魔王に堕ちて討伐されたけど、何とか生きてます。

ノベルバユーザー255848

第41話 アメリアの女としての意地

 魔法の一斉掃射にて魔物の前列を崩して遅滞させた後、バリスタ及び弓矢が魔物たちへ飛び交っている。そこにヴァルター達が側面に突撃し切り崩していく。冒険者たちはナーダ伯爵指揮下の元、遊撃部隊として突撃しては離脱し、また突撃を繰り返し、ランクが低い魔物たちを削っていっている。
 魔法師隊は防御魔法へと移行し、城壁及び南門を耐物理防御にて覆うことに専念しだしていた。


 アメリアはある支援魔法を行おうと魔力を練り、詠唱準備に掛かっている。


 (まず、水属性の霧を発生させるミストの魔法を薄く薄く、戦場を覆うように展開、戦闘の邪魔にならないように認識できないぐらいに薄く…… 魔物たちに反応しないように光魔法で薄い霧に耐闇属性の防御魔法を重ね掛け…… そして戦場を薄く覆う水分を媒介に回復魔法を掛け続ければ…… さすがに万の軍勢を包み込むような広域は、私にはまだできない…… けど、この戦場の範囲くらいであるならば!! )


 一つ一つは体系化された魔法である。戦場を攪乱させる若しくは逃走用に使える霧を発生させるミスト。水属性の初級回復ヒール。そして、魔物は全て闇属性を持っているので、反発させて耐防御とする光魔法リフレクションを簡素化したタイプ、魔物にヒールが効かないようにするだけでよい。


 アルラオネは光属性を持っておらず、火、雷、氷、風と攻撃に特化している。得意とする魔法防御は無属性で己の魔力を運用して展開するので、実のところ誰もが使用できる。今まではそれらも個々人の才覚によっていたところを詠唱化及び体系化したのがアルラオネである。
 魔力運用に関しては大陸に並ぶものがいないので、アメリアから流れる魔力を見守っている。


 (こんな発想は今までなかったんじゃが…… たしかにランサローテの姫巫女は広域に渡って補助魔法を掛けることが出来ると聞いたことがあるが…… しかし、補助魔法と回復魔法では難易度が違う…… ティファニアの月とまで呼ばれ見目麗しく、確かに才はあったが…… ここで一気に化けるか!! )


 「行きます!! ―わたしは大水の声、全能者の声のような翼の声を聞いた、その声の響きは大軍の声のようで、祝福の翼で迷えるわたしたちを包み込む― 」


 『フォーツェゾン・ゲビート・ウィダヘアシュトレン』


 アメリアが放ったオリジナル魔法、広範囲持続回復魔法が無事に発動し、南門前から戦場全体を包み込むように魔力が覆っているのがアルラオネ達に確認できた。その場にいる魔法師たちも驚愕してアメリアを覗き見ている。ただのお飾りの御姫様ではないのだと。
 アメリアは、アリア皇女に女としてなのか支援魔法師としてなのかわからないが、ただ負けたくない一心でオリジナル魔法を完成させた。


 「す、すごぃ…… 」


 「ヴァルターとナーダ伯爵に伝えろ!! この戦場では絶え間なくヒールが掛けられるとな!! まさかここまでの代物を見せられるとは…… いくら魔力運用はレベルとは関係ないとは言うが、驚異的な才覚じゃ!! 敬意の念を抱いてやるわい!! アメリアよ!! 」


 「はぁ…… はぁ…… ありがとう…… ございます。」


 アメリアは息も絶え絶えになりながら、発動した魔法の維持に取り掛かっている。この魔法が維持できているうちにどれだけ魔物を倒すことができるかが、この戦闘の勝敗を握っていると言える状況になった。


 フリーンはアメリアから放たれた魔法の効力を瞬時に感じ取り驚愕する。


 (こんな回復魔法は聞いたことない…… オートヒールは神官個人が一人に対して掛けるのが精一杯なのに…… ただし、回復すると言っても恐怖は薄れない…… じゃあ、それを私が…… )


 「ヴァルター様、アメリア様が戦場を覆うように回復魔法を掛けました。ですので、私が皆さまが恐れずに戦闘できるように範囲用補助魔法を掛けます。」


 「なんと!? そのような回復魔法があるのか? 」


 「ええ!! ですので今よりも前掛かりで大丈夫かと…… ―ホーリーブレイブ― 」


 フリーンは、恐怖心を薄れさせ戦意を高揚させる補助魔法を発動させた。ただし、この魔法は10人程度に掛けるのが精々であるので、回復はアメリアの魔法に任せたまま、この魔法を連続で発動するのに注力するのであった。
 フリーンからの補助魔法とアメリアの回復魔法により、ヴァルター旗下90人の護衛部隊と1,000人の守備隊の突破力が増し、魔物相手に離脱せずに継戦することができるようになった。ヴァルターは今のうちにCランクの魔物を少しでも減らしておきたかったが、中央と後方に多数おり、そこまで中々辿り着けないでいた。仕方なく少しづつF~Dランクを倒していくことに専念する。


 冒険者たちは、あくまでリスクを最小限に一撃離脱方式を徹底している。ヴァルターは、リスクと成果のバランスの取り方の上手さに感心してしまう。ナーダ伯爵からはA、Bランクはここぞというときに投入すると聞いているので、今戦っているのは、D、Cランクのパーティーだろうと思われる。


 ヴァルターは、周囲が倒されても構わずに、赤い発光を瞳に宿しながら突き進んでくる魔物たちに薄ら寒いものを感じながら、それでも自分たちにとって今の状況は優位に進んでいるので、このままの状況を維持することに専念するのであった。


 魔物もこの戦場を包み込む魔力の源が何処から発生しているかを、正気を失いながらも本能で感じ取ったのだろう。4~5メートルにもなる巨体のオーガが周囲にいたオークやゴブリンを掴み取り、そのままアメリア達がいる南門上部の歩廊に投げつけてくるという驚異的な手段を取ってきた。


 「きゃぁ!? 」


 「うわっ!? 」


 「あのでか物!? 魔物を投げてきおったわい!! 」


 上空から放物線を描いて勢いに任せて落下してくる魔物に兵士や魔法師隊は恐怖してしまう。通路や外壁に衝突した魔物たちの臓物や肉に骨が散乱していく。
 アメリアは魔法維持のためにその場を動くことが出来ず、何とかオリビアが斬り払って防いでいるのが現状である。
 魔法師隊も防御魔法維持のために兵士たちに何とか守られながら、ギリギリの範囲で堪えることが出来ている。
 そのうちに他のオーガも同じ手段を取ることとなり、ゴブリンたちの砲弾が倍加して襲ってくることになった。オリビアが獅子奮迅の働きを見せ、何とかアメリアやアルラオネを守っていた。


 「ゴブリンやソートゥースウルフならばまだしも…… オークはきついですね!? はぁ、はぁ、あいつらは重い!! ……しまった!? 」


 バキィィィィイン


 20体ぐらいオリビアで飛んでくる魔物を斬り伏せ、斬り飛ばしていたが、オークの重みに剣が耐えることが出来ずについに刀身の半ばから折れてしまった。まだ上空からオークやゴブリンが砲弾として飛んでくる。それらは明らかにアメリアへ命中する軌道をとっている。


 「ひぃ!? 」


 「くそっ……! 」


 アメリアも直撃コースだが、魔法維持のため動けずにいる。オリビアは何とか徒手空拳でアメリアにあたらないようにしようと身構えた。


 ふと、アメリアは既視感を覚えた。


 つい先日にも同じようなことがあったなと。


 あの時よりも私は頑張れているだろうかと、頑張ったと褒めてくれるだろうかと思いながら、黒と白の風が頬を撫でるのを感じるのだった。


 「頑張ったね! アメリア。待たせたみたいで…… 心配して気遣ってくれたみたいで、ごめん。」


 オークが4つに分かたれていく。
 ゴブリンが火系統中級魔法ファイヤーランスで燃やし尽くされていく。
 そのままファイヤーランスを6つ程、無詠唱で展開して魔物を投げつけてくるオーガへ牽制の意味合いを込めて放った。さしものオーガもダメージを受け城壁を睨みつけるが、逆にロサリオに睨みつけられ、怯えて投げつけるのを一時取りやめて、門へ向かって進攻するのだった。


 「ロサリオ様ぁ!! 」


 「また君に助けられたな。」


 「あんた…… 動いて大丈夫なの……? 」


 「小僧…… 一先ず助かったわい。」


 皆、思い思いの言葉を投げかけながら、ロサリオが来たことに心配と安堵の声を上げるのだった。

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