魔王に堕ちて討伐されたけど、何とか生きてます。

ノベルバユーザー255848

第44話 悔恨との再会

 D以下の魔物達に対する戦線はヴァルター達有利に推し進められている。
 アメリアが発動させた広範囲持続回復魔法の恩恵もあり、徐々に魔物達を削り押し込めて行けているが、兵達にも犠牲や損害は出ている。
 身体の一部が欠損してしまえば、血止め程度の回復はかかるが、欠損は治らない。戦闘では使い物にならなくなるので、戦線からの離脱を余儀なくされるし、致命傷を負い死亡するものも散見される。


 D以下の魔物達も既に500程度迄に減っている。対するナーダ守備隊及び冒険者達も600人程が欠損、死亡等で戦線より離脱している。それでも残り500対1600と当初の比率が1対2であった所から1対3に変化するのが、数の差の強みを十分発揮しているといえる。損耗数はほぼ同じでも損耗率にこれほどの差がでるのが、数は力であると云われる所以である。
 ただし、これを仕掛けたアメリアや補助魔法で戦線を押し上げているフリーンは、負傷そして死亡した人達に対して酷く心を痛めている。十代前半の少女達には、それを気にするなと言われても無理な話であろう。兵達に死を強要しているのではないかという強迫観念に囚われつつあるのも致し方ないと言える。
 ヴァルターは十代前半の少女達の戦闘参加に心痛を覚えたが、今は気にしても仕方がなく、目の前の状況に専念する。


 「サブナク、やはりオリビア側が崩れかかってきている。兵200を率いて体制を立て直しにかかってくれ。その分そろそろ私も前に出て切り開く。」


 「了解しました。元々、練度や年齢などに考慮して壁内に残してきた兵達ですからね。オリビア殿が奮闘してますが、被害が目立ってきましたか…… 」


 年齢も若かったり、年老いていたりする比較的レベルの低い兵達を城壁に配置していたので、必然的にそれらを率いてきたオリビアの兵はこの戦場の中で一番脆い箇所といえる。アメリアのおかげで何とかまだ厚みを保って包囲できているが、300強の損害がここからでている。オリビア自身の獅子奮迅の働きもそろそろ限界に来る頃合いであった。


 「いいか、君たちはまず防御に専念して突破を阻止することだけを考えるんだ! 無理に突っ込む必要はない!! 少しずつ傷を与えていけばそのうち向こうは倒れていく、ヴァルター将軍が援軍をまわして来るまでこのままの状態を維持しろ!! 」


 オリビアは更に剣を握る力を込めて、魔物達の前で夜叉も斯くやというような形相を見せている。ヴァルターも自軍側が手薄になる分自身が前に突出し、その圧倒的レベル差で魔物達を葬り始めるのであった。












 冒険者たちはC以上の高ランクパーティーが突撃し魔物達を削り出している中、討ち漏らした少数をDランクパーティ達が止めを刺して回っている。魔物達との戦いに慣れているのもあり、こちらは損害が驚くほど少ない。全体数で150名強と少数ではあるが、高ランクパーティの強さが際立つ。前衛後衛との連携もパーティだからこその緻密さも合わさって、D以下の魔物達など苦戦することもなく倒していっている。


 「そろそろ1時間立つぞ!! あの白髪の頭のイカれた奴はどうなってる!? 」


 Aランク冒険者パーティーである氷炎の牙のリーダーのヴォルガが、ゴブリンロードを切り伏せながら誰ともなく辺りに怒鳴り散らす。


 「目の前に集中しなさい!? 」


 ローゼンベルクの薔薇のリーダー、サティアも自身の剣に雷の魔法を纏わせて、ホブゴブリンにオークと斬り倒しながらヴォルガに怒鳴り返す。


 「こんな雑魚共なんざぁ、目ぇ瞑っててもぶち殺してやらぁ!! うおぉっ!? まだ生きてやがるぞあの野郎! 」


 Aランク故の余裕と隙のなさを伺わせながら、Cランクの魔物達の方へ視線を向けると、砂埃や血霧で確認しづらいが、確かに白髪の人物がまだ戦っているのが見えるのであった。












 ―― また一人で無理をするんですか? 殿下はもう少し私を頼ってくださいよ ――


 ロサリオは魔物達で屍山血河を築き上げていた。 幻聴が先程から聞こえてくる。ただそれに耳を傾ける余裕もなく、魔物達の死体から流れる夥しい血が、6月の温かい気温で少量だが蒸発しだしている。この場からはヴァルター達の辺りが、少し揺らいで見えるようになってきている。
 200体以上既に倒しているが、まだ戦闘は終わらない。限界を超えている疲労から、魔物達の攻撃が被弾する回数も増えてきてしまった。


 「アメリアの魔法はまだ発動しているのに…… はぁ、ぐぅ…… 回復が…… 遅い!? 戦場で何度も見たことがあるけど、回復魔法を受け付ける体力すらもう無くなってきているのか…… はぁ、はぁ…… 」


 腕や足にも力が入らず、もう既に本能だけで魔物達を葬っていっている。ロサリオは気づいていないが、この場に飛び出して戦闘を開始してから、1時間半は経過している。Cランクの魔物達は100体を既に下回り、残り60体程にまで減ってきている。


 (あの時もこんな感じだったなぁ…… まだ中盤で上位戦力50,000を残してこれからって時だったなぁ…… バレッタさんに庇われて、エルザバトで刺し貫いてしまった時か…… )


 意識が朦朧としながらエルザバトを振り回す。雑になってしまった剣線は目の前のオークロードに掠るに留まり、お互いに接近してしまったため反撃のタックルを正面から身体で受けてしまい吹き飛ばされてしまった。


 「バレッタ…… ごめん、君を巻き込んで…… 」


 その時、賢者の石が赤黒く輝き、エルザバトから発している、人々の怨念を蟲毒でさらに黒濃くしたような魔力が、引き寄せられ悍ましく混成された時、誰の感情かはわからないが、懐かしさと悔恨の雰囲気を伴って人型の何かが生まれいずるのであった。


 「あの時も言ったじゃないですか…… 一人で無茶をしないで下さいって…… 私は孤児出身でしたけど、あなたが8歳の頃から部隊で共に過ごしてきたんですよ…… ロサリオ殿下。」


 「バレッタさん…… 君なのか……? 」


 魔物達の血霧と砂埃で視界が揺らぐ中、亡念を体現したかのような人物が、懐古的な笑みを浮かべてロサリオを見つめるのであった。

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