魔王に堕ちて討伐されたけど、何とか生きてます。

ノベルバユーザー255848

第32話 あなたを知りたい

 その後、就寝する部屋にて少し問題が起こった。


 夕食後、歓談も終わり、ロサリオがナーダ伯爵から湯を頂き、疲れと汚れを落として割り当てられた部屋に戻ると、そこにはサーラブがいるのであった。


 「えっ!? あれっ? 何でサーラブが……? 」


 寝巻に着替えたサーラブに見惚れながら、疑問が浮かび半ば混乱しながらサーラブへ問いかけると――


 「実はアルラオネ様から、ナーダ伯爵に私がご主人様の奴隷である旨を伝えたところ、それならば一緒の部屋でということになり、アルラオネ様もまあいいか、ということになったみたいですぅ…… 」


 サーラブも自身ではどうしようも出来ない状況であり、言われるがままの状態になってしまっていた。ベッドも一つしかなくそこにサーラブは煽情的な寝間着姿で腰かけている。
 流石にこのままでは不味かろうとロサリオが考えていると――


 「アンディー入るわよ! サーラブの件もあるし、姫様も話があるって…… 」


 「えっ…… 」


 サーラブは煽情的な寝間着姿でベッドに腰かけて絶句し、その前に湯上りのロサリオが立って固まっている。そこに、マルティーナとアメリア、フリーン、オリビアが入ってきた。


 「ふむ、夜に男子の部屋を訪れるのは感心しないと姫様には言ったんだが…… やはりお邪魔だったかな? 」


 オリビアがこのシチュエーションを誤解し言葉を発してしまう。


 「こ、こぉ~んなことになってるんじゃないかと思ったわけよっ!! 」


 「あらあらこれは…… 」


 「い、いや…… 何か、大きな誤解をしていらっしゃると…… 」


 ロサリオがビクつきながら何とか誤解を解こうと弁明を口にしようとすると――


 「アンディー様。 ……正座!! 」


 「はい…… 」


 初めて見るようなプラチナブロンドの美少女に当初は心躍らされたのだが、その微笑には謂い様も知れない恐怖を感じ凍り付く思いを毎回感じさせる。半ば条件反射のように素直にアメリアの言葉に従うのだった。
 魔王の傍に侍る絶世の美女とは、きっとこのような女性をいうのであろうかと益体もない妄想をするのであった。


 (なんだこの状況は…… )


 サーラブの件でも頭が痛いのに大挙として押し寄せてきた女性陣に困惑していた。明日にはアンドラス・ティアスの件でアメリアと話し合いの場が持たれるであろうと考えてはいたが、今日の夜に押しかけられるとは思っていなかった。
 ただし、ある意味主要なメンバーが揃っているのでここで話すのも今後のことを踏まえると都合が良かったとも考えていた。


 (睨まれながら正座をしているのでなければ…… )


 サーラブから事の成り行きを説明され、誤解自体は解けはしたが、まだ部屋をどうするかは決まっておらず、その件はアメリアのアンディーへの問いが終わってからにするということになった。
 そこで改めてアメリアから話を始めるのであった。


 「まぁ、アルラオネ様にも困ったものですが、取り敢えずは休む前に確認をしておきましょう。明日はゆっくりできますが、それでもナーダ伯爵、ギルド長とも会談がありますので時間が取れるかわかりません。他の皆さまは、帰路に就く準備等も始まりますしね。」


 「そうですね。正直疲れて休みたいのもありますので始めましょうか。内容は僕が誰であるか? ということでしょう…… 」


 ロサリオからこの夜の聞き取り調査の開始を告げる口火を切った。アメリア以外は小首を傾げながら反応に困った様子を見せているがオリビアはあまり気にした様子を見せていない。彼が強者であるということを以てあまり気にしていないのか、逆に魔族を倒した強者ということもあり、何を聞いても動じない心構えができているのかもしれない。


 「はい、アンドラス・ティアス卿は明るい茶髪に茶色い瞳だとランサローテ支部ティアス冒険者ギルドから報告がありました。恩人であるに対し無礼を承知で調査致しました。申し訳ございません。」


 「かまいませんよ。ティアス家の証も出さずに逆に詳細を語っていたら怪しいですしね…… 僕も後から気づきましたから…… 」


 自らの失敗を恥じ入るように苦笑しながらロサリオは言うのであった。


 「でも! その年であんな高価そうな装備や教養何て、高位の冒険者じゃなければ、やっぱり貴族でもないと…… 」


 マルティーナは最初に見せたアメリアに対する姿勢や態度で貴族だと思っていたので、なおさら察しがつかず、疑問を差し挟んでしまう。そこに――


 「おうおうやっとるの! 儂も邪魔するぞい!! 」


 アルラオネが入室してくるのであった。そして周囲を見渡し、正座しているロサリオを見てほくそ笑むのであった。


 「何じゃ何じゃ!? 吊し上げられとるのか! 大方そこの狐っ娘に手を出そうとして見つかったんじゃろ!! ワハハハッ!!! 色んな意味で先走ったの!!!! くくくっ。」


 「もうお前からは悪意しか感じねえぞ!? 糞幼女!! もうあんた知ってんだからいいだろ…… 」


 折角、打ち明けようと張りつめていたものが急に霧散していくのを感じ脱力してしまうのであった。マルティーナも自らの疑問がアルラオネの入室で立ち消えてしまい、眉を寄せながら場の推移を見守ることしかできなくなってしまう。


 「まぁ本人の口から聞きたいのもあるし、何ぞ証のようなものも持っとるんじゃろ!? 」


 「ええ、持ってますよ…… これですね。」


 そして、首から下げられていた禍津玉、大粒の賢者の石が嵌った首飾りを取り出しながら宣言するのであった。


 「私は、ロサリオ・サン・バルトロメ。バルトロメ公爵領を治めるフェメス公爵の弟です。」


 あまりの人物名に一同絶句するのであった。


 誰かの息を呑む音が響き渡る。部屋中を沈黙が満たす中、気丈にもアメリアが質問をして停滞する場を動かした。


 「あなた様がロサリオ公爵弟であるという証はその首飾りにあるのでしょうか? ずいぶん大きな賢者の石が取り付けられていますね…… しかもその色合いは一体…… 」


 「えぇ、こちらでは賢者の石とおっしゃるんでしたね。この石自体は、ティマンファヤ山にいる古代竜から1年ほど前に譲り受けたものです。この件は冒険者ギルドも知っていると思います。
 取り付けるための金属の台座裏にバルトロメの彫金師がバルトロメの紋章を掘ってあります。これには魔術細工がしてありまして、このように…… 」


 ロサリオは首飾りの裏面に彫ってある紋章に自身の指を剣で斬り血を一滴垂らした。すると紋章が光り輝き、そして宙に浮かび上がってきた。


 「これは…… 」


 「この魔術細工も特一級じゃぞ!! しかし、通常蒼い賢者の石がこうまで赤黒く変色しているとは…… 」


 「綺麗…… 」


 「ここまで幻想的な魔術細工は初めて見たわ…… 」


 一同驚き紋章に見入っているところにロサリオは説明を付け加える。


 「直径10cmにもなる賢者の石というのはこれ以外存在していないので、本物であることを証明するためにも僕と兄さんの血にしか反応しないように細工したんですよ。後はこのバルトロメ公爵印の刻まれた短刀ぐらいですかね。」


 マジックポーチから短刀を取り出して皆に見せる。これはランサローテでは見るものが見れば一目瞭然のものであり、大陸の貴族も名代を司るためや家のものであると証明するために、短刀を提示するのは常識であるため話として通じるものがある。
 短刀に刻まれている精緻な紋章と首飾りの紋章も一致している。特に首飾りの紋章の魔術細工は伊達や酔狂で付けられるものではない。
 アルラオネ含め、改めて彼がロサリオ・サン・バルトロメであると確信するのであった。

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