魔王に堕ちて討伐されたけど、何とか生きてます。

ノベルバユーザー255848

第6話 アメリアの独白

 わたくし、アメリア・ローゼンベルク・ヘルツォークは、聖イグレシアス歴998年6月10日、ヘルツォーク公爵家の娘としてグランクルス帝国との交渉のため公爵領内の国境にて帝国の使者との会議に出席しました。


 毎年行っている国境警備の双方の取り決めのためではありますが、毎年のことなので交渉が長引いたり紛糾することはまずありません。ただし、王国と帝国との国境線に関わることなので、我が公爵家の人間が立ち会うことになっています。私自身公爵家を代表する公務は初めてのことですが、今年は帝国側も私と同い年の第3王女を立ててきました。


 いつもは帝国側の国境を有する辺境伯家の御当主か嫡子の方らしいのですが、年も同じなので両国の交流のための顔合わせみたいな感じになりました。話には聞いていましたが、燃えるような情熱的なストレートの赤毛の長髪に同じく赤く輝く力強い瞳が印象的な美しくも格好がいい騎士のような女性でした。


 近年、魔族の動きが活発してきたとの情報と国境付近から帝国にかけては山脈の標高が低くくなることから、一部の魔族が山脈を越えて小規模の戦闘が起こっているとのこと。
 もちろん、わたくしどもとて情報を事前に得ているので、互いに国境警備のための兵数を倍増することで両国陛下の同意書に連名の上、調印となりました。


 護衛騎士団約100名とともに帰路について半日ほど経った頃に、山脈もしくは帝国側の山脈麓の森林沿いからかは不明ですが、魔族と魔物の集団に遭遇し戦闘状態になってしまいました。
 馬車から覗いただけなので詳しい数や危険度などの予想が私には判別できません。


 相当に大変な状況なのでしょう。護衛騎士団の副官率いる4名と魔法師の女性であるマルティーナとともに、先行して離脱することとなりました。
 いざとなれば、私も補助魔法と回復魔法が扱えるので戦場に立つつもりでしたが、メイドのアンナに、
「姫様がいてはその分護衛にさかなければならないのと、彼らの職務上、万一のことが起きるような状況に姫様をおくわけにはいかないので、ご自重くださいませ。」
 と窘められては、大人しくするしかありません。


 戦場から離れて1時間ほどでしょうか。レッサーデビルという魔族が2体こちらへ襲ってきたようです。
 空を飛翔してきたようで、すぐさま迎撃に移行した騎士たちも手をこまねいているとアンナが覗きみて報告してくれました。意外とアンナは余裕がありそうですね。
 正直私は1時間前に接敵したときからなかなか鼓動が治まりません。騎士達が必死に守ってくれているというのに恐怖を感じてるんだと思います。


 そうこうしているうちに、馬車に強い衝撃が加わり何かに激突してしまいました。幸い馬車事態は、物理防護と魔法防護がかかっているため大した損傷が無さそうですが、御者と馬の安否も気になったこともあり、アンナの制止も聞かずに馬車を飛び出て状況確認しようとしました。


 馬車を出た直後、目の前に絶望が舞い降りました。
 後から知ったことですが、レッサーデビル自体は魔族の中でもかなり弱い部類だそうですが、あの時には、魔法を詠唱することも身を守る行動を取ることもできず、身体は硬直し目を見開き、か細い声を上げることしかできませんでした。


 その時、風を感じました…… 風を見ました。白と黒のコントラストの力強い風です。
 気づいた時には私にあれだけの恐怖を植え付けたレッサーデビルは上下に別たれており、凛々しくも優しげな男の方が私を気遣うように声を掛けてくださりました。


 その方に目を奪われてしまい、しばらく反応ができませんでした。白髪で儚げに見えるのですが、力強い黒く深い瞳に吸い込まれてしまいそう。
 社交界で貴族の男性は見慣れていますが、ただ美形というだけでなく、凛々しくかつ気高さも備えているように見えます。どこかの軍服? のような黒い服装も大変お似合いです。危機が去ったというのにドキドキが止まりません!!
 お年は10代中頃でしょうか?身長は私とほぼ同じに見えますので160㎝くらいに思います。10代半ばだと考えると男性としては小さいですかね? なんか可愛いです。


 うぅぅぅ…… あの方へなんとか返事を返すことがてきましたが、どもってしまいました。淑女にあるまじき失態です…… 恥ずかしくてまともに顔を向けられません。


 そうこう言っている間にあの方は、騎士たちと戦闘しているもう1体のほうに行ってしまいました。怖くはないのでしょうか? まがりなりにもただの魔物ではなく魔族だというのに。
 冒険者というにはまだ若いし、粗野な感じはしないので、どこかの貴族でしょうか?
 よほど大きい貴族家でなければ、3男以下の方々はあまり社交界では見掛けませんし。そういう家を継げなかったりする場合は騎士団や魔法師団へ志願することが大多数なので、やはり冒険者でしょうか?
 何故だか、私の眼が彼から眼を離すなと訴えている気がします……。おかしいですね、ふふっ、私は何を言っているのでしょうか…… 
 後で是非お話を聞かせて頂きたいです。





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