Mechanical War

語彙力不足

03

「久しぶりだなぁ〜 おっ、新しいゲームも増えてる〜」

明美にとっては久しぶりのゲーセンだが、喩月や美咲にとってはそうでもなく、小声で

(...新しいゲームなんて増えたっけ)

(多分増えてないなぁ〜)

というようなことを話していた。

すると、明美が

「よっしゃー! 格ゲーで勝負だーっ! どちらからでもかかってこーい!」

と叫んできた。
なんだかんだで誘った本人が一番楽しそうだ。

二人プレー用の対戦型の格ゲーが

(あの真面目っ娘さんなら勝てる...)

そう思ったのは喩月だった。
喩月は、普段ぼーっとしているくせに、格ゲーの腕には自信がある。
補足すると特に自信過剰というわけでもなく、それなりの実力者だ。

「じゃあ私が相手だ〜」

と言って明美の向かい側に座り、ゲームを始めた。




「うっ、うそ...」

「真面目っ娘」のくせに廃人レベルで強くて、勝ちを確信していた喩月はかなりショックをうけた。

喩月の番が終わり、美咲が交代しようとしたその時だった。
ゲームセンターの中で警報がなった。
その途端に客達は一斉に外へ逃げようと出口へ走って行った。
客達の悲鳴や罵声が建物の中で響く。
何が起こっているのか理解できぬまま彼女達は外へ押し出されていった。

「...なに...これ?」

押し出された彼女達が目にしたのは「HMW」と呼ばれる新兵器だった。
機体の肩アーマには世界行政軍のマークが書かれている。
世界行政軍は明美達の暮らしている国の戦争の相手...要するに敵だ。

「まずい...逃げなきゃ」

すぐ状況を整理できた明美は人々が逃げている方向へ逃げようとしたが、喩月と美咲はイマイチ状況を整理出来ておらず、ぼーっとつっ立ってた。

「おい、喩月!美咲! こっち、逃げるぞ!」

「えっ!ハハ、ハイッ!」

「お、おう」

明美は二人を連れて人々の逃げる方向へ走った。




走ってから何分経ったのだろう。
ふと後ろを見ると敵がいなくなっていた。
辺りを見回しても見つからない。
うまく敵から逃げられたと一安心したその時だった。

「うっ、上!」

と喩月が叫んだ。

(何だ?)

そう思って明美と美咲も上を見上ると、スラスターを使いジャンプしてきた敵がいた。
腕をこちらの方向に向けている。

(何をしようと...って、ま、まさかっ!)

何かを察した明美は

「ふっ、伏せろ!」

と言い、喩月と美咲をかばうようにして伏せた

バリバリバリバリッ!

対人用機銃と思われるものが上空から明美達のいる人混みの中に向けて掃射された。

しばらく彼女達の間で沈黙が続いた。

「やっ...やべぇ」

と美咲が言った。
それに続いて喩月も

「死ぬかと思ったよ〜」

と言った。あまりいつもと変わらない雰囲気だった。
だが明美は黙ったままだ。
心配になった喩月は

「...大丈夫?」

と声をかけてみた。
明美は

「だ、大丈夫...多分」

と答えた。

明美も無事で二人とも少し安心したその時、地面についていた美咲の手に生暖かい液体が一滴かかった。

その液体は赤かった。

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