魔王に堕ちて討伐されたけど、何とか生きてます。

ノベルバユーザー255848

第40話 防城戦準備、そして開戦へ

 サーラブから一通りの内容を聞いた後、時計を確認すると今は5時を過ぎている。アルラオネがアメリアから聞いた情報によれば、間もなく魔物の大群がナーダに辿り着く頃合いである。
 ランサローテでも魔物行進モンスターパレードは数年に一度聞くが、大陸と数はそんなに変わらない。魔物の元々の強さに差異はあるが、数に変化はない。
 発生する原因としては、強い魔物に縄張りが荒らされたなどのあまり定かになってはいない。だからこそF~Eがほとんどで、Dが少し混ざっているくらいが精々である。
 ただし、アメリアから聞いたアルラオネが言うにはかなりの数でCランクの魔物まで混ざっているという。しかも総数は1,000を下らないとのこと。


 これはもう大陸史に残る大惨事になる。ランサローテでも聞いたことがない。ロサリオは、未だ鈍る頭と重く気怠さが取れない身体を起こそうとしてふらついてしまう。


 「ダメですよ!? そんな状態で身体を動かしては…… 」


 サーラブに優しく抱き留められて叱咤を受けてしまう。


 「何でだ? 今まではまだ体は動いていた…… 体力回復ポーションと魔力回復ポーションを使えば!? サーラブ早くしないと!! 」


 「ダメなんですよ!? アルラオネ様が言うには、1月以上もポーションだけでの不眠不休は、廃人になるか死んでもおかしくないと過去の魔術師たちの経験で結果が出ているそうです!! ご主人様のはただレベルで無理矢理身体と頭を動かしているだけだって…… そんな状態だと大病を患っている人間と変わらず、まともな動きは出来ないから休めって…… 」


 カーンカーンカーンカーンカーンカーン…… 


 その時、慌ただしく甲高い半鐘の音が辺りに鳴り響いた。15分ごとに鳴り響く教会の柔らかい時刻を告げる鐘の音ではなく、都市の南側の城壁塔から発している、文字通り警鐘を鳴らす音だ。
 ロサリオは全身を圧迫するような気配を南西方面より感じ取り、サーラブは狐人族の、獣人の鋭い特性で、やはり南西方面の気配を察するのだった。


 「ナーダ伯爵達は住人の避難をどうするんだろう? 聞いてる? 」


 「はい、北門、東門へ集めて状況によりそこから公都方面へ避難させるようです。そろそろ住人達も起きて活動しだすでしょうし、30分ぐらい前から、衛兵さんたちが御触れをだして回っています。」


 「事前に魔物たちの来襲が分かっていたのは大きいな…… どちらにせよ、僕たちも南門へ行くよ…… このまま休んでられるものでもないし、避難なんてもってのほかだ! 」


 サーラブは溜息を付きながら、自らが持っているポーチからポーションを二つ差しだした。自身も既に狩りや魔物と闘うための冒険者の格好をしている。


 「念のため、ナーダ伯爵家の方たちから体力回復と魔力回復のポーションを用意して頂きました。そのお身体の状態だと何処まで効力を発揮するかわかりませんが…… 」


 「ありがとう。気休めでも何でもいいよ!! この体の状態は寝不足だ…… 気合を入れれば何とか動く…… 」


 「アルラオネ様が言うにはそう単純なことじゃないそうですよ…… 慢性的な倦怠感に判断力も鈍っているだろうとのことです。額に触れてみましたが、疲れからか結構な熱も出ているじゃないですか…… それでも戦うんですか? 」


 何を言っても無駄だろうが、心配が募りアルラオネの言葉通りに忠告をするしかできなかった。


 「サーラブは逃げていいよ。ちょっと力業になるけどその奴隷の首輪も外そうか…… 」


 「いいえ私も行きますよ。重病人を一人で向かわせるわけないじゃないですか!! 私はあなたの奴隷でもあるんです。戦闘の邪魔はしませんから御供はしますよ。私にも何かできるはずですから! 」


 ロサリオがどのようにしてでも、現場に向かうことを感じていたんだろう。準備は既に整っていると言わんばかりの表情で宣言するのであった。












 ――城塞都市ナーダ南門歩廊――


 「報告します。魔物総数約1,500と判明。Cランクの魔物はおよそ300とのこと。」


 都市外に出した斥候と南門側塔からの監視、両方での情報からの判断なのでほぼ合っているであろう。苦い表情をしながらアルラオネは唸るように言った。


 「むうぅ、想定以上に多い…… 冒険者どもはどのくらい集まりそうじゃ?」


 「おそらく、外へ打って出れるレベルのものは、Dランク以上で30パーティですな。その中にはAランクパーティ2組、Bランクパーティ3組も含まれている。」


 「さすが辺境都市、中々に数は揃っているな…… こちらはお預かりしている守備隊2,000の招集は終わり、800を南門及び200を西門側歩廊に配置し、防城態勢は何とか形にはなっとる。後は、1,000と我々が連れてきた90で打って出られる。問題は、Cランク300だな…… 」


 短い間であるが、取り敢えずの迎撃態勢は取れたといえる。バリスタや弓、魔法で城壁からどれだけ削ることができるか、城壁が破壊されたり、門が破壊されたら致命的である。取り付かせないようにするのが第一目標で、その次は、取り付いた魔物をいかに素早く排除するかが優先順位として高くなる。


 ナーダ伯爵は冒険者をまとめ指揮を城外にて執る。これは緊急クエストや都市防衛などで、ナーダ伯爵の武勇や冒険者ギルドと領主という立場で、少なくない連携を冒険者たちは知っているので、名前が通っていてもよそから来た者よりも、荒くれ者たちは納得しやすいからである。
 ヘルナーゼ自身も現場に来ており、まだランクの低い冒険者たちで後方支援を行う。


 ヴァルターは守備隊1,000と護衛部隊90名で城外にて魔物をどれだけ討滅させられるかが今回の要と言っていい。守備隊は皆Dランクの範囲内であるが、護衛部隊は全員Cランクを超えている。サブナク達もレッサーデビルに情けない姿を晒したが、レベル的にはCランク上位である。隊列をしっかりと組んだ騎士としての戦いであれば十分な強さを発揮できる。
 フリーンはこの部隊に配備されている。他の神官4名は負傷者などの手当てのため場内に配置されている。見習いが多いのと先日の戦いの疲れが抜けていないための配慮である。


 アルラオネは、マルティーナを含めた専任魔法師7名と冒険者たちから寄せ集めた10名で南門歩廊から砲台としての指揮と、全体指揮を執ることになった。アルラオネの魔力が枯渇して戦線投入できないのと、Sランクとしてのヴァルター個人の武勇も必要となっているためである。
 アメリアもここに配属され全体を俯瞰できるようになっている。オリビアは一人南門歩廊に残り、何かあった時のための護衛として詰めている。


 「では、我々は西門から魔物たちの側面を付くために出陣しておこう。」


 「タイミングは、弓矢と魔法が一斉に魔物たちの戦闘を攻撃して進攻が遅滞したときじゃ。一撃離脱じゃぞ! 取り囲まれたらすぐに押しつぶされるからの!! Cランク300の位置を常に確認するように動くんじゃ!! A、Bパーティ及びヴァルター以外は絶対に対峙してはならんぞ!! 」


 ヴァルター及びナーダ伯爵は西門方面へ駆けていった。魔物たちも目視できる距離に来ており、20分もすれば城門目前というところだ。


 「アメリア嬢よ…… 主からの策は聞いておるが可能なのかの? 」


 「えぇ…… ロサリオ様の討伐戦でアリア皇女が使用した全体広域補助魔法が参考になりました。万を包むような補助魔法は出来ませんが、理論的には水と光の合わせ技で可能だと思います。」


「これが成功したらもうオリジナルじゃな…… ヴァルター達と冒険者達には物凄い手助けとなるであろう。」


 「魔物たち距離1,000!!」


 その時、見張りから魔物たちの距離が伝えられる。もう悠長にしていられる時間は過ぎてしまった。ヴァルター達も西門外で布陣し、進軍を開始するころであろう。


 「よいか! 我々は魔物たちを引き付けた後に魔法で一斉攻撃を開始する。その後は弓矢で投石で魔物たちを近づけさせるな…… 状況によっては南門から打って出る可能性もある。魔法師は第一波の攻撃後は対物理防御魔法に集中せい!! 門と城壁を守り切るぞ!! 」


 「はい! 」 


 「了解しました!! 」


 拡声の魔道具を使い、アメリアが都市全体に響くように宣言するのであった。


 「全兵及び冒険者の皆様方、今回の魔物行進モンスターパレードは歴史上類を見ません。まさに魔物大狂乱パンデモニウムといえるでしょう。
 しかし、我々はティファニアがおける盾と矛。この歴史に残る大惨事に見事立ち向かい、討ち果たすことをアメリア・ローゼンベルク・ヘルツォークの名において宣言します。
 民や人々の生活を脅かすものに対して退くことなど笑止千万!! イグレシアスの神々よ栄光あれ!! 極大の勇気を以て悪鬼羅刹を滅する光輝の剣とせよ!! 」


 「今じゃ!! 魔法師隊、砲台の名に恥じぬよう遠慮なくぶっ放せぇぇえええええ」


 「ファイヤーランス! 」


 「サンダーランス!! 」


 「アイスランス!!! 」


 マルティーナ含む魔法師総勢17名による、中級魔法一斉発射にて開戦の狼煙が上がるのであった。

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