魔王に堕ちて討伐されたけど、何とか生きてます。

ノベルバユーザー255848

第39話 アメリアの決意

 アンナは、ナーダ伯爵を緊急要件ということで起こして貰い、アルラオネの部屋に向かうよう伯爵邸勤務のメイドたちに告げ、目と鼻の先にあるヴァルター達護衛部隊が宿泊している宿へ急行した。
 4時ともなれば、日の出が始まっていることもあり、薄ら明るくなってきている。採取や遠出など冒険者たちも活動を開始するものも出てくる。
 アンナも彼らと通り過ぎ、早く活動を開始しているかもしくは戻ってくる冒険者たちがその内に、アメリアが視た内容が正しければ道中確認し、ギルドへ報告し把握するのではと思いながら宿へ駆けこんでいった。
 アンナが宿に駆け込むと、早番なのか起きてまだ時間が経っていないと見える若い騎士がいたので、アメリアからの勅命という緊急性が高い旨を伝え、ヴァルターを呼びに行ってもらう手筈を取るのであった。


 アメリアが、アルラオネの部屋へ行き、たどたどしくではあるが、自らが視た予知夢ともいえる映像の内容を伝え終えたところに、簡易的に身支度を整えたナーダ伯爵がノックの後に入ってきた。


 「どのような状況なのでしょうか……? メイドからはアメリア様から緊急だということを聞きましたが。」


 「うむ…… 今しがたアメリア嬢から、この都市へ魔物の大群が押し寄せるのが視えた…… との報告を受けたのじゃ。」


 端的な報告をするアルラオネにナーダ伯爵は戸惑いを見せてしまう。


 「ん…… 視えた、とは? 」


 至極尤もであろう、ナーダ伯爵はアルラオネの言っている意味が分かってはいない。ただし、魔物の大群というのはただ事ではないので、質問としばし様子を見ようと身構えた。


 「精度について少し確認するわい…… アメリア嬢、小僧を見たときはどうじゃった? 軽くでいいから儂だけに聞こえるように見た内容を話してはくれんか? 」


 「わかりました。………… 」


 アルラオネだけに聞こえるように耳元に寄り、手で口元と耳を覆い隠すようにして自分が視たロサリオの軌跡を告げるのであった。それをアルラオネは確認した後、深刻な表情をしながらアメリアに頷いた。その時、アンナから呼ばれたヴァルターが帯剣だけして駆け込んできた。


 「アメリア様から緊急だと聞き駆け付けてきました…… ノックをしなかった無礼な件、御許し頂きたく…… 」


 「いや、当面の責任者が揃ってくれたことに感謝する。ヴァルターも息を整えながらでいいから聞いてくれ。」


 アルラオネはアメリアをに視線を向け、不安ながらも力強く頷くのを確認し、ナーダ伯爵及びヴァルターへ内容を告げるのだった。


 「この辺境都市ナーダに魔物の大群が向かっておる。」


 「大群というとどの程度なのでしょう? 数年に一度発生する魔物行進モンスターパレードですかな? 」


 「それは一大事ではあるが、どのようにして分かったのですか? 冒険者ギルドからですかね? 早いものはそろそろ都市に戻ってくるか、若しくはここの外へ活動しに行くか? 」


 二人はまだ事の緊急性を把握していない。それも仕方がないだろう。魔物の大群というと100~150前後のF~Dランクの魔物であり、そのDランクもほとんどいない。
 通常は発見次第、冒険者ギルドより緊急クエストで都市の守備隊と共に討伐に向かうのが流れである。


 「二人とも、事はそう簡単な話じゃなさそうじゃ…… 通常の魔物行進とはわけが違いそうじゃ…… この情報の信用性はこの儂が保証する。視た場所はたしか…… 」


 「私達が魔族に襲われた付近の森からです! 街道をこのナーダに進攻中…… 暗かったので、まだ着いてないところを考えると深夜だと思います。」


 「正直に言おう、今回の魔物の数じゃが…… 1,000は下らんと思うておる。ナーダ伯爵はギルドと連携して冒険者を掻き集めて欲しいのと、ヴァルターにナーダ守備隊の指揮権を委譲してやって欲しいのじゃ! 」


 「なんと!? 魔物行進モンスターパレードで1,000なんて数は聞いたことがない!? 」


 ナーダ伯爵は驚愕してアルラオネが冗談を飛ばしているのではと覗き見るが、アルラオネ自身の緊張感に溢れて冷や汗を搔いている表情を確認し、ゴクリと生唾を呑み込み本気で言っているのだと認識することになった。
 ヴァルターは疑いもあったろうが、まず、都市守備隊約2,000と今回の護衛部隊100、後は冒険者の数が如何程かにもよるが、防衛に意識を固めていくのであった。


 「おそらくじゃが、1時間前後でこの都市に到着するであろう…… 国境砦からの街道じゃから、南門か都市の南西側に取り付くじゃろう! 時間はないぞ!! ナーダ伯爵にヴァルター、準備は拙速に頼む…… 儂は魔族との戦闘で元の姿に戻ったせいで、その辺の見習い魔法師レベルの力しか今はない…… 防衛体制を整えてくれ。」


 「ではナーダ伯爵、都市守備隊指揮権をお預かりする。貴公もギルドへの手筈は宜しく頼む。」


 「守備隊の連中も、かのSランクであるヴァルター近衛騎士団長に指揮してもらえるとあれば喜ぶでしょう! 私も冒険者ギルドへの緊急クエスト発注と守備隊と冒険者の連携を図るために、後程現場で指揮を執りに行く。ではまた! 」


 ナーダ伯爵も辺境都市の領主として現場指揮を執ることもあるし、若い時は軍に所属していたこともあり、時は非常時で拙速を尊ぶということも心得ている。疑問は多々あるが、兎にも角にも冒険者ギルドへ自身で向かうのであった。
 ヴァルターも急いで護衛部隊を準備させるために宿へ戻るのであった。


 「儂もマルティーナやフリーンたちを起こしたら南門へ向かう。魔法師隊や冒険者の中の魔法師を上手く運用せねば、今回のは相当に都市に被害をもたらすじゃろう…… お主は早々にナーダから避難するのが賢明じゃ。」


 まだ魔物が接敵していない状況であるので、東門等を使用して逃げ延びることも可能である。アメリアの立場を考えるとそれが通常であり、何ら可笑しいことではないのでアルラオネは提案した。


 「いいえ、アルラオネ様、私も陣頭に立ちます。試してみたいこともありますし、それを行わないととてもではありませんが、防ぎきれるとは思いません。」


 (ロサリオ様の魔王討伐での戦いで見た、アリア皇女の広域全体補助魔法…… 私にはまだ光属性をそこまで多様には使えないけど、ヒントにはなった。伊達にアルラオネ様に師事は受けていない。それに、この程度で自分だけ逃げていては、あの人の傍になど、居る資格は無くなる!! )


 覚悟を決めた表情でアルラオネを見返して、ロサリオをどうするか意見を聞くのであった。


 「ロサリオ様は、この件に関してどうしましょうか? 」


 今回の件で、どのように扱っていいのか自信が持てないアメリアであったが、アルラオネの意見、推論に絶句するのであった。


 「サーラブにでも言って、可能な限り起こさないように休ませておけ…… まだ魔法師が魔術師と呼ばれていた時にも稀にいたんじゃが、ポーション類だけで寝ずに研究を続ける馬鹿どもがな…… 大抵は3週間ぐらいでぶっ倒れるかなんかするんじゃが、中には1月近く続ける奴もいての…… 最後は廃人になるか脳の血管がブチ切れて死人もでるようになった…… それからはそんなことを行う馬鹿もいなくなったんじゃが…… あの小僧はそれを戦闘で続けおった…… 想像を絶する高レベルで何とか正気も身体も持っておるが、もう今は緊張が途切れておる。
 例え起こしても病気を患っておるようなもんじゃ…… おそらくまともな力は出せんわい…… 今までもそうじゃったろう。イメージとしては肺病を患いながら戦うようなもんじゃわい…… 」


 「!?…… そ、そこまで状態が悪かったのですか…… 」


 「今のことをサーラブに言って小僧に張り付かせておけ! 個人的にもしばらく戦場から遠ざけて静養させてやりたいわい…… 」


 「そうですね…… 起こしても避難はしてくれないでしょうから、寝れるだけ寝ておいて頂きます。私たちはその間出来るだけ魔物を倒しましょう!! 」


 力強く宣言するアメリアを目を細めながら、若い人間の成長する瞬間の何と眩しいことかと艶羨を含む眼差しで頷き、行動を起こすのであった。

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