ママは乙女!

オンスタイン

4話 愛の証明

2055年11月10日蒼海市。天命本部

天命は数ある名家の代表が集まった崩壊対策組織である。主導者のオットー=アポカリプスはテレサの祖父でもある
「うわーさすが天命本部でかいね~」
「天命は崩壊対策組織の中でも数ある名家が集まった一番規模が大きい組織よ」
テレサは自慢気でもなくそう説明した
「へーそれじゃあテレサちゃんのおじい様ってすごい人なんだねー」
オットー主教とは一度、通信で顔を見たことがあったが会ったことはない
「あなたは一応ハイペリオンの艦長なんだから今日は礼儀正しくしなさいよ」
一応、念を入れて注意したがこの男にはたして効果はあるのだろうか?
「うん!こんな天使を生み出してくれてありがとうございました!って言わないとね!」
「間違っても言わないでちょうだい!」
やはり効果はなさそうだ…
扉の前まで来てテレサは止まった
「今日、呼ばれているのはあなただけよ失礼のないようにしなさいよ」
「そんな〜テレサちゃんがいないと俺は呼吸困難に…」
「いいから早く行きなさいよ!」
すごい勢いでタックルされそのまま扉をぶち破ってしまった…
「いたたた…」
顔を上げると受付の女性がすごい形相で見つめていた
「あーオットー主教に呼ばれてきました…ハイペリオン艦長のオンスタインと申します…」

案内された部屋の前までくると受付の女性は戻っていった
目の前にある扉を数回ノックすると中から声が聞こえてきた
「オンスタイン君だね?入ってきたまえ」
指示に従って扉を開ける
「失礼します…オットー主教」
中に入ると部屋はモニターまみれで蒼海市のいたるとこを監視していた
隣の壁を見るとテレサちゃんの写真が飾ってあった…可愛い〜
「そんなにかしこまらなくてもいいよ毎日テレサが世話になってるね」
「い、いえ世話になってるのは私の方なので…」
オットー主教は至って冷静に話していた
テレサちゃんのお腹に子供がいることは知っていると思うのだが…
「そういえばオンスタイン君、艦長の仕事はどうかな?うまくいってるのかい?」
「え、ええまあ船員たちや学園長のサポートもあって順調にいってます」
「そうかい…」
急にオットー主教の顔が変わった
「君のことは色々調べさせてもらったよ…オンスタイン君」
そうやってオットー主教は俺のことを洗いざらい話し出した
俺が捨て子であること…親は以前分かっていないこと施設の出でそのまま士官学校を出てハイペリオンの艦長に志願したこと…
全部、知られたくなかったことだった…
「君は幸運だよそんな不遇な環境で艦長にまで登りつめたのだから」
「……」
黙っていることしかできなかった確かに自分は不遇な生まれだがここまでやってこれた
「だがね幾ら運があったとしてもこれだけは許さない」
オットー主教は俺に近づきそう言った
「君には代償を払ってもらう」
そう言ってオットー主教は俺の腕を捻り肘を思いっきり強打した
「があぁー!」
激しい痛みが右腕にはしり腕は言うことを聞かなくなっていた
「その薄汚い腕で君はなんかいあの子を抱いた?」
こちらがもがくのを気にせずオットー主教はそう言った
「君ごときが私の最高傑作に気安く触れないでくれ」
「………」

確かに自分が彼女には不釣り合いなことは分かっている

「しかも君、テレサを孕ませたそうじゃないか随分と勝手なことをしてくれるね責任はどうするつもりだい?」

それでも…それでも…!

「責任はもちろん負います…」
俺はようやく言葉を発する事ができた
「ほう?どうするつもりだい?」
オットー主教は疑い深く聞いてきた
「あの子やそしてこれから生まれてくる子供のことを抱きしめます…いくらでも」
「はっ?」
オットー主教は呆れた顔をしていた
「彼女や子供たちが悲しんだりしても俺が抱きしめて…困ったら手を差し伸べる俺の腕は彼女たちの心のより所を作るためにあるんです…」
「……」
オットー主教は驚いた表情を見せたがすぐ表情をもとにもどした
「君はバカだね」
「彼女の相手はバカにしか務まりませんよ」
俺は少し笑ってそう答えた
「認めるよ…すまなかったね手荒な真似をして。だが理解してくれそれはテレサをやるための代償だ」
「ええ、分かってますよ」
「もう帰っていいよ。あの子も君を心配してるだろう」
オットー主教は一度、間を置いてそう言った
「はい、失礼しましたオットー主教」
そう言って俺は部屋を後にしようとした
「オンスタイン君」
「は、はい?」
呼び止められて慌てて後ろを向いたがオットー主教は背を向けたままこう言った
「テレサを頼んだよ…あの子の親として」
「…はい任せてください」

本部を出るとテレサが待っていた
「ごめーん遅くなったねテレサちゃん」
「ほんとよー私を外でこんなに待たせるなんてどうかして…」
テレサはすぐに異変に気づいたようだ
「あ、あははっ実は階段から転び落ちちゃって…」
なんとか言い訳するが効いている様子はない
「まさかおじい様がやったっていうの…!?」
おじい様はとても平穏な性格でとてもこんな事をする人ではない
「あーオットー主教とテレサちゃんの取り合いになってね〜でも大丈夫ちゃんと勝ち取ってきたよ〜!」
そう言ってなんとか場の雰囲気を落ち着かせようとしたが火に油を注ぐ形になってしまいテレサは泣き出してしまった
「バカっ!おじい様もあなたも大バカよ!私のために…大げさすぎるわよ!」
「……」
テレサは艦長の胸に飛び込んで泣きじゃくっていた
「子供が生まれる頃には腕が治るといいなー」
「えっ?」
「でも今は片腕でもいいや」
そう言って艦長はテレサの背中に手を回した

「君を抱きしめることは出来るからね…」




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