魔王に堕ちて討伐されたけど、何とか生きてます。

ノベルバユーザー255848

第8話 アメリアとマルティーナの企み

 アメリア達との邂逅が終わった直後に国境方面の街道から騎士2名と魔法師が馬で駆けつけてきた。
 レッサーデビルを検分していた騎士達に気づき、状況の説明を受け出していた。


 「そちらに向かったレッサーデビル2体の討伐を援護するために、こっちに駆けつけてきたんだが終わってるじゃないか!? どういうことなんだ…… 早すぎるだろ!! 」


 駆けつけてきた騎士の1人がいぶかしみながら問いかけてきていた。


 「実は、随分戦い慣れてそうな少年がそこの森から飛び出してきて介入してくれてなぁ、トントン拍子に事が片付いちまったんだよ。」


 「あそこの姫様とマルティーナと一緒にいる少年? か…… 冒険者にも見えんし、どこぞの貴族の子息か? 」


 「俺達もまだ止めを差したばかりで検分中だったから、何者かはわからないんだが、マルティーナあたりが聞き出してるだろ。あいつの使った魔法を妙に気にしてたから。
 しかも、姫様まで助けちまったからなぁ! あそこに転がっているレッサーデビルなんかは、あの少年がやっちまったみたいだしよぉ…… こりゃ、団長とオリビア辺りに嫌味の1つぐらい言われそうだ。」


 「姫様を危険な目にあわせて嫌味の1つだけじゃすまないだろ。」


 肩を竦めながらぼやいた副官に、駆けつけてきた騎士が忠告したが、自分の旗色が悪いと悟ったのだろう副官が慌てて気づいたかのように、足止めに残った部隊の事を問いかけた。


 「そっちはどうなってるんだ!まだ戦闘中だろ?」


 「俺たちは直ぐに団長からの指示で向こうの戦場から離れたから、どうなっているかは…… イグレシア正教会から派遣してもらった神官5名と魔法師団長含む魔法師5名がいるから、崩れることなく戦闘中だと思うが……。
 まあ実際のところ、団長二人いてオリビアがいるから、死人を出さないように持久戦に持ち込んでるだろうけど。」


 「馬を潰す勢いで駆ければ30分かからないぐらいか!? 手助けに向かいたいが、こちらは姫様がいる…… 公都に向かうか街道沿いの都市ならここから徒歩でも半日くらいだから、ひとまず1人を先触れをだしてそこで、団長達を待つか? 」


 馬や馬車ならここから2時間というところに都市ナーダがある。元々公都へ向かう通り沿いにあり、国境砦から一番大きい街であり、そこで1泊してから国境に向かっていたので、その案がすぐにでてきた。
 アメリアが乗車していたから、進行速度は遅めであり、最初に襲われた所まで半日かかったが、通常の馬や馬車の速度ならナーダから国境砦まで半日である。移動は基本、日中に行うので、1日の行軍及び移動可能時間は12時間程度になる。


 「襲撃があった近くにナーダよりも小さいがメルダの町があっただろう、そこは!? 」


 検分を終えたのだろう別の騎士が意見を挟んだが、副官は否定の意見を述べた。


 「最悪、団長達が劣勢になったらあそこまで引くことも考えるだろうから姫様を連れてはいけないだろう。そこに姫様と鉢合わせになったら、俺が先にあそこのレッサーデビルみたいに真っ二つにされるっ! 」


 「まぁたしかに…… では一端ナーダに引くという形で行動するか。」


 「あそこまで引いて姫様の安全を確保できれば俺たちも救援に向かえる! 場合によっては都市の防衛部隊を引き連れていけばいい。」


 「決まりだな! 」


 話がまとまった所に、タイミングよくロサリオが声を騎士たちにかけてきた。


 「すいません! マルティーナさんからここから12~3㎞くらいの場所で、魔族と魔物の集団と足止めのため戦っていると聞いたのですが!? 」


 「おぉ! 少年、先ほどは姫様を守って頂き本当にありがとう!
 たしかに状況はそうであるが、我々は一旦、ここから馬で2時間くらいの場所にある城塞都市ナーダへ引き、姫様の安全を確保してから救援に向かうことにしたよ。君も一緒にくるといい。」


 副官はロサリオに対しても同行を求めてきた。得体の知れない少年であるが、何より共闘したこととアメリアを救ったことが、警戒心を沸かせなかったのだろう。


 「マルティーナさんやアメリア公爵殿下に聞きました、魔族が10数体に魔物が20前後を95名程で抑えているんですよね!? 聞いてしまったからにはほっとけないし、僕にもできることがあるかもしれないので、馬を一頭お借りできませんか? 」


 ロサリオには思惑があった。ヘルツォーク公爵は大物すぎるということである。人物は調べられてもおそらく問題は発生しないだろうが、足跡を調べられると、どこにも立ち寄った形跡もなくいきなりここに現れたことが露呈するのではないかと思い、戦闘のどさくさに紛れて消え去ろうかと考えたのである。


 「一人で行くのは無茶だろう!! 向こうにとっても援軍の意味合いを持たないし、恩人を無謀な行動に走らせることなど我々にはできん。」


 (まあそうすんなり、ハイお願いしますと行かせてくれるわけはないか…… さてどうする? )


 「アンディー様!、まさか、戦場に向かわれるのですか?…… どうしてそこまで…… 」


 アメリアが手を組み心配そうに覗いてくるのに多少の罪悪感を抱きながら、


 「まぁ状況を聞いてしまいましたからね…… ほっておくのも寝覚めが悪くなりそうですし。」


 「大丈夫よ! 私も付いていくから!! 」


 「えっ!? 」


 「マルティーナも戻ってしまうの? 」


 マルティーナはアメリアを連れ少し離れていき、こちらに聞こえないように二人で身を屈めながら話合った。


 「私達がヘルツォーク公爵軍って聞いてからな~んか落ち着かないんですよねぇ、あいつ…… 彼がどさくさに紛れて居なくなっては姫様も嫌でしょう? なんか私達から離れたそうな感じがするのよね。」……ひそひそ……


 「ええ!? 嫌だわそんなの!! 」


 「しーっ! 声が大きい!! 」


 つい驚いて声をあげてしまったアメリアの口元を押さえながら落ち着かせるようにマルティーナは告げた。


 「どちらにせよこちらの状況報告を団長にしなければいけませんし、彼の実力をもう少し見ておきたいんです。
 元々、魔族の動きが活発になっているのはヘルツォークでも聞き及んでましたけど、ここにまで出没してくる状況です。
 無所属の実力ある少年なんてみすみす逃す手はないでしょうし、姫様だって手元においておきたいでしょう!?
 たぶん、公爵や団長達だってそう考えるはずですよ! 」……ひそひそ……


 「たしかにお礼もしなければ公爵家として恥ずべきことですし、ここで居なくなられるのは困ります! もっとアンディー様のことも知りたいですし……はっ!? あうぅぅ。」


 ここまで口から出てしまって恥ずかしくなってしまったのか、新雪のように白い肌の顔を真っ赤に染めて俯いてしまった。


 「姫様、あなた…… 」


 マルティーナはアメリアの感情の機微に気付いてしまい絶句する。たしかに、あの死が差し迫る状況で颯爽と助けられたら恋に落ちてしまうのだろうか。仮にも公爵家の令嬢がこうもわかりやすい反応を示すことに驚いた。
 自由恋愛など貴族の令嬢にはなかなか無いこともあるので、憧れもあるのであろう、好意を向けられている等の本人はというと、


 (あぁぁ、やっぱり単独では行かせてくれないよなぁ…… 状況を知る前にさっと立ち去っちゃえばよかったかぁ…… でも今さらだし…… その辺の冒険者ギルドとかで登録ついでに情報が集められればよかっただけなのに。)


 悩み後悔し悶えていた。



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