魔王に堕ちて討伐されたけど、何とか生きてます。

ノベルバユーザー255848

第15話 ロサリオの参戦

 デカラビアは中、遠距離は魔術を使用し、近接は身体強化を使用するマールマイティ―な魔術拳闘士である。如才なく、魔術と格闘を操るので、Sランクとはいえ人族で彼と一対一など無謀を通り越して本来ならば自殺行為と言われても仕方がない。
 ただし、望む望まないとにかかわらず戦局がこのように動いてしまったためヴァルターは向かい合うしかなかった。デカラビアの練度と戦闘経験の豊富さから攻撃の隙など、全くと言っていいほど窺う余地もなく防戦で耐えしのぐしかなかった。
 まだ数合しか打ち合わせてもいないのに疲労とダメージが蓄積されてしまった。


 「援護します!! 合わせてください!!! 縛り・痺れ・我に跪き給え!! 」 


 『ゲヴェターアンビンデン』


 瞬く間に、数十にも及ぶ落雷の蛇がデカラビアへ殺到した。


 「何だ!? サンド―ストームの亜種か!! そんなもので私の防御結界が敗れるものかよ!!! 」


 たしかに範囲攻撃魔法と言われる人族が使用する上級魔法のサンダーストームに似てはいたが、降りてきた無数の蛇のような稲光が四方からデカラビアへ殺到し、通常展開している魔術防御壁にぶつかった。そしてそのまま防御魔方陣を食い破り四肢から全身にかけて巻き付き動きを阻害するのであった。


 「何だあの略式詠唱の魔術は!? 拘束に特化した雷属性の魔術だと!! そもそも人間がこうも魔術を運用するなどとはっ…… 200年前でもそんな人間いなかったぞっ!!!! 」


 200年前にアルラオネと対峙していたならばまた違っただろうが、ヴァルターは突如現れた少年に畏怖を覚えながら、絶妙のタイミングで急所を狙うべく光のような一突きを繰り出すのであったが、


 「ぐおぉぉぉぉ!! 舐めるではないわ!!! 」


 全身を雷の蛇に巻き付かれ雷撃を常に浴びている状態にありながら身体強化をかけている魔力の出力を倍以上に引き上げて、雷蛇を引き千切ることに成功した。
 しかし、ヴァルターの閃光にも届く突きを躱すことができず、急所を避けるので精いっぱいであった。


 デカラビアの左肩を貫きはしたが、致命傷ではないことを即座に判断し、バスターソードを引き抜き後退しようとしたがデカラビアの魔法が襲ってきた。


 「私に傷を負わせたことを誉めてやろう人間!! 褒美だ受け取るがいい…… フレアボム!! 」


 速射性を考慮し、魔術ではなく炎属性最上級魔法の一つフレアボムをヴァルターの近距離で解き放ったが―――


 『グレッチャーゲフェングニス』


 「何!? 私の魔法が…… 凍り付く!?!? 」


 ロサリオの放った魔術が発動しかかっていたフレアボムが大爆発する前に、氷の檻が包み込みそのまま氷結させ押しつぶし、綺麗で場違いなダイアモンドダストを発生させた。
 その隙をうまくつき、ヴァルターは態勢を整えるためにロサリオの隣に退いてきた。


 「とっさの無詠唱だったので魔法を留めるのに精一杯でした。何とか発動前に防げて良かったです。」


 魔族の行動パターン、使用する魔術の発動前の前兆を読み切らないとあの1秒にも満たない間でこうも鮮やかに防ぐことなどできるはずがないということにヴァルターは気づいていた。この奇妙な少年に改めて目を向け苦笑しながら礼を含めて言葉を交わした。


 「いやいや、あの鮮やかな手並みには敬意と畏怖しか抱けんよ…… ありがとう…… 少年? かな? 私はヴァルターというヘルツォーク公爵領にて近衛騎士をまとめているものだが、君の名を教えてはくれまいか? 」


 ヴァルターは隣にいる少年を改めて見ると、まだ成人、15になるかならないかどうかの年齢に困惑を表してしまった。白髪のせいもあって儚げで大人びた容姿をしているが、まだ己の喉元より少し下であろう身長から成人前なのかと思ってしまったが決して間違ってはいない。
 ロサリオは少年と思われたことに若干ショックを受けため息をつきながら返事を返すのであった。


 「アンディーと申します。やっぱり子供だってわかりますよね…… ハハッ、はぁ…… 身長がまだ小さいですからね…… 12歳ですが、平均かちょい大きいだけですから…… アメリア様やマルティーナさんは見た目が大人っぽ過ぎるんですよ!! 」


 「何と!?!? まだ12!!!! それであのような強さが…… しかもあそこまで戦いに慣れすぎておるというのか!? 」


 ヴァルターはその年齢を聞き驚愕してしまい、魔族から注意を切ってしまった。結果として問題はおこらなかったが―――


 「何だ! 何だ!! 何なのだ!!! 貴様は!!!! 」


 もちろんデカラビアはヴァルター以上に驚愕を露にし、ロサリオを注視していた。最初一目見た時の身の毛もよだつような感覚はすでになく、勘違いであったのではないかと考えたが、さりとてあの少年の放った実戦経験豊富で戦況に即した魔術2発は、貴族級の魔族とはいえ警戒と危機感を抱くのに充分であった。
 決して軽くはない負傷を左肩に負ってしまい、うかつに動けなくなってしまった。底の見えない少年の対処に思考を割きだしていた。


 「ちなみにあっちはもうすぐかたがつきそうですよ。なんか怖いお姉さんがめちゃくちゃ剣を振り回してましたから…… ヴァルターさんとしては、あの魔族とはどこまでやるのを想定してますか?
 あと、先ほどまでいたすごい色気のあった女性の魔族が見えませんが……? 」


 デカラビアはこちらを探るように沈黙しており、こちらとしても無理に戦闘行為を行う必要はないため、後方のアルラオネ、オリビア両名も念頭に置きつつ、ヴァルターと方針の擦り合わせを行っておきたかった。

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