魔王に堕ちて討伐されたけど、何とか生きてます。

ノベルバユーザー255848

第24話 帰還と再会

 「まさか…… 魔族がヘルツォーク領に侵入し、しかもアメリア公爵殿下の国境会談帰路にて出くわすとは…… よくぞ無事に戻られました。」


 アメリアは、冒険者ギルド長のヘルナーゼに先の魔族遭遇の件を一通り伝え終えた。そして、サブナクには街の守備隊と連携し後詰部隊の編制を命じ、同時にナーダ領主の許可も取りに行っている。今回の概要も併せて領主には早馬にて早々に到着していた騎士が伝える手筈を取っていたので事は滑らかに進んでいっている。
 この時点においてはすでにアメリアが行えることはないのでサブナクに任せることとした。500程の数を編成し、後30分もすれば出立するとの報告を冒険者ギルドの来賓用応接室で受けた所である。


 アメリアは今回の帰路にて魔族と遭遇し、自らはサブナク含む少数の騎士達と共にナーダへ退いてきた件の報告が終わったところである。
 むろんそこには自分を助けたアンディーの件も含めてのことである。


 ギルド長の秘書か受付嬢かは不明であるが、淹れてくれた紅茶に喉を潤し、今後とるであろうギルドの対応の確認とアメリア公爵殿下という立場からの依頼を下した。


 「今後、わたくし達は魔族が進行してきた経路を特定しなければなりません。これは必須事項ですのでローゼンベルク軍も動きます。併せて冒険者ギルドにはBランク以上のものにも予想侵入経路の捜索を依頼することとなるでしょう。
 帝国側の魔族との緊張具合の情報提供もギルドに依頼します。これらは必須事項であり緊急案件と心得てください。」


 アメリアの平素は楚々とした佇まいに優雅に微笑を浮かべながら会話する姿をいつも見ているアンナは、ギルド長に対し、自分よりも遥かに年も上回る海千山千の経験を誇る男性相手に物おじせず、眼光鋭く対等に話をしている姿に畏怖と敬意を改めて感じるのであった。


 「魔族出現の情報は箝口令を敷き、依頼を受けるもの以外には漏れることのないよう徹底してください。そしてナーダ守備隊も連携させます。まずはメルダの町への増援をナーダ守備兵から一時編成します。その後はローゼンベルクから派兵する調査隊と交代することになると思われます。
 軍の捜索拠点はナーダ及びメルダの両都市になりますので冒険者ギルドも協力をお願い致します。
 ヘルツォーク領への魔族出現など200年ぶりです。国境会談を預かった身としてはまず打てる手を打っておきます。御父様にはこれから事後報告になりますが、否とは言わないでしょう。軍派兵においては御父様とヴァルターが主導で進めることになるでしょうから詳細はヴァルターか任命された指揮官から聞いてください。
 私が指示対策できるのは現状ではここまでです。御父様とヴァルター及び閣僚達の会議にて内容の変更も十分考えられるのでギルドとしても柔軟な対応を心がけてください。」


 ギルド長は閉口してしまった。今はいい意味でも悪い意味でも平和な世の中である。まして12歳の貴族の娘にここまで気を回し対策案を出すことなど出来るものであろうか甚だ疑問である。
 先程の報告にあったレッサーデビルの強襲、話によればアメリア自身にも危険が及んだ出来事であるとのこと。いわゆる実戦の空気を感じたというところであろう、刀創煌めく戦場に身を置いてこそ得られるものもあるというギルド長自身にも経験のあることであった。


 (ただ聡明で美しい女性だけではないということか…… 流石にティファニアの盾であり矛とまで言わしめたヘルツォーク、血筋もどうして…… 馬鹿にはできんな。)


 「アメリア公爵殿下からの報告及び依頼の件たしかに承りました。まずは帝国サイドの状況を集めて報告しましょう。
 あっ…… それと、先程アメリア公爵殿下から依頼と報告にもでてきたアンドラス・ティアスという名の少年に関してですが…… 」


 その時、何を思ったかアメリアがソファから勢いよく立ち上がり、わずかに遅れて応接室のドアを叩く音が鳴り響いた。ヘルナーゼが入出許可を出すと守備隊の騎士が緊急と言わんばかりに飛び込んできた


 「報告します!! 南門よりアルラオネ様と少年1名及び少女2名が戻ってまいりました。」


 聞くや否やアメリアが開いたドアより飛び出していた。アンナとヘルナーゼはあっけにとられたが、すぐさま我に返り後を追うのであった。








 無事に南門より都市へ入ることになったアルラオネ達は、守備隊とアメリアと共に先行していた護衛騎士に出迎えられた。サブナクが後詰部隊編成のために奔走していたが、魔族を撃破し、必要がない旨を伝えたところ、アメリアは冒険者ギルドにてギルド長と会談していると聞いたので、冒険者ギルドへ向かっていた。


 「あの長距離転移は凄かったですね…… 数十キロの距離を跳ぶとは…… もう何でもありですね、アルラオネさんは…… 」


 流石の無茶苦茶な大魔術にロサリオは溜息が漏れるのを抑えることはできなかった。もちろん畏敬の念を込めたものではあったところにアルラオネに敬意を称していることは言うまでもない。


 「まぁ…… 流石に魔力はほぼ無くなってしまったがの。ほれ! いつものプリチーアルちゃんへ逆戻りじゃわい!! 」


 マルティーナは自らの肩口を振り向きながら苦言を呈した。


 「私に背負われながら偉そうに言わないでくださいよ…… 」


 「想像とは違ってアルラオネ様は凄く親しみやすい方なのですね。」


 フリーンは皆が抱いているアルラオネ像といい意味で裏切られたことに非常に嬉しく感じてしまっていた。まさかかの大魔法師と喋るだけではなく、行動を共にするなど、同輩に言っても俄かには信じてもらえないだろうと思い、この幸運を噛み締めているのである。


 「アルラオネさんも元に戻ったし無事に街に着いたので、僕はこれでお暇させて頂きますね! 」


 半ば強引に言葉を発し最後の悪あがきを試みてしまうロサリオであるが、マルティーナはアルラオネを背負っているので俊敏には動けず、鳩が豆鉄砲を食らったような表情をしているとフリーンが咄嗟な動きでロサリオの右手を掴み胸にかき抱いた。


 「っ!? フリーンさん!! 」


 「あらあら、何処へ行かれるのですか? まだみんなアンディー様とお話が済んでおりませんわ! 」


 フリーンの咄嗟の行動にマルティーナは呆気にとられ、アンディーは予期せぬ右手の感触に戸惑っていると―――


 「アンディー様!! ……そちらの仲のお宜しい神官の方はどなたですの? 」


 すぐそばにあるギルドから駆け付けてきたアメリアに何故か戦慄が走るほどの極彩色の笑顔を向けられるのであった。


 ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタッッッ……


 自律神経の恐るべき反応か、ロサリオの意識とは無関係に身体が震えだしてしまった。このままでは話が進まないであろうと感じ助け船を出すのであった。


 「ほれほれ! じゃれ合うのは後にしてギルド内で互いの状況と報告を確認し合うぞい!! 小僧もこの段階でお巫山戯が通じると思っとるのかの…… アメリア嬢もそんな男を凍り付くす笑顔は後にせい!! 」


 「そうですね。おふざけが過ぎました。兎にも角にも皆さま、大変なお疲れでしょうがもう少しお付き合いください。アンディー様も是非ご同行お願いします。」


 何故であろうか、官憲に引き連れられる囚人のようだと思いながらアメリアの後を追い冒険者ギルドへ入るのだった。
 

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