魔王に堕ちて討伐されたけど、何とか生きてます。

ノベルバユーザー255848

第38話 第2章 プロローグ

 夢を見ていた…… 


 最初のころは、いつも笑顔を見せて楽しそうに笑ってくれていた。


 それが、会うたびに段々と笑顔が曇っていくようになった…… 


 沈痛な面持ちをするようになった…… 


 涙を流すようになっていった…… 


 悔しさを滲ませるような表情になっていった…… 


 どうして? 君は何も悪くないんだ…… これは僕たちの業因だから…… 君の未来は明るいものだけのはず…… 


 最後は、諦観と憐憫を混ぜ合わせた表情で僕を見ていた…… 


 次にもし会えるのであれば…… 幼いころにいつも見せてくれていた、あたり一面に向日葵が咲いたような笑顔を、もう一度君は僕に向けてくれるのだろうか…… 












 「 ……んっ…… う~ん…… 」


 部屋外の喧騒の音で、寝苦しく感じロサリオは目を覚ました。非常に慌ただしく、人が駆ける音や騒ぎ声が、扉越しに聞こえるのを夢現の状態でぼんやりと感じている。


 「目が覚めましたか!? ご主人様!! 」


 「頭が重い…… 体が怠い…… あれ!? ここは…… 君は…… サーラブか? 」


 「あの後、ご主人様はそのまま寝てしまったんですよ。せっかくだからそのままお休み頂こうと…… 」


 ロサリオは、バルトロメの詳細と自分の内面を含めた推移を語り終えた後、マルティーナに抱きしめられひとしきり泣いた後にそのまま眠ってしまった。皆の計らいでそのままベッドに寝かさせられて今に至っている。


 「思い出したよ…… 恥ずかしい所を見せちゃってごめん…… 異様に身体が重いし、怠い…… 」


 「当り前じゃないですか!? 話を聞くにご主人様は全然休んでないでしょう!! 一月以上も…… ぐすっ…… 」


 「そうだね…… 君も僕が話してたのを聞いてたもんね…… それで、まだ朝というには早い時間だけど、なんで君はここに? それにやたら騒がしいけど…… 」


 壁の時計を見ると5時を指しており、ロサリオが眠りに落ちてから4時間以上が経過していた。状況的に一昼夜寝続けたわけではないだろうと、未だ鈍る頭を働かせながら、サーラブに質問をした。
 そして、ロサリオが休んだ後のことを話すのであった。












 ロサリオがマルティーナと共に泣き出してから10分くらいが経ったころ、その声も途絶え辺りに静けさが戻ってきた。フリーンが二人を確認すると、


 「眠ってますね…… 二人とも。」


 「仕方ないじゃろ…… こやつはまともな休息を取っておらん…… もう恐らく何年もなぁ…… 先ずは、ロサリオ殿をそこのベッドに休ませて、我々も今日はもう遅いし休むとするかの。ほれ、マルティーナ、お主は起きんかい…… 」




 「う~ん…… はっ!? あれ? 」


 アルラオネはロサリオを気遣い、マルティーナを軽く小突き起こした。感極まって軽く落ちていたマルティーナはすぐに目を覚まし、先ほどの自分の行動を思い出し、顔を真っ赤に染めて羞恥で縮こまってしまった。
 結局、サーラブはフリーンの部屋で休むことになり、解散するのであった。


 アルラオネは自室に戻り、耳に付けていた精緻な細工を施されたイヤリングを外して、それに向けて言葉を発した。


 「夜分にすまんかったが、ちゃんと聞こえておったかの? 」


 この道具、今となってはロストテクノロジーである通信用の魔道具である。ギルド支部が抱えている、映像と音声を双方向に飛ばすための、水晶球を使用した長距離伝達の魔道具もロストテクノロジーであり、現存するものしかない。
 製作者は1,000年前に召喚された勇者の一人であり、錬金術師として多くの魔道具を製作した人物である。戦闘向きの能力でなかったため、直接的な戦闘に参加せず戦後も生き残り、ティファニア王国だけではなく大陸全体に寄与した人物として有名である。
 アルラオネが持っているイヤリング型の音声通信魔道具は、各国の主要人物や重要な部署にしかなく恐ろしく高価であり、市場にも滅多に出回らないものである。


 少し間をおいてアルラオネの通信相手より返答がもたらされた。


 「……もちろん聞いていたよ。正直驚きで言葉も出ない…… 場合によっては私よりも格上の人物となる予定の少年であったということか…… 加えてこの真相か、ああ、私もギルドから報告は受けているから知っているよ。正体云々は抜きにしても、彼が話していた立場に関する状況は、取ろうと思えば裏が取れる…… 嘘ではあるまいて…… 」


 「して? 主はどうするつもりじゃ? 心根は善良な奴じゃし、何より主の娘の命の恩人じゃ。それだけではすまんほどの大恩を受けたと思うがの…… 」


 「もちろんだ、どのような手段を取っても彼は抱え込みたい。昨今の状況もそうだし、王家も数年で勇者召喚を行う。彼ほどの人物を手放す理由は全くと言っていいほど存在しないな…… ただし、真相を知る者は少ないほうがいいだろう。彼の経歴は早急にこちらで無理がないように作り上げる、というよりも彼に合うような適当な人物を見繕っておくので、それで通してもらうようにしてくれ。」


 「わかった。主のほうで小僧の経歴が作られるのであればこちらとしても、あやつとしても助かるじゃろう。では、無理を言うが明日にでも。」


 「何、こちらとしても彼の存在は僥倖だ…… それにかの大魔法師の頼みだ、自分の立場も忘れるさ。」


 「ようゆうわい、あの鼻垂れ坊主が立派になったことだの! 恩にきてやるわい。」


 「あなたに掛かれば、ティファニア王ですら形無しになりますからなぁ。」


 「あの坊主は儂をお嫁さんにすると10歳くらいまで豪語しとったからの、笑いが止まらんかったわい。ではの…… 。」


 「ええ、また明日にでも連絡します。」














 「はぁっ…… はぁっ…… うぅ…… はっ!?」


 ヘルゼアの眼でロサリオの過去にまつわる出来事を視て、そのまま気を失ったアメリアであるが、夢というには生々しい映像を視て呻きながら目を覚ました。


 「ん…… 姫様っ!? ……眼が!! 」


 メイドであるアンナは、アメリアを運び込んだ後、様子に異変があった時のために同室にて休んでいた。アメリアの異変に気付き、すぐさま浅い眠りから目覚め、確認するとアメリアの眼に魔方陣が浮かんでいることに気が付いた。


 「この集団は…… 眼が赤く…… 向かっている、どこ…… へ…… 」


 「姫様!? 大丈夫ですか!! 姫様!!! 」


 アンナは、正気に戻すようにアメリアの方を揺さぶりながら呼びかけた。すると――


 「……はっ…… アンナ! アルラオネ様とヴァルターを呼びなさい!! 」


 「えっ!? ……姫様? 」


 「早く!! 魔物の大群がここへ、ナーダへ押し寄せてきます!! 」


 アンナが呆気にとられる中、風雲急を告げる魔物の大進攻を予言するのであった。

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