魔王に堕ちて討伐されたけど、何とか生きてます。

ノベルバユーザー255848

第49話 アメリアの襲撃

 ロサリオは、Aランク冒険者パーティー氷炎の牙のリーダーであるヴォルガに背負われて、南門から都市へ入ると直ぐにアメリア達が駆けつけてきた。
 アメリアは、冒険者達や兵達、そして負傷者達で非常に混雑している南門付近だと、ロサリオをゆっくり休ませることは出来ないと考え、自らの名前で兵達に命令を下し、馬車の手配をするのであった。
 馬車が来るまでは、詰所内の一画を使用させてもらい、引き続きフリーンとそしてアメリアが加わってロサリオの治療に当たっている。
 遅れて南門城壁から降りてきたアルラオネがロサリオの様子をフリーン達から確認し、アメリアから馬車の用意をして到着を待っているという状況を聞き及ぶと、ナーダ伯爵の館に行くようにと指示した後は、顔面蒼白の状態で駆け出して行くのであった。
 そのアルラオネの様子に只事ではないと感じ取り、一同不安を覚えはしたが、アメリアとフリーンは治療のため回復魔法に集中し、サーラブは外で馬車の到着を逸る心を抑えながら待つのであった。
 マルティーナは氷炎の牙のリーダーに、馬車が来たらロサリオを運びこんで貰うのを頼み込み、2つ返事で了承が得られたことに感謝するのだった。


 「あれ…… 僕は一体……? 魔物達は? 」


 ふと、ロサリオが意識を取り戻し、独り言のように疑問を呟く声がこの場にいる皆に届くのであった。


 「ロサリオ様っ! 」


 「あんた…… そんな今にも死にそうな顔して…… うぅ、ぐす…… 」


 「すいません、私とアメリア様で回復魔法を掛けているんですが…… あまり芳しくなく…… 」


 アメリアとフリーンは涙を湛えながら、必死に回復魔法をかけている。マルティーナは泣いているのを隠すこともなく、ただロサリオの手を握りしめ続けるのであった。
 ヴォルガは流石に場の流れを読んで、壁に寄りかかりながら彼等を観察している。
 ロサリオは意識が朦朧としながらも何とか言葉を発する事が出来た。


 「昔、戦場でこうなった人をたくさん見ました…… もう回復魔法が効くほど、生命力が残ってないんです…… 二人とも…… ありがとう。もう十分だよ…… 」


 「駄目ですっ!? 回復魔法を途切れさせると、体温がどんどん下がっていくんです! 」


 「弱気になってんじゃないわよっ!? この馬鹿ぁ!! 」


 ロサリオは、馬鹿は酷いなぁと思いながら意識が膠泥していくのに逆らうことが出来ないでいた。そこにサーラブが駆け込んできた。


 「馬車が来ましたっ! 早くご主人様を!! 」


 サーラブのご主人様という言葉に、ヴォルガはギョッと驚き、サーラブとロサリオに対し交互に視線を投げ掛けてしまった。


 「ヴォルガさん、お願いします! 早く馬車へ…… 」


 フリーンにお願いされ、急いでロサリオを担ぎ上げ、馬車に向かうのであった。


 馬車にロサリオを運び込んだところで、ヴォルガは同行はせずに彼等から離れて仲間のところへ戻るのだった。
 アメリアからは、礼はいずれ必ずと言われはしたが、ヴォルガ本人は礼など要求するつもりは更々無い。ロサリオに対して礼を言いたい気持ちは大いにあるが、たかだか気絶してた彼を運んだだけで、礼を貰うような恥知らずではないと考えていた。


 「しかしまぁ、ヘルツォークの御姫さんに美人の魔法師ちゃん、可愛い神官の孃ちゃんに、最後はスタイル抜群の色っぽい狐人族の姉ちゃんとは…… いやはや恐れ入るねぇ、あの頭のイカれた白髪にはっ、とぉ…… ありゃ間違い無くバルトロメの麒麟児だな…… 姫さんもそう呼んでたしなぁ。大人物過ぎて参ったねぇ、こりゃ…… 」


 公爵や伯爵から口止めのアクションがあるだろうから、それから考えるかと、疲れた疲れたとボヤキながら、今は深く考えずに仲間のところへ戻るのであった。


 ナーダ伯爵の館に辿り着いたアメリア達は、直ぐ様ロサリオを看病するための部屋を手配してもらい、魔力回復ポーションも執事から貰うことが出来た。
 ロサリオの意識も既に無く、今は忙殺されているだろうが、教会に所属している司教を手配して貰おうと、アメリアがナーダ伯爵の館の執事に申し付けている最中に、アルラオネとナーダ伯爵が飛び込んできた。


 「アメリア! ナーダ伯爵からエリクサーを1本用意して貰ったぞ!! 」


 「ア、アルラオネ様!? たっ、助かります!! 」


 アメリアは礼を言うや否や、引ったくるようにアルラオネからエリクサーを受け取り、全く躊躇することもなく、自身の口に瓶の半分程を含んでから、ロサリオへ口移しで流し込むのであった。


 「ひ、姫様!? えっ? うそぉ…… 」


 「あら、それはズルい…… 」


 「躊躇いがないのぉ。」


 「あっ、ご主人様の身体全体が淡く光輝き出しましたよ! 」


 アメリアの躊躇がない行動に一同が思い思いの反応を見せる中、エリクサーが効いたのか、ロサリオが目を覚まして身体を起こすのであった。


 「まだ無理しちゃ駄目よ。」


 マルティーナが、ロサリオの背に手を差し伸べながら、身体を起こすのを支える。


 「あれっ!? 何でこんなに身体が軽く…… 皆さん、お揃いで何を? 」


 状況が分からず、マルティーナに背を支えられたまま首を捻っている。


 「ロサリオ様ぁ! 」


 感極まったアメリアが名前を呼んでロサリオに抱きつきーー




 「ア、アメリアッ!? んんっ!? 」


 もう一度、残しておいた半分のエリクサーを口に含んで、ロサリオに口移しで飲ませるのであった。


 ロサリオの身体が再度光輝き、身体から今まで蓄積していた披露が抜け去るのを感じ、全身を蝕んでいた倦怠感と高熱が引いて行き、全快していく感触を確かな感覚で掴むことが出来た。


 「これほどの回復は一体………? 」


 何故これほどの回復が出来たのだろうかと説明を求めるように辺りを見回すとーー


 「このエロッ! ドエロ!! 」


 相変わらず汚物を見るような目付きでロサリオを睨んでいる。


 (いやいや、マルティーナ…… 今のは僕のせいじゃないでしょ!? )


 「でも、ロサリオ様はアメリア様を受け入れていましたわ。」


 目は全く笑っていない、得意のアルカイックスマイルでロサリオを見ている。


 (フリーンさんは心が読めるんですかっ!? 受け入れるも何もあれは避けられないでしょう…… ていうかその笑みは怖いんですが…… )


 「ふわぁ、ご主人様とアメリア様が大人のキスをしてました。」


 ドキドキと心臓の音が聞こえそうなぐらい顔を真っ赤にしてロサリオとアメリアを交互に見ている。


 (サーラブは見た目が一番エロくて大人っぽいのに、一番純情なんだね。……あぁ、アメリアの方に向くのが一番怖い…… )


 「んふっ、わたくしの一番目も二番目もあなた様なんですねぇ…… うふふ。」


 (はいアウトォ!! これ多分高位貴族の女性に言われたら駄目なやつキターッ…… )


 「あぁ、その…… ありがとう、アメリア。」


 アメリアはそのまロサリオにしな垂れかかりながら、妖艶な笑みを浮かべながら上目遣いで色っぽく見つめていた。ロサリオは、この娘は本当に同い年なのかと困惑するが、引きつりながら笑みを浮かべて一先ず礼を言うのであった。
 マルティーナはロサリオを睨めつけているが、心配から安堵した自分の気を落ち着けるように、支えている手は背中から離さずにさすっている。フリーンもずっと回復魔法を掛け続けた疲れからか、脱力するようにベッドの端へ腰を下ろした。
 先程のアメリアとロサリオの口づけを目撃してから、サーラブは未だに顔を赤くしているが、先の戦闘でロサリオの歴史に残るような勇姿が目に焼き付いて網膜から離れない。興奮冷めやらぬ状態で自らの主人を見つめている。


 アルラオネは一同のじゃれあいを眺めながら、ようやくこの大惨事とも言える事態が終息したのを実感することが出来た。


 「ほれお前ら、じゃれあうのもいい加減にせんか…… ふぅ、伯爵もおるんじゃぞ。それに、小僧の名前じゃ…… アメリア孃にフリーンも、お主ら何て呼んでおったか気づいとるんか? 」


 アルラオネに注意されて、二人はようやく誰の名を口走ってしまったのかを思い出すのであった。


 「あっ!? それは…… 」


 「しまっ…… すいません。」


 「まぁ仕方があるまい…… ナーダ伯爵、この小僧の件も含めてヘルツォーク公爵直々に会談が設けられるじゃろ…… これを使ってな。」


 自身のイヤリングを弾きながらナーダ伯爵に向かって、内密であると視線に意味を込めながら言い、ロサリオにも告げる。


 「お主が回復出来たのはナーダ伯爵がエリクサーを提供してくれたからじゃ、礼ぐらい言ってもバチは当たらんぞ。」


 自分の身に起こった状況は知りたかったが、まさかエリクサーのお陰だとは気づかずに、慌てて礼を述べようとしたが、ナーダ伯爵に手で征されてしまった。


 「礼を述べるのはこちらのほうですよ、此度はナーダの未曾有の危機を救うのに、多大なご尽力を頂き感謝いたします。それに比べればエリクサーの1本ぐらい、対したことありませんよ殿下。」


 名前と示した軍略と武力から察しているナーダ伯爵は、他国の上位貴族に接する態度でロサリオに謝辞を送るのであった。



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