魔王に堕ちて討伐されたけど、何とか生きてます。

ノベルバユーザー255848

第4話 生まれ変わって……

 ソートゥースウルフを倒した後、木の虚で一夜を明かしこの森を脱して人里を目指すために行動を開始した。


 今後、あの妖刀は目立ちすぎるので使用は限られてくるであろう。現状装備している鎧やマント、服装も戦闘の影響でボロボロである。せめて妖刀が無事であったことだけは僥倖といえるだろうが、使えなければ嵩張るだけであるが、マジックポーチが無事であったのが不幸中の幸いであろう。


 ロサリオが持っているものは一小隊30人分の兵糧が半年分程度入るものである。おそらく空間として30㎡程あるのではなかろうか。統一戦において12歳となるまで遊撃任務を小隊を率いて各地でゲリラ戦、奇襲、夜襲任務を行っていたので非常にこのマジックポーチは助かっていたのである。


 このクラスのマジックポーチはAランクでも上位の冒険者以上か伯爵級以上の貴族ぐらいしか持っていないであろう貴重なものでる。


 中から、冒険者にしては上等な仕立ての衣服を取り出し…… さすがに公爵の弟でありバルトロメ公爵軍総指揮官にまでなっていた人間がただの冒険者服などは持っていなかった。


 「とりあえず、この軍服みたいなのを着崩して、ダメになった装備から使える部分を適当に取り付ければ冒険者に見えないこともないだろう、あとはまぁ下級貴族の子弟ぐらいに見えればなんとかなるかな。
 剣は、ああ!! ちょうどいい性能的にも微妙なやつがあったからこれにしよう!! エルザバドに刀身の形状も似ているし。」


 決して微妙ではない、Aランク相当の騎士や冒険者が装備するような魔法の付与もついてる片刃で反りが入っており、斬ることに特化した剣を世間知らずな部分を発揮しながら上機嫌に装備をするのであった。


 昨日までの激動から一変して穏やかな森林浴にも等しいゆっくりとした速度で移動をしていた。


 「魔物が少ない…… というよりも僕の気配で近づいてこないといったところか。この辺りはランサローテの魔物の気性とは違うものなのかな?
 ただ、たぶんレベルがやばいぐらい上がっていて、昨日のように大きな物音や声をあげない限り、魔物はこない気がする…… あの戦いで絶え間なく、眠る暇もなくただただポーションで回復して戦闘に臨んだ結果としての戦闘中でのレベルアップ。
 兄さんが弱いランクから布陣し包囲をかけていってくれたおかげで順調に殲滅とレベル上げができたからこその結果か…… おかげで、人外のレベル、本当に魔王のレベルに到達しているんだろうな。
 レベルやなんやらのごまかし方をとにかく考えとかなくちゃ。」


 何も考えなしに散歩しているわけではなく、一度、レベルによる力業で思い切りジャンプをして周辺の地形を確認し、村や街はなかったが街道が見えたので、そこに向けて歩いているところである。


 星の位置や切り株で北の方角に目星はついており、峻険な山並みが南西から北を埋め尽くすように連なっていたので、やはりイグレシアス山脈の龍脈上に転移していた模様である。


 魔族領でなかったことが幸いか、あの山々の反対側であれば魔族領であり、人の身にとっては地獄の巷ともいえる場所であったろう。そう考えるとまだ運には見放されてなかったということか。


 「魔王が堕ちる場所としては、魔族領というのも洒落が効いていたのかもしれないけど……。死んで地獄の巷か生きて魔族領か…… なかなかに判断が難しいよねぇ。」


 まだまだ頭は混乱、というよりも今後どのようにしていくべきかの考えがまとまらないこともあり、今すぐにすべきこともないので、のんびり歩きながら考えをまとめていくのであった。


 「魔王討伐が終わり、落ち着きだしたらあの軍勢の配置や陣形、進軍に対して不自然さに気づく人間が出てくるはずだけど……。
 兄さん一人で業を背負っていくつもりか…… ある意味僕なんかよりよっぽど辛く厳しい未来を進んでいくことになるのか……。死んだつもりが何故か生きてるし、正直申し訳なさすぎる。」


 別人として今後生きていく。たしかにそれは可能だろう、あの激しい戦いの影響か元々の少し赤みがかった金髪は真っ白に変化というより色が抜け落ちたかのようになっており、今の暗い表情も相まって旧知の間柄でもすぐにはロサリオとは気づかれないような風貌をしている。


 「後悔も悲しみも寂寞感もあるけど、少しは前を向こう!!
 あの島は、未曽有の悲劇を乗り越えて復興していくはずだから…… 僕の役目は終わったから……。
  だから、新しい生を始めよう。」


 それでも折に触れ、後悔と罪悪感に苛まれるであろう。それほどまでに同じランサローテ島の人々に手をかけ、大切な人の死に目にも会い、自らの手で悲劇を生んでしまったのだから。

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