魔王に堕ちて討伐されたけど、何とか生きてます。

ノベルバユーザー255848

第50話 エリクサーの効果

 「その件も今後のことも含めて、予定通りに本日は協議を行う必要があるじゃろ。」


 元々は魔族の侵攻経路の対応を兼ねて会議を行う予定であったが、アルラオネの通信によりロサリオの正体をヘルツォーク公爵が知るよしとなったこともあるので、公爵を交えて会議を執り行う必要があるとアルラオネは判断した。
 事実、アルラオネはヘルツォーク公爵の予定を午後1時から抑えている。その公爵は今頃ランビエール子爵と打ち合わせをしているが、そのことはまだアルラオネは知らないことである。
 ナーダ伯爵にも確認のため口を開いた。


 「ナーダ伯爵、元々の会議の予定は変わらないが、ヘルツォーク公爵もギルドの映像通信用の魔道具を使って会議に参加するので、その心積もりでいてくれ。」


 「公爵直々に参加ですか!? あぁ! そのイヤリングで!! それだけの大惨事でしたしまぁ、彼のこともありますか…… 」


 「うむ、なので…… おい小僧! 」


 アメリアをマルティーナとフリーンが引き離そうと、やいのやいのと言い合いながら、掴み合っているのを宥めている所に、急に声を掛けられたので、ビクッ、と驚き身体を震わせてしまい、その隙に密着状態であったアメリアを両名が引き離すことに成功した。


 「エリクサーの甲斐もあって身体は大丈夫そうじゃが、実際のところはどうなんじゃ? 」


 確かに一同、顔色を良くして起き上がった所で、喜びを露にしてしまっていたが、実際に具合を聞いてはおらず、その事に気付いてハッとしながらも、ロサリオを凝視してしまう。
 皆に見つめられつつ、こそばゆいものを感じてしまうが、自身の状態を確認するため、目を閉じ、深く深呼吸を行い、全身に魔力が行き渡るように、ゆっくりと身体強化を発動させる。


 「うん、確かに全快してます! 凄い!? 噂に違わない効力ですね…… 強いて言うなら、少し眠いくらいですか…… 」


 「それを聞いて安心したわい。精神的に疲労しとるんじゃろ…… さしものエリクサーでも心の疲労までは取れんということじゃな。そんな中、申し訳ない気持ちもあるが、小僧にアメリア孃にも、午後からのギルドでの会議に参加してもらう! 」


 「えっ!? アメリアはまだしも、僕もですか? 」


 「うむ、公爵の希望もあってな。お主の今後に関しても含まれておるからの。まぁ安心せい! 悪いようにはなるまいて。じゃから呼びにくるまではゆっくり休んどれ。」


 「あれっ!? じゃあお師匠様、私達は? 」


 名前の上がらなかった者達を代表するように、マルティーナがアルラオネに慣れた様子で質問した。


 「フリーンは我々に同行してきた神官の中で、唯一戦場に出とるからの、魔力ポーションを使ったとはいえ、本日は休養じゃ。マルティーナも同様に休養じゃな。」


 二人の疲労を心配し、既にヴァルターには話を付けてある。戦後の処理に人手は欲しいが、魔力を限界近く使うと、精神力が消耗し、いかに魔力ポーションで回復しようとも精神疲労は抜けない。
 十代前半の少女達には、大軍が入り乱れる戦場に、出陣するだけでも疲労は相当だろうと、ヴァルターは苦慮していたこともあり、アルラオネの申し出を2つ返事で了承を返していた。
 やはり、二人とも疲労は溜まっていたのだろう。それを聞いて表情が和らいでいる。


 「あれっ!? じゃあ私は午後からどうするんですか? 」


 さすがに立場上、自由の身というわけにもいかないし、一人での自由な時間はないだろうと自覚はしていたサーラブが声を挙げる。


 「あぁ!? すまんすまん、お主も会議に同行じゃ。小僧はどちらにしろ、ここに留まらずに公都ローゼンベルクへ、来てもらわなければならんからな。お主は小僧の奴隷という扱いになるから、ギルドで魔族の侵攻経路の引き継ぎじゃ…… 獣人族なら知っておるのであれば手配は付くじゃろう。ギルド長のヘルナーゼに人選はまかせるわい。! 」


 「確かに、私から、ひいてはヘルツォーク公爵からの強制依頼となるでしょうからな。兵との合同での行動になりますので、口止めも大丈夫でしょう。そもそも彼らはそのルートを隠しておりましたからな。」


 隠していたという言葉にサーラブは、ギョッとして身をこわばらせてしまい、しどろもどろに悪気はないことを説明する。


 「いや、あのぅ…… 別に獣人族に悪気はなくてですね…… 人族とは、種族的に仲良くはないといいますか…… えぇとっ!? 悪いわけではなくてですね…… うぅ…… 」


 「別に責めているわけではないよ。言い方が悪かったみたいですまない。実際に心無い人間は差別をしてきたからね…… しかも貴族に多いのが達が悪い! 種族や村落を守るために仕方のない部分は認めるよ。」


 もはや、全く要領の得ない言い訳をしているサーラブを、ナーダ伯爵自身がフォローをするという、ちぐはぐな形になってしまっている。


 「ただし、今後はもっと種族間や都市規模で彼らとの関係を築いていかねばと考えたのだよ。場所が場所だけに彼らの身も危険を孕んでいると言えるしな。」


 貴族でナーダ伯爵のように、獣人族を差別的に捉えない人間は少数である。彼等は数こそ少ないが、人族より身体能力も優れ、種族固有の能力もあるために、個体差はあれど単純に人よりも強いと言える。
 人族の中には、潜在的に彼等を恐れているものが多いのだろう。そこから排他的になり、差別が生まれている。
 武に携わるものや冒険者は、強さや能力に重きを置くからだろう、差別意識が無いとは言わないが、圧倒的に少ないと言える。
 辺境に所属する貴族は、魔物の対処や国境間での争いも多いため、能力を重視することもあり、差別意識は低い。能力があるものは、それだけ有用ということなのだ。
 特にナーダ伯爵は、彼等の能力を鑑み、常々、都市間の規模で良好な関係を作りたいと考えていたため、 転んでも只では起きぬとばかりに、前向きに獣人族とのことを捉えていた。


 「まぁ、そういうこもあってサーラブも出席してもらう。既に種族間でのいざこざなどしとる場合ではないからの。現に魔族が、ヘルツォークへ抜ける道を知ってしまったのだからな。お主のせいではないのだろう…… その獣人族が使う道に出現したということは、前々から辺りを付けておったのじゃろう。」


 サーラブに気を使う台詞を言うアルラオネの優しさに、少し救われた気持ちになり、出席の件を了承するのであった。


 「ほれっ! そろそろ小僧を休ませてやれっ、解散じゃ。マルティーナとフリーンもしっかりと休んでおくのじゃぞ! 儂はヴァルターの所に行って、会議の件を伝えて来るわい。では午後1時にギルドでなっ。あっ!? それと小僧、その賢者の石じゃが…… 」


 「この石に関しては、僕の中で完結しました…… 申し訳ないんですが…… すみません。」


 アルラオネに世話になっている実感はある。調べたいと言うのであろうと予想が付く。しかし、何故か理由は解らないが、触れてほしくないと思ってしまい拒絶をしてしまった。


 「……わかった。自らの中でしっかりと消化できたら、儂にも教えてくれんかのぉ。ではまたの! 」


 そう言って、拒絶されたことなど、気にしていないという態度で部屋を後にしていった。


 「君達も、そしてアメリア様もお休みください。メイド達に言って部屋は用意させておきましたから、12時にはアメリア様とロサリオ殿を呼びに参らせましょう。短いですが、なるべく休むように。」


 ナーダ伯爵も退出していき、部屋にはロサリオ、アメリア、マルティーナ、フリーン、サーラブ、アンナの6人が残された。
 眠気が限界にきているのか、ロサリオはうつらうつらと船を漕ぎだしている。


 「じゃぁ、私も休むとするわ。さすがに疲れたし…… フリーンはどうするの? 」


 「私は一度、教会にでも顔を出してから休みます。サーラブさんはどうするのですか? 」


 「私に宛が割られた部屋で休むとしましょう。1時には一緒にギルドへ行くわけですしね。サーラブさんもそういうことで宜しいですか? 」


 「はいっ、私は構いませんが…… いいんですか? 私がアメリア様と同じ部屋で……? 」


 「えぇ、手間は省いたほうがいいでしょう。ではアンナ、サーラブさんが休めるよう準備をお願いします。」


 「畏まりました、アメリア様。」


 「起こしに参りますので、ロサリオ様もゆっくり休んでくださいね。」


 「色々ありがとう、アメリア。少し寝かせてもらうよ。」


 言うなり、直ぐに眠りについてしまったロサリオを見て、アメリアは微笑を浮かべて、アンナとサーラブを伴い退出するのであった。

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