易上、理には叶っているが規模の大きさに驚いてしまう。


 「……いやぁ、規模の大きさに圧倒されますし、あの中央にある城も壮観だ。外敵に対する強固な要塞として迫力がありますね。ランサローテでは、精々が20万都市が最大だったので、驚くばかりですよ…… 」


 ランサローテは人口比率は島の広さに対して異常に高いが、都市1つしかないような貴族家も多く、それらが同盟を組んだり、家単独で以てのみ戦っていた都市もある。 
 当時大きかったベントゥーラ侯爵やパルマス侯爵も首都は10万人程度の規模であった。
 バルトロメ公爵家の首都であるバルトロメでさえ5万人と2家に離されていた。
 中央や南部の争いから離れていた、北方のテネリフェ辺境伯家の首都が20万人と多かったのは、心底では戦乱を嫌う人々の内心を物語っているのであろう。
 領内全てから兵を集めて軍を編成するので、首都の規模に拘る余裕はなかったとも言える。皇都アレシフェ等は人口5万人にも満たず、戦乱の終盤に掛けてはバルトロメ公爵家に抑えられていた。


 「元々武門の家柄ですから、王都ティファニアの美しさには負けてしまいますが、ここから見ることができる大陸で最も勇壮な公都の姿が好きなんです。歴史も深いので、戦一色の様相を呈している帝国の都とも異なり、趣きも兼ね備えているんですよ!! 」


 「なるほど…… 1,000年前は主戦場にもなって、200年前もティファニア王国の主力として、魔族と戦ってきた国ですもんね。」


 戦乱と平和を享受して、繁栄を果たしていることに敬意を込めて述べるロサリオに対し、気分を良くしながら訂正部分を伝える。


 「国ではなく、公爵家ですよ! ロサリオ様。」


 自家を敬意を以て称されることは大変嬉しいが、公国ではないとアメリアは微笑みながら釘を指すのだった。


 「そうでしたね…… むしろ国ではなく、一貴族家というのがもっと驚きですがね…… 」


 苦笑しながら、改めてヘルツォーク公爵領の強大さに脱帽するのであった。


 「姫様、そろそろ出発しては如何かとヴァルター様から。」


 二人だけではなく、氷炎の牙やローゼンベルクの薔薇の面々も公都の姿に見惚れているところにメイドのアンナが出発を告げにきた。


 「では、次は城を案内します! 参りましょう、ローゼンベルク城へ!! 」


 アメリアはロサリオをの手を引き、馬車へ誘うのであった。


 城門前は混み合っていたが、護衛隊の掲げる旗にアメリアの乗る特別な馬車は、遠目からでも衛兵達は確認することができた。
 アメリア一向が戻る大体の日時は把握されていたため、大勢の出迎えと共に門を潜り抜けるのであった。
 魔族の一件は公には伏せられてはいるが、ナーダでの魔物大狂乱パンデモニウム鎮圧は民衆にも伝わっており、馬車を目に止めた民衆からは大歓迎を以て称される。
 特にアメリアは、元々の人気も然ることながら、魔物の総数1,500から逃げずにあまつさえ陣頭指揮まで取り戦術級の固有魔法まで行使したことが、ローゼンベルクでは公表されているために、人々の熱気が凄まじい勢いで馬車に押し寄せてきている。
 護衛隊は民衆を馬車に近づけさせないように四苦八苦している。


 「凄い人気だね! アメリアは。」


 馬車からにこやかに手を降るアメリアを見つめながら、この熱狂を引き起こしている張本人に対して、称賛を投げ掛けるのであった。


 「確かにアメリア様は元々どの都市の領民にも人気がありましたが…… まるで凱旋を祝うような、あっ!?」


 アンナはこの熱狂ぶりの原因に推測が立ち声を上げた。


 「多分、わたくしがナーダで取った行動がもう伝わっているのでしょう…… 少し恥ずかしいものですね。ヘルツォーク公爵家の者としては誇らしいですが、淑女としては、はしたない部分も多々あったと思いますし…… 」


 少し照れ笑いを浮かべてアンナに応えたところで、さらに歓声が上がることになった。
 時折、歓声とは別にざわつく声も耳にするようになった。今は馬車の窓を開け放って、観衆達にアメリアが手を振って応えているため、角度によってはアメリアの対面に座るロサリオの姿も目にすることが出来る。
 そのロサリオに対して様々な憶測が今まさに飛び交っている。


 「アメリア様と同乗しているのは誰だ? 貴族様だよなぁ。」


 「あれだろ!? 広場の掲示板や冒険者ギルドに出ていたじゃないか! あのヘルツォーク公爵の従妹の隠し子で…… 」


 「あぁ!? 叙爵されてまだ間もないランビエール子爵か! 魔物大狂乱パンデモニウムでの勲功第一だっていう!! 」


 「うそっ!? あの英雄様ってまだあんなにお若いの! それに凄く凛々しいしまだあどけなさも残っているじゃない!! 」


 アンナにいきなりグイっと窓際に身体を手で押されて、顔を覗かせると途端に黄色い声色が溢れ出した。


 「もうギルドやお父様から発表されていたんですね。ロサリオ様も人気がすごいじゃないですか! ……特にお若い女性の方から…… ふふふ…… 」


 ブルっと背筋に寒気が走り身震いをしてしまい、アメリアのほうへ顔を向けるが頬を引き攣らせてしまった。氷の微笑というよりは、凍てつき度が強い表情と寒気に慄きアンナについ文句を言ってしまった。


 「いきなり押さないでくださいよ!? ていうかもう僕がランビエール子爵だとローゼンベルクの人々に周知されているんですが!? あれっ……? そもそも僕は了承を口にした覚えは……? 」


 「あんな受け答えでは、貴族相手には都合のいいように捉えられてしまいますよ。もう、本当にロサリオ様は戦い以外では抜けすぎていて心配になります。お受け取り下さい…… あなた様にとってプラスにはなれど、マイナスにはならないはずですよ。」


 アメリアは氷の微笑を解き、苦笑しながら忠告をするのであった。

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