魔王に堕ちて討伐されたけど、何とか生きてます。

ノベルバユーザー255848

第3話 跳ばされた先の苦悶

 イグレシアス大陸は、人族、獣人族、妖精族、魔族の生活圏を有しており、近年は比較的大きな戦乱もなく、人族の小競合い程度である。


 大陸西部に魔族領があり、大陸西部と中央部を隔てるイグレシアス山脈が南北に連なっている。


 大陸中央北部の山脈から東部にかけてティファニア王国があり、中央南部から西部魔族領にかけてグランクルス帝国が位置し、大陸南東部にはイグレシアス正教会の総本山があるアエギディウス聖国が構えており、魔族領を除く大陸中に教会を設立し教義を説いている。


 大陸北東部から南部にかけてはマーチャント通商連合国が中堅国や小規模国家と同盟を結び、経済力を武器に三つの大国に対抗している。






「ここは一体どこなんだ……。まずは状況確認をしないと。」


 湖から岸辺にあがり、木の虚を利用して簡易的に休める場所を確保、火を起こしながら考察に没頭していく。


「たぶん、あの光に包まれて転移したであろうことを考えると、ティマンファヤは龍脈が通り龍穴がティマンファヤ山にあったから、ここも近くに龍脈と龍穴があることが予想されるけど……。ランサローテにはティマンファヤにしかないから、やっぱりイグレシアス大陸のどこかだよなぁ。
 あの戦闘でマジックポーチに収納していたポーション関連や食料もほとんど残ってない……。
 これはかなり不味いよ。ていうかロサリオとはもう流石に名乗れないし、なんとかどこかの街に出て、情報収集と冒険者登録かな。」


 ランサローテではロサリオは死亡扱いであるはずとの高い予測が成り立つことを考えての方針を立てた結果であるが、


「とりあえず偽名を考えなくちゃいけないのと、今って僕は何レベルくらいなんだろう。1ヵ月以上の休みもほぼない中での戦闘だったからなぁ。
 戦闘中もガンガン上がっていく感覚はあったけど、最後にギルドで測ったのが10歳の時の57だったから、今はどうなんだろ?
 ギルドや教会でのレベル測定は拒否しないと大騒ぎになるな…… ははは、はぁ…… 」


 基本的に騎士団などはレベル測定を推奨し皆、率先して行っているが、冒険者はあくまで目安であり、実績にてランクが上がっていくのでそこまで重要視はしていない。


 ただし、便宜上の目安としては、


 Cランクでレベル30~40。 ベテラン冒険者
 Bランクでレベル40~50。 一流冒険者
 Aランクでレベル50~60。 超一流冒険者
 Sランクでレベル60~70。 英雄
 SSランクでレベル70~80。 大英雄
 SSSランクでレベル80~90。千年前の勇者達


 種族特性にて細部等補正などがあるため単純な強さを表すわけではない。




 ちなみにロサリオはギルド史上最年少でのAランク登録となり大陸でも相当噂され、名前も売れてしまっていた。


「生き残ってしまったからにはランサローテのその後も知りたい、僕が関わる資格はもうないけど…… せめて想いの形がどのように結んだかだけは何としても!! 」


 胸元にあるネックレスの禍津玉が妖しげに赤黒く光を放っていることに気づき、感情のうねりが治まっていき手にとってロサリオは考えに耽る。


「最初に変化に気づいたのはバレッタさんが僕を庇ってくれた時だった。」


 その時のことを考えると胸が引き裂かれそうなほどの悔恨と悲痛が去来する。


「バレッタさんの死ぬ間際に体から何かがこの石に吸い込まれていった気がした。あの時は深く考えられる状況じゃなかったけど、あれだけ鮮やかだった蒼い石がこんな禍禍しい色にまで変化してる。
 大禁呪の魔方陣に使用された戦死者の怨嗟がこの石の中で渦巻いてるのかな…… 」


 覚悟を決めて魔王に墜ちて皆を葬っていったとはいえ、こうして生き残ると、どうしても他の方法がなかったのではないかと、兄の政治力と交渉にかけて平和裡に進められなかったのかと考えてしまう。


「あそこでバレッタさんが庇ってくれなければ、早々に討伐されて兄さんの試算に狂いがでてた……。
 各有力貴族家は戦力を保持し、終わらぬ統一戦が再開される。最悪は兄さんとアリアの身柄が拘束される所でもあった……。
 仕方なかったんだ!! あの島を統一して平和を築けるような才気なんて兄さんしか持っていないのが何故みんなわかってくれなかったんだぁぁぁあ!! 」


 鎮まった感情も一度思い起こせば容易く決壊させて慟哭が湖畔に響き渡っていく。それに引き寄せられるのは、魔物ゆえの本能なのか、Dランクの魔物であるソートゥースウルフが8匹の群れで現れた。


 ソートゥースウルフは必ず群れで現れるので4人以上のCランクパーティーでの討伐が推奨されている。


 その鋸歯のような牙と爪で攻撃されると高確率で化膿する毒性を帯びているのでパーティー内に神官は必須であり、毒消しのポーションがほしいところである。


「ちょうどいいところに来てくれた。僕の八つ当たりで申し訳ないが、切り刻ませてもらうよ!! 」


 魔物や人を切れば切るほど切れ味と赤黒い光が増す、ランサローテ随一の妖刀エルザバトを鞘より一息で抜き放つ。


 刹那のうちに八つの剣先が煌めき、哀れなソートゥースウルフ達は二つに切り分かたれて逝くのであった。


「やっぱり寂しいよ…… バレッタさん…… 」

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