魔王に堕ちて討伐されたけど、何とか生きてます。

ノベルバユーザー255848

第7話 偽名、アンドラス・ティアス

 「援護してくれて非常に助かったわ。ありがとう! お若い魔法騎士様、それとも冒険者さんかしら。」


 騎士達がレッサーデビルに止めを差した直後に女性魔法師がロサリオに話しかけてきた。
 騎士に割り込まれたくなかったのだろう、騎士達がまだレッサーデビルの検分をしているなか、剣呑な雰囲気をロサリオに対し発している。


 (目が怖い! ……美人だから余計怖い!! )


 亜麻色の髪を片側の首もとから大きい三編みにして肩口から前に流しており、柔らかい雰囲気を醸し出してはいるが、榛色はしばみいろの瞳は警戒心を湛えてロサリオを見つめていた。


 「私達は、ヘルツォーク公爵領所属、ローゼンベルク騎士団の護衛隊よ。私はローゼンベルク魔法師団に所属している専任魔法師のマルティーナよ。あなたのことも教えてくださるかしら? 」


 (話し方ときつめの美人だから10代後半かと思ったけど、あまり板についてない蓮っ葉な喋り方は大人ぶってる感じがするなぁ。……僕と年はあまり変わらなさそうだ、……ていうか……)


 「ヘルツォーク公爵領軍!! 」


 (やばっ…… 大物すぎて吃驚して声にでちゃった!……。
 専任魔法師って身体強化魔法と武器で戦うような騎士や魔法を主軸に近接もなんとか対処する一般的な魔法師ではなく、魔法のみで戦うタイプだっけか!? 事実上の移動砲台みたいな感じかな? 若いのに器用に防御壁と攻撃の両立はできていたから魔法の才能を伸ばして特化してる人か。)


 ヘルツォーク公爵領、グランクルス帝国と国境を接し魔族領も近いことから、ティファニア王国随一の戦力を有している。


 ティファニア王国はイグレシアス大陸でも四大大国と呼ばれ、歴史も1,000年以上続くことから公爵家も20近く存在するが、要職だけで領地もない名ばかりの公爵も多いなか、領地の広さに軍事力も屈指ということもあり、公爵のなかの公爵と呼ばれている。
 中には敬意を表して大公と呼ぶものもおり、その事実を王ですら咎めておらず、王家との関係も非常に良好なものを建国時より築いている。


 かつて1,000年前の魔王討伐時にも多大な貢献をし、当時の勇者パーティ2部隊12名のなかにも嫡子と次男が帯同したという。
 イグレシアス大陸の中堅国家と同等かそれ以上の力を有していることもあって、中堅国国王よりも厚く遇されることもしばしばある。


 余談ではあるが、ランサローテ島が皇族などに統一されれば、勢力図として五大大国となるだろうという考察を示す軍学者は多い。ティファニア王国の20分の1程の国土であるが、鉱物資源の多さと戦乱による圧倒的武力の背景もある。


(いやいやいやいや、大陸全土でも貴族家のなかでトップの家じゃないか!!!!
 なんかよくわからないけど不味い気がする…… 素性の設定だ…… 調べられてもバレないように嘘ではあるけど、ほぼほぼホントの事実に組み込まないと。)


 「んっ!? 私達のこと知らなかったの? 気づきもしなかった? 」


 「いきなり戦闘に飛び出ちゃったから気づく余裕もなくて…… ハハハ。」


 「マルティーナ!!」


 マルティーナに詰問されそうになっていたところに、御者に回復魔法をかけ終えたアメリアが小走りに駆け寄ってきた。


 「姫様!! ご無事ですか!? 」


 (ナイス!、注意が逸れた。)


 この機を逃さずにロサリオは目上の者に対するように跪き最敬礼をもって挨拶を交わした。


 「この度は、火急を要する状況を鑑み、無礼にも断りもなく戦闘に介入してしまいました。
 私は、ランサローテのティアス港を有するティアス伯爵家が次男、アンドラス・ティアスと申します。とは言ってもだいぶ前にランサローテ統一を目指した、バルトロメ公爵軍の従属貴族家に滅ぼされてしまい、もはや家名も血族も残っていない状況です。宜しければ、アンディーとお呼びください。」


 事実、戦争中盤に継戦力を拡大するためにバルトロメ公爵家は、ランサローテ南西に位置するランサローテで最も大きい貿易港を持つティアス伯爵領に侵攻した。


 実際に攻め落としたのは、バルトロメ公爵家に従属しているブロワ伯爵軍20,000の軍勢であるが、野戦では勝利したが、10,000の兵数が伯爵領都ティアスに立てこもったために、ロサリオ率いる小隊でティアスに潜入し破壊工作を行い、ブロワ伯爵軍と内と外からの攻撃にて打ち破ったのでよく覚えている。
 ティアス家次男のアンドラスも当時11歳という若さであり初陣であったが、野戦で敗れティアス内に撤退し領主館まで退いた。


 ロサリオの小隊の工作により街門が破壊され、数か所からブロワ軍がなだれ込み、最後は領主館内にて当主及び奥方、側室は自刃し嫡子とアンドラスはロサリオが討ち取った。
 このことにより、相手が同年代の少年であったことも記憶に残り、かつ成りすますには関係者もほぼ死んでいるため都合がよかったのでアンドラスを名乗ることにした。


 「っっ! 貴族の方であったか!? しかも、あの魔境の出身とは…… どおりで戦い慣れていると…… 」


 「元、でございますのでお気になさらないでください。もう家も完全に断絶しているので平民と変わりありません。」


 バツの悪そうな表情になったマルティーナに対し、まったく気にしていないというように穏やかに告げた。


 跪き顔を上げずに敬礼をしているロサリオに対し、アメリアは願い出た。


 「お顔をお上げになりお立ちくださいまし。アンディー様はわたくしの命の恩人であり、我が騎士達を助けていただいた英雄なのですから!! 」


 「はっ、しかし公爵殿下に対しあまりにも……。」


 「命の恩人に対し、上から接するなどと、私も厚顔無恥ではございません。そのような硬苦しい呼び方ではなく、是非、アメリアとお呼びくださいませ! 」


 「姫様、それはさすがに…… 」


 マルティーナがさすがに名前呼びまでは見過ごせなく思い、声をかけたところで、街道から騎士2名と魔法師1名が乗った馬たちが駆けつけてきた。





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