ママは乙女!

オンスタイン

最終話 テレサ=アポカリプス

午後6時頃、アポカリプス家はいつも通り夕食の準備をしていた
「シトラーそろそろ座りなさーい」
「はーい!シトラ早くご飯食べたーい」
キッチンから2人の様子を見ていた艦長は複雑な気持ちだった…
(テレサちゃん…)
彼女は残された時間が僅かと知ってどういう気持ちなのだろうか…
きっと自分なんかよりも心の中で葛藤しているだろう…
そんな彼女に対して自分はどう接すればいいのだろうか…
最後になってこんな弱気になる自分が情けない…
そう思っていると
「シトラ…こっちに来なさい」
「なにーママー?」
シトラがテレサに近づくと
「よっこらしょっと!」
テレサがシトラを抱き上げた
「うわー!やったー!ママの抱っこ抱っこー!」
テレサはすごく足が震えていたが確かにシトラを抱っこしていた
「ふふふーん、ほらママもまだ抱っこ出来るのよ〜」
すごく自慢げに言っていたがすごくいい笑顔だった
「………」
涙を堪えるのに必死だった…
「いやーさすがママー火事場のバカ力ってやつかなー?」
「バカは余計よバカ」
睨まれたがもちろん笑って返す
彼女に出来ることはもう決まっている
「ならパパも本気だしちゃうぞ〜」
「ちょっ!だから抱っこはやめなさいよ!バカ!」
「わーい!またママと抱っこだー!」

それはいつも通りに接することだ

夕食が終わり、一段落ついた頃
「…シトラ、パパとママちょっと大事なお話があるからもう寝なさい」
「ええーもう寝るのー?」
「分かったわよママが一緒に寝てあげるわー」
そう言ってテレサとシトラは部屋を後にした
「大事な話…か」
改まって言われるとまた涙が込み上げてきそうになる
「とんだ泣き虫だな…俺は…」
シトラが生まれる前、テレサに同じ事を言われたことを思い出す
「でもさ…テレサちゃん…これで泣かないのはバカだよ…」

「あなたはバカよ」

気がつくとテレサはリビングに戻ってきていた
「随分と早く寝たわ今日は本当に疲れたのかしらねあの子」
テレサは少し笑いながら言った
「…もう、いつまで泣いてんのよあなた」
「テレサちゃんはなんでそんな平気なんだよ…」
情けなく弱々しい声しか出ない
「私はもう今日までよ」
「……」
「あなたのようなバカともやんちゃなあの子とも今日でさよならね」
「……」
「でも、もう決めたの…後悔しない最後。それはいつも通りに過ごすこと」
「思い出せばあなたは最初、いきなり一緒に寝ようって言ってきたわね」
「あの時はビックリしたし気持ち悪かったわ」
「………」
「でも、今はこうして当たり前のようにあなたと一緒に寝てる」
「変だわ本当にまさかあなたとこんなことになるなんてね…人生なにがあるか分からないって事かしら」
「………」
「…でも良かったわ」
「………」
「あんたみたいなバカで変態なやつでも…好きになって…」
テレサはそう言って艦長を優しく抱きしめた
「桜、綺麗だったわね…」
「また家族で見に行ければ最高だったのに…ついてないわね」
「くっ…!」
「もう、また泣くなんて本当に泣き虫ね」
「いい加減にしてよ…バカ」
「………」
「私だって……泣きたくて泣きたくて仕方ないのよー!!」
そしてテレサは泣きだしてしまった
「くっ!……あぁー!!」
艦長はテレサを力強く抱きしめた
「あなたとシトラを置いていくなんて…そんな事したくない…!」
「テレサちゃん…!」
抱き寄せる力が強くなる
「家族で旅行に行ったり、桜を見たり、遊園地に行ったり…いっぱいしたかった…!!」
「あぁー!!」
「まだまだ…離れたくないよ…艦長…」
「離さない!ずっと傍にいる!テレサちゃんのナイトになるって誓ったから!」
「……もう…バカなんだから」
「君の相手はバカにしか務まらないよ…テレサ」
艦長はテレサの唇に自分の唇を重ねた
「…もう乙女のファーストキスなんだから許可くらいとりなさいよ…」
「ごめんよ、学園長様」
「都合のいいときだけ学園長ってもう…ゲホッ!ゲホッ!」
「テレサちゃん!!」
「残念だけどそろそろ眠たくなってきたわ…」
「まだ寝ちゃ駄目だよ!仕事が山積みなんだよ!…頼むよ…」
「もういい加減、仕事には疲れたわ…休ませてちょうだい…」
「くっ……!」
「あなた…もう1回抱いてくれないかしら…」
「…えっ?」
「一緒に寝れなくて可哀想だから仕方なくあなたの腕の中で寝てあげるわ…感謝なさい…」
「ははっテレサちゃんは意外と優しいね…」
「意外は余計よバカ」
「ははっ失礼しましたー…愛してるよ」
「ふんっ…私も愛してるわ…」

テレサは艦長の腕の中で眠った

数年後

相変わらず蒼海市は今日も平穏とは程遠い忙しさだ
街ゆく人々も今の昼間はたくさんいる
「やばーい遅れるー!!」
ここは聖フレイヤ学園、同じく平穏とは程遠く忙しい場所だ
「よーし!なんとか間に合った!」
男は学園長室のドアを開ける
「ハイペリオン艦長オンスタインただいま参上つかまつりました!学園長!」
「もー!遅いわよ!パ…艦長!」
「あははーシトラ学園長は厳しいですなー」
「当たり前でしょ!学園長なんだから!艦長、容赦しないから覚悟なさい」
「ははー!」

一瞬、どこかで彼女が笑ったような気がした…

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