魔王に堕ちて討伐されたけど、何とか生きてます。

ノベルバユーザー255848

第23話 狐娘の不幸な一日

 私は狐人族のサーラブ、今年で15歳になる女です。


 人族でいうところのイグレシアス山脈のヘルツォーク領との境である魔族領側に存在する集落に住んでました。狐人族はあまり群れずに個々人で行動することが多いです。
 15になるまでに村の大人たちに狩りの術や人間たちのことを教わります。中には、ヘルツォークやグランクルス帝国で冒険者に身を投じるものもいますので、過去、そういった経験のある長老格やそれに準ずる方々から指導を受けます。


 集落が魔族領側にあるのは、人間たちが安易に村へ接触することがないようにとの理由があるそうです。魔族側は勢力争いを長い間行っており、意識が魔族領中央部と各派閥の国に向いており、山脈側及びそれに沿うような地域には関心も目も向いておらず最適なので、他の獣人族の隠れ里なども結構あります。


 魔族には獣が人型になったような種族もあり、対する獣人族は人族に獣の一部、耳や尻尾などがあるタイプですので、魔族には嫌われ、人間にも疎まれていたりします。
 ただし、人間と関わらない生活というのはもはや考えられず、衣服や通常の道具に魔道具などは獣人族にはなかなか製作するのも難しくかつ便利なものはないです。


 冒険者たちは実力重視の方が多いので獣人でも差別されません。むしろ種族特性を生かせることもあり、重宝される部分も多々あります。なので、年老いて引退するまで冒険者を行い里に帰ってくるか、途中で死んでしまう者もいますが、人間と一緒になるものも稀にいますし、大変ですが、人族の街で商売に転じるものもいます。


 私は、15になったら、狩りの能力や種族特性を生かせる冒険者となり、里と人族の街を中継し里をもっと便利な故郷にしたいと思ってます。その日も私たち獣人族が人族のヘルツォーク領内へ入るための隠れ道を通り、修練に励んでました。
 ここは、山脈と山脈の切れ間となっているような渓谷が魔族領から人族の領内へ長く続いているのですが、魔族領側も人族の領側も相当奥に分け入らないと、手前の山々や森林で気づかないようになっています。


 その日はいつもと様子が違っていました。魔物の数をあまり見かけず、通常の動物は影も形も午後からは見えなくなってしまい、その様子に危機感を覚え里に戻ろうとしたところで、魔族たちと遭遇してしまいました。


 彼らは非常に身体能力の高い獣人タイプの魔族が5名いました。必死で逃げたのですが囲まれて逃げることは叶いませんでした。
 攻撃しなかったのが良かったのでしょうか? 暴力は振るわれずに済んだのが幸いでした。
 ただし、一番奥にいる、人族と造形の似たタイプの男性の魔族が首輪を持ってきて私に嵌め込み呪文を唱えられました。話に聞く奴隷の首輪なのでしょう。私はただただ怖くて悲鳴すら挙げられずにされるがままでした。
 獣人族は、獣型の魔族のことを区別するために魔獣族と人族や私たちと顔や体が似ている者たちを魔族と呼んでます。魔獣族は獣人族のことを性的には興味なくそういう目的では扱わないとのことなので一先ずは女性として安心していいのでしょうか!?


 魔族の男は、人族の領域へ至る道程を確認しに来ていると言ってました。その道案内をしろと私に行ってきました。逆らえば命の保証はない、逆に無事に任務を終えたらそのまま解放していいとまで言ってくれました。
 その魔族自体は私自身なんかには全く興味がなさそうに路傍の石を見る目つきでしたが、他の魔獣族は獰猛な獲物を狩る目をしているので、恐怖心から拒否の声をつい上げてしまいました。
 すると、全身を雷撃で貫かれた衝撃が走り、とても痛く、苦しく、全身が張り裂けそうでしたが痺れでまともに動くこともできずに呻くだけしかできなくなりました。
 魔獣族達はそんな私を見て下卑た笑いを張上げてました。


 蝙蝠のような翼が生え、頭の両側の側頭部から巻角が生えている、女の私から見ても美人で妖艶な女性の魔族が回復魔法を掛けてくれながら言いました。
 反意を持てばこのような目に合うと。本格的に逆らえば呪いで即座に命が取られてしまうと。


 私からはもう微塵も逆らおう、逃げようという気力もなくなり言われるがままに道案内をすることにしました。


 人族の領域に入りイグレシアスの山々を抜けた森林部で魔物と遭遇しました。
 ソートゥースウルフ11匹にゴブリン6匹にオーク3匹です。彼は私達魔族の集団を見るやいなやお互いの争いを止めて森を抜けて街道の方角へ逃げて行きました。
 ゴブリンやオークは多種族の女性を拐い犯し繁殖用に使った後、再利用できなくなれば無惨にも殺して食べたりするので、女性の天敵です。私もゴブリンは個人でも退治したことがありますがオークやソートゥースウルフは仲間達と共同であたらないととてもではないですが無理な相手です。
 その彼らが魔族に対してとはいえあぁも怯えて逃げ出す姿には、現状の不幸な境遇もあり多少は溜飲を下げることができました。


 街道に出ると、人族の部隊がおり先程の逃げていた魔物達と戦闘が始まりました。私は、もしかしたらこのまま魔族とも戦闘になり助かる可能性が出るのではと期待が膨らむのを感じてしまいました。私にも命令が下れば戦わないといけないのでしょうが、とても騎士達にはかないませんが上手く立ち回ることが出来ればと。
 私が望み薄な期待を抱いていると、部隊の中からとても立派としか私には表現できない馬車と、護衛の10名に満たない騎士達が街道を逃げていくのが見えました。残りの部隊で逃げる時間を稼ぐのでしょうか?
 あちらは100名近くいるように見え、魔族達にも気づいたみたいです。あの数で何とか魔族とも争って助けてほしいと強く思ってしまいました。


 魔物達も討伐され、命令を受けたわけではないんですが魔獣族達に無理矢理引っ張られ、戦いに参加させられました。人族と争いたくはないので、なんとか最後尾付近で攻撃に晒されないようにしながら、攻撃も当たらないように立ち回ってました。
 チョーカー型の何故か洒落たタイプの奴隷の首輪のせいか、騎士達には気付いてもらえません。
 そうこうしていると騎士達の中から、とても凛とした美しい女性の騎士が出てきて魔獣族達と切り結んでいきます。圧倒的な剣捌きで周囲に気を取られていた魔獣族を1体、そして2体と切り伏せてしまいました。同じ女性だからでしょうか、私の首にも気付いてくれたみたいです。下手に声を上げられないので、首に指を指し目線で訴えたら目配せをしてくれました。
 その時の気持ちは、地獄の底に垂らされた救いのロープを掴まえることができたような感極まるものでした。


 残りの魔獣族を倒された後に私は騎士達に案内され、ちっちゃい女の子に面通しをされました。
 何と彼女は、獣人族でも知っているあの大魔法師アルラオネ様だというのです。私は必死に助けてくれとお願いしました。
 この場では無理だが後で助けてくれるとおっしゃって頂けました。呪いか届かぬように清楚で意思の強そうな美しい神官さんに聖域魔法まで掛けて頂きました。


 アルラオネ様は魔族の戦いに、白髪の少年と向かわれてしまいましたが、魔族に奴隷の首輪を嵌められた絶望が払われていくのを感じ、安堵から私は気を失ってしまいました。
 この首輪が後程あんな騒動を起こすとは露程も思わずに。

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