魔王に堕ちて討伐されたけど、何とか生きてます。

ノベルバユーザー255848

第21話 ギルドからの報告

 その頃、先行していたアメリアたちはナーダの都市に到着していた。


 「姫様! お待ちしてました。ギルドより調査結果がまとめてあります。」


 早馬でアンドラス・ティアスの調査結果を依頼していた騎士が、同時に一時街道を封鎖するため門を守護していたナーダ守備隊とともに出迎えてきた。


 「だいぶ早くまとまりましたね。では、門の詰所のところで確認させていただきます。」


 一刻も早く内容を確認したかったため、領主館へ出向くのではなく、詰所にて落ち着くことを考え騎士に命令を発した。
 アメリアとメイドのアンナを含めても10名に満たないので街の街門の詰所でも収容は可能である。


 「ギルドも既存の情報、バルトロメ公爵の戦歴のなかにある情報として収集していたみたいですのでそれらから抜粋して編集するだけであったので比較的早かったみたいですよ。まぁ超特急で仕上げて頂きましたが…… 
 それと、正式発表はまだですが…… 」


 「それは助かります。他にも何かあるのですか? 」


 騎士はアメリアへ近寄り耳元で小声で報告した。その姿にメイドのアンナは眉を顰めたが、緊急性が高いと判断しての騎士の行動であろう特に咎めることはしなかった。


 「ランサローテで昨日、ついに魔王が討伐されたとの報告が入りました。」


 「っ!?!?…… それは…… 重大ごとですね。」


 アメリアは声にならない悲鳴をあげ、大声を出すことはからくも抑えることができた。アンディーに関する件及び魔王討伐の件も含めて確認したいため、詰所ではなく冒険者ギルドに向かうことを決定した。


 「領主が姫様を出迎える準備をしてますが向かわなくて宜しいでしょうか? 」


 「申し訳ないですが、ナーダの冒険者ギルドに向かい報告を受けてからにしましょう。ギルド長であれば、現時点でのその詳細を把握しているでしょうし、合わせてこの調査結果の確認もします。私は、ギルドへ向かうまでの道すがらでこの調査結果に目を通しておきます。
 何度も急がせてすみませんが、ギルド長へ話を通してもらってきていいですか? 」


 早馬など、何度も急がしてしまっている騎士の疲労を労いながらお願いをした。


 「そのようなお気遣いなど必要ありませんよ姫様! ではすぐにでもギルドへ向かいギルド長との会談の手はずを整えてきます。街道での戦闘の件も調査結果を受け取る時に報告しているので、ギルド長も姫様との会談は望まれていることのはずですから。」


 言うなり敬礼をして冒険者ギルドへ駆けていった騎士を見送った後、兵たちには馬車でそのまま冒険者ギルドへ向かうことを伝え、守備隊には、冒険者ギルドに立ち寄ってから領主館へ寄る旨をナーダ領主へ伝えるよう申し付けるのであった。


 今回の国境会談遠征における護衛部隊でヴァルターの副官を務めているサブナクは、今はアメリアとアンナと共に馬車内にいた。
 サブナクとアンディーことロサリオが会話していたのをアメリアが覚えていたため、またアンディーのことを恩人だと言っていたので、アンディーの件を知りたいであろうと取り計らい馬車内に招いた。
 街に到着したので、護衛の緊張も解いていいだろうという判断と自らも知りたいという欲求があったためサブナクはアメリアの招きに畏れ多いものを感じはしたが、元来の奔放気味で陽気な性格を発揮して応じるのであった。


 「して、姫様、あの坊主のことはなんて書かれてるんですか? 」


 アンナもアメリアの窮地を助けたアンディーという少年には、自らが仕える主人の命を救ったという件で好感を抱いているので非常に気になっていた。


 「基本的には私がアンディー様から直接聞いた内容と相違はありませんね。サブナクとアンナは知らないでしょうから書かれていることを伝えますね。
 アンドラス・ティアス、ティアス伯爵家次男として出生。
 ティアス家はランサローテ皇国で最大の貿易港を有し、ランサローテ島南西部で従属する貴族家を子爵家3つ、男爵家2つの計5家抱え、大きな勢力を築いていた。
 バルトロメ公爵軍はティアス家の持つ貿易港から上がる利益に目を付け直接支配するために出兵。従属ではなく滅ぼし、直接支配下に置くためにティアス伯爵家との開戦に踏み切ったのが今より約1年と2か月前とのこと。
 ティアス家の従属貴族軍が次々に切り崩され、開戦から3週間目でアンドラス率いるティアス軍とバルトロメ公爵方ブロワ伯爵軍と港都ティアスから2km離れた平野部で対峙し、敗走後ティアスに籠城。
 籠城は1週間続いたが、バルトロメ公爵弟率いる少数部隊に内部より切り崩されてブロワ伯爵軍と内外より攻め立てられ、当主と奥方達は自刃。嫡子であるコロラドス、アンドラス共にロサリオ公爵弟に討ち取られた。享年11歳。
 性格は年相応に短気で我が儘…… っ…… 10歳の時に冒険者登録し11歳で死亡したため登録は抹消、最終ランクはDランク。バルトロメ公爵弟への対抗意識を燃やしていたことがティアスの冒険者ギルドで確認が取れた…… とのことですね。」


 一息で読み上げ伝えたので、アメリアはここで区切り、アンナが用意した紅茶で舌を湿らせた。正直ここで読み上げるには憚れる内容があったためである。
 戦闘で馬車自体も攻撃の余波を受けたり、木に衝突したりと散々ではあったが幸いにも馬車にかけられている耐魔、耐物防御魔法によって被害がなかったので、馬車内の調度品も比較的無事であった。こうして備え付けの紅茶を飲めるのもそのおかげであるのでアメリアは不幸中の幸いであることに感謝した。


 「それにしても、坊主の経歴は想像以上に凄絶なものだったんだな…… 短気で我が儘って感じじゃ全くなかったからなぁ…… むしろ礼儀正しくて大人しい感じがしたが…… 性格が変わるほどの経験だったのかもな。」


 あの年で戦場に出て落日まで経験しているアンディーという少年に対し、騎士として敬意と大人として鬱念が綯い交ぜになった感想を漏らすのだった。


 「しかし、ギルドの報告では死亡扱いとされているのですが、ではあの少年は一体? 」


 アンナが尤もな疑問を呈した。


 「戦場なんかでは稀にあることだと俺も聞いたことがありますよ。戦死したと思ったやつが偽名でひょっこり戦場に現れたり、普通に次の戦に出てきたりなんてことがあるみたいですよ。」


 「事実、アンディー様が私に紹介した内容とこの報告に相違はありません。それと別件ですが、ランサローテに突如として現れた魔王が遂に討伐されたようです! 」


 「なっ!! ついにですか…… 」


 「あれほどの被害がでていたので討伐軍も壊滅したかと思ってたんですがね…… 」


 サブナク、アンナ両名ともが驚き声を上げてしまった。馬車外から帯同してきた騎士の一人が何事か尋ねてはきたが、問題ないと答えアメリアに声を張り上げたことを謝罪した。


 「かまいません。そろそろギルドに着くでしょうからそこで詳細を聞きましょう! 」


 討伐されたのは喜ばしいことであり、今後の大陸にも影響を及ぼすであろうランサローテにサブナクとアンナは息を呑むのであった。 


 (容姿は、明るめの茶髪に茶色い瞳…… アンディー様の容姿は白髪に黒い瞳でした…… 髪はどうとでもなるにしても、瞳までは…… どちらにしてもギルドと本人に確認せねば。)


 アメリアの瞳が薄く魔力を発していた。薄すぎて誰も気づかないほどではあるが、確かに遠くを覗くように本人も気づかずに静かな光を湛えていた。

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