ママは乙女!

オンスタイン

8話 命より大切なもの

戦乙女はその高い身体能力を授かる代わりに自らの体内に崩壊獣のコアである崩壊エネルギーを宿す。
当然、生身の人間がそんなものを宿せば体にかかる負担が大きい。戦乙女は人々を守るために力を授かりその代償として自身の寿命を削ることになるのだ

「テレサちゃーん帰ったよー」
艦長がリビングに近ずいてきた急いで捲っていた袖を元に戻す
「あれ?どうしたのテレサちゃんそんな所に座って…て泣いてるじゃん!どうしたの!?」
「ご、ごめんなさいちょっとお料理してたら怪我しちゃっただけよ…」
「えっ!?どこを怪我したの!指?それとも…」
「駄目!」
艦長が腕を捲ろうとしたため慌ててそれを制す
「だ、大丈夫よ本当にちょっとしたことだから…」
「そ、そう?…もーおっちょこちょいだな〜テレサちゃんは」
なんとか引いてくれたみたいだ…
「それでも怪我したなら消毒しないとちょっと待っててね」
艦長は医療箱を探しにいったのかリビングを後にした
それより今は早くおじい様のところに行かなければならない
テレサは艦長を追いかけた
「あ、あなた消毒なら一人でも出来るから大丈夫よ…それより仕事場に忘れ物をしたのを思い出したの、急いで行ってくるからシトラを頼んだわ」
「あっ!ちょっとテレサちゃんそれなら俺が…!」
艦長が慌てて止めようとしていたが気にせず家を飛び出し天命本部へと向かった
「様子がおかしいな…一体なにを忘れたんだよ…?」

天命本部についたテレサはすぐにオットー主教に繋いでもらい会えるようにしてもらった
呼ばれた部屋に急いで行きノックもせず中に入った
「まったく…ノックくらいしてほしいなテレサ」
おじい様は椅子に腰掛けカップに入ったコーヒーを飲みながらそう言った
「それどころじゃないのは見て分からないかしら?おじい様」
おじい様はカップを置き悲しそうな目で私を見た
「その様子だと…出たようだね…」
そう腕に現れたアザを指し示すように言った
「はっきりと言おうテレサ。君はもう長くはないもって3日だろう…」
これまでにないくらい重々しくおじい様は言った
「そ、そんな…3日…?」
頭が真っ白になりそうだった…つい昨日、シトラが6歳になったのに自分はもうあと3日もつかもたないかの身になってしまった…
「君の体は極力、崩壊エネルギーの侵食を受けないようにしたつもりだったが…どうやら数々の戦いによる疲労が侵食を促進することになってしまったのだろう…」
テレサは戦乙女の中でもかなりの年長である。その上、くぐってきた修羅場は多い
「僕も分かっていた…だが君がオンスタイン君といるようになってから君は変わった…いつも笑うようになった…」
「………」
「そんな幸せそうな君にとてもだけどこんな事を言えなかった…君が得た幸せを壊したくなかった…すまないテレサ本当に…」
おじい様は泣きそうになりながら頭を下げた
「私は一体…どうすればいいの…?あの2人になんて言えばいいのよ…」
私も今にも泣きそうな声で弱々しく聞いた
「…すまない…私にはなにも言えない…」
おじい様は弱々しく答えた
「だが後悔だけはしないでくれ…作り物としてではなく人間として最後を迎えるんだ…」
そんな無責任なことをおじい様は言った
「人間…として…か」
私はそれ以上なにも言わずに部屋を出た

帰らなければ…自分に残された時間はもう少ないのだから

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