魔王に堕ちて討伐されたけど、何とか生きてます。

ノベルバユーザー255848

第13話 魔族たちの動向

 子爵級魔族であるデカラビアは人族たちと接敵したことで現状の対処に考えあぐねていた。というのも今回は人族の領内に対する進行経路の捜索任務であったため少数であり、戦闘は考えていなかったことに起因する。


 しかも今回の任務には同盟相手であるサキュバスの女王リリスの娘であるメリディアナが同行している。同盟国の内情視察のために交換派遣をともに行っていたのであるが、メリディアナが人族の領内に高い関心を持っていたことも相まって半ば無理矢理ついてきてしまった。


 デカラビアとしては、8体の魔族兵を捨て置いてでも撤退に移りたかったのが本音である。ただし、等の本人であるメリディアナが人族との遭遇に対し好奇心を大いに刺激されてしまったため、今の状況に至るのである。


 デカラビア達から逃げていた魔物たちを盾として人族の部隊へ嗾けはしたが、もはやそれらも討伐され、今は8体の魔族兵たちが人間どもと交戦している最中である。この機に乗じて引くことをメリディアナに提案したが、一蹴されてしまった。


 「私の魔術と合間を縫って魅了をかけているのに全然聞いてないじゃない!? 」


 そう、自らの種族特性の魅了と魔術がアルラオネ達の防護魔法に阻まれてしまい苛立ち、デカラビアの提案を拒否してしまったのである。


 「メリディアナ嬢…… 向こうに恐ろしく魔力に造形が深いものがおります。あなたに何かあったのでは、我が主とリリス様に対して申し訳がたちません。今一度撤退を進言しますので考慮してください。」


 デカラビアにとっては聞き分けの利かない小娘にも等しいメリディアナに苛立ちを覚えてはいたが、そうもいってはいられる立場ではないので抑えていた。


 デカラビアとて人族相手にただ引くのは癪である。200年前の戦争に参加しており、あの時に味わった苦汁は今でも忘れていない。そのような感情もあったからこそ、開戦派でもあり、このような、言ってしまえばもっと下の魔族がやるような任務も、開戦に繋がるのではと率先して行っている。
 決してメリディアナのお目付け役というだけではない。


 「人族の部隊が前面を押し上げてきました! せめて我々だけは後退しますよ!! 」


 「まだよ!? このままじゃ私の気が治まらないし、あいつらも本格的にこちらを潰しにきてるようには見えないわ!! ここであいつらに魅力がかかれば瓦解して総崩れを起こさせられる!!! 」


 「向こうにも厄介な人間が二人はいます! 私とて人間など捻り潰してやりたいですが、このような小規模な局地戦などに意味はありますまい!! 」


 メリディアナは完全に頭に血が昇って大局が全く見えていない。
 まだ生まれてから20歳という魔族としては若すぎるということも起因しているのだろう。
 デカラビアとしてもメリディアナのそのような感情の機微もかつては自分も辿ったことがあるので、しかも同盟国の娘ということもあり強くはでれなかった。


 (サキュバスか、外見だけは色気もあり、男を魅了してやまない肉感的な体躯をしているが、夜の女王リリスの娘とは言っても見てくれだけで中身はまだまだ小娘か…… )


 「兵達が囲まれだしたわ!? 1人女の騎士でやるやつがいるっ!! くそっ!!! 向こうの防護魔法が硬い!? しかも流動的に動かして部隊を絶え間無く包んでいる…… あっ!? 2人やられたわっ!! デカラビアッ!!! 」


 決定打どころか有効打すら与えられないことで、メリディアナはパニックになりかけていた。


 「あの子供のような魔法師が上手く魔法をコントロールしている…… あれは我々が使用する魔術の領域だな。
 それ以上前に出ないように!! 一番奥にいる騎士が機を伺ってます!? あれが出てくるともはや退く道がなくなり、どちらかが全滅するまで殺らねばならなくなります!! 」


 メリディアナが冷静を欠いている分デカラビアは平静を保てている。
 本来なら魔物達が磨り潰された時点で引いていたはずなのに、魔族兵達が一戦に加わってしまった段階で引き際を見誤ってしまった。
 デカラビアとて過去の遺恨も持っている。結局メリディアナに引き摺られてしまっているところを見るに平静ではないのかもしれない。


 デカラビアもヴァルターもこれ以上の戦闘は望んでいない。ただ、お互いが出足の慎重さから本気でやり合うつもりではないであろうと感じ取ってはいたが、如何せん確証もなく背を向けるのも憚られていた。
 そこに、一石を投じる動きが人族側にあった。


 「あれは、援軍ではないただの伝達の兵か。なんだ、まだ子供じゃないか・・・っっ!!!! 」


 人族の部隊よりも若干高い坂の上にいたこともあり、デカラビアは一騎の馬が部隊へ駆けてくるのが確認できた。騎乗しているのが子供2人だと確認すると一瞬気が抜けたのだが、後方の少年を直視したとたん、全身が総毛だってしまった。


 (なんだなんだあれは!! 抑え隠しているようだがあの禍々しくどす黒い魔力の漏れ? 残滓のようなものはなんだ!? とても人間のものとは思えん!! 公爵級の魔族が人族に擬態しているのではないかと疑ってしまうレベルだっ!!!! あの首飾りからか!? あんなものを身に着けていて到底正気とは思えん…… あれはまだ人としては大人ではなく子供の部類だろう…… 本当に人間なのか? )


 「デカラビア!? あなたどうしたの? 全身震えているわよ!? 」


 (メリディアナは気づいてすらいない、若すぎるのが原因か…… 本来サキュバス族はこういうのに敏感であるはずなのだが…… )


 「メリディアナ! もはや我が儘は聞かん。すぐに退け!! サキュバスは思念波で疎通ができるだろう!? 特に御母上とであればこの人族の領域からでも造作もないはずだ。リリス様経由で我らが主へこの度の侵攻経路の報告をしてくれればいい!! いけぇぇっ!!! 」


 「ぐっっっっ、デカラビア!? 何をぉ!!! 」


 デカラビアは風の魔術を使用し、侵攻してきた方角の後方1km先にある森までメリディアナを吹き飛ばした。


 「散々な任務だったな…… あのじゃじゃ馬な小娘に振り回されて最後は化け物に遭遇とは…… この戦闘の詳細は秘術で飛ばすが、穏健派が活気づく材料になるかもしれんのが気に食わんが……
 さて、どれほどの化け物か見せてもらおうか!! 」


 デカラビアはすべてを殲滅させる勢いで自らの魔力を限界まで練り上げるのであった。

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