魔王に堕ちて討伐されたけど、何とか生きてます。

ノベルバユーザー255848

第10話 魔王の正体は……

 「で…… どこまで話したんだったかしら? 」


 馬上で揉み合いになり、ロサリオにとっては理不尽に近い暴力を身に受けて落ち着いたころ、先ほどの話の続きと言わんばかりにマルティーナが話しかけてきた。


 「バルトロメの麒麟児! ……ってもちろん知ってるわよね。」


 「知ってますよ…… 胸触ったことに対する嫌味ですか!? 僕の家はある意味そいつに滅ぼされたんですよ!! 」


 「違うわよ!? 従属貴族軍にやられたのではなかったかしら? 」


 「そうですけど、実質はそいつが率いた少数部隊に本陣を食い破られ、籠城後はそいつの小隊から内部工作で籠城も破綻…… 兄上はその麒麟児とやらに討ち取られ、僕もやられましたよ。まぁ僕だけは何の因果か生きてここにいますけど…… 」


 ジト目を模様しながらマルティーナに答えておいた。ランサローテ出身でバルトロメ公爵家関係者を知らないのはおかしいのと、ティアス家は事実、バルトロメ公爵旗下の軍に打ち破られている。そこにロサリオ率いる小隊の従軍及び戦果も公式記録として残っているはずなので違和感はない。


 意図したわけではないが、触れられたくないであろう過去に言及してしまったことに対して居た堪れない気持ちになってしまったマルティーナであるが、気にせず続けてくれという意向を受けうわさ話に関する部分を話し出した。


 「実は、そのバルトロメの麒麟児が魔王ではないか? というのがその噂話の核ね!! 」


 ロサリオはゼ絶句する。さすがにどこをどう取ったらその答えに行き着いてしまったのだろうかと…… 軽々しく斥候などに顔を見られるような甘い立ち回りなどはしておらず、対面したものに限らず戦場に立ち入った者のほぼ全てに対して物言わぬ骸に変えてきたというのに……


「何でも、ロサリオ公爵弟の戦死報告が魔王討伐開戦とほぼ同時期にギルド経由でもたらされたのよ。しかもロサリオ公爵弟旗下の従属貴族軍25,000も壊滅しているみたいなのよね。
 一応、魔王を決戦場所への誘導に命を賭して、壊滅しつつも成し遂げた…… という情報なのだけど、そもそもこの魔王の出現時期及び場所が不明確なのよ。なので、貴族たちや軍関係者では、ロサリオ公爵弟に憑依して現界したんではないか!? っていう噂がまことしやかに騒がれているわ。」


 この従属貴族軍は島統一後の影響力拡大のため、政治に疎くまた年若いロサリオを旗頭にフェメスから離反しようとしていた者たちである。
 フェメス及びロサリオの共謀の元、内密に処理しなければならなかったためにティマンファヤ大森林行軍中にロサリオ自身とフェメス直属の軍にて殲滅を行い、ことが公になる前に魔王として宣言を発し、魔王の所業にしたてたのである。
 ことの顛末は、ロサリオとフェメス及び直属軍である5,000名しか知らず、その5,000名も討伐戦にて皆殺しにしているため、真相は闇に葬られているのである。


 (真相は闇の中とはいえ、意外と噂は真に迫っているものなんだなぁ…… まあ調べても兄さんのほうでしっかりと情報は統制されるだろうし、どうやってもわからないだろう。二人の策謀で魔王として自罰的に片方が約100,000人も巻き込んで討伐されるなんて真相は…… )


 「そんな噂が…… というよりも戦死者の数が膨大すぎます。あの島は本当に魔窟と化したんですね…… 出身の僕でさえそう思いますよ。」


 ロサリオは詳細を知らない体でマルティーナの話に相槌を打つのであった。


 「そうね…… 大陸側の人間からしたら魔王討伐は是非成し遂げてほしい。それに、もともと帝国側からの魔族が活発化し小競り合いが出てきていたこともあって大陸中で話がでていたんだけど、今回のランサローテ島の魔王出現で決定的になったことがあるわ…… 」


 「何です? ……各国での合同軍創設とかですか? 」


 「違うけど、発想がすごいわね!? ある意味この決定の件でそうなる可能性も高いけど…… 」


 もったいぶるように言葉を区切るマルティーナに、まさか自分が魔王に堕ちたことが原因で大陸中での対応に一つの決定を促したことが非常に気になりマルティーナをせかした。


 「勿体ぶりますね!! 何です? ここまで言ったんなら教えてくださいよ!! 」


 「勇者召喚よ!! 」








 一方そのころアメリア側では、


 副官のサブナクに対してアメリアが一つの命令を発していた。


 「これから早馬にて都市ナーダに行き、ギルド経由で情報を集めてください。」


 「もともとナーダの都市へこれから行き、状況をローゼンベルク公都へ連絡し街の守備隊との連携を図るように考えておりますが、何の情報を集めるのでしょう? 」


 「アンディー様、アンドラス・ティアス卿の為人ひととなりとティアス家及び顛末について確認を取ってください。情報は書面にしたためてもらい私に直接渡しなさい。」


 公爵家貴族令嬢として毅然とした態度で副官であるサブナクに告げた。そこには、気になる男の子のことを知りたいなどという少女じみた願望などは一切表れてはいなかった。
 ただし、命令の理由は気になる男の子のためではあったが……。


 「別に恩人の粗探しをしようというわけではないわ。話では御家断絶とのことなので、裏が取れれば単に恩賞を渡すだけではなく、ヘルツォークが後ろ盾や援助及び公都に留まっていただくための御父様への説得材料になるでしょう!! 」


 涼やかに笑みを浮かべながらサブナクに告げるが、細められた目の奥では獲物を狙うような狩人の瞳を彷彿とさせられた。


 「畏まりました。私自身もあの坊主には大恩ができましたからすぐにでも集めて参りましょう!! 」


 「ヘルツォークの名前でナーダのギルドからランサローテ支部へ問い合わせればそう時間はかからないでしょう。」


 こうしてロサリオがヘルツォーク公爵領から離れられなくなる外堀が埋められていくのであった。人の行為や思いを無碍にして自由気ままに飛び出すことのできる気概があればまた別であろうが、性格的にもそれを行うのはロサリオには無理だろう。
 もはや余程の理由も彼には存在してはいないのだから。
 

「魔王に堕ちて討伐されたけど、何とか生きてます。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く