悪役令嬢は退場しました

こうじ

国境を越えます。

 明けて翌日、私は乗り合い馬車の停留所に来ていた。
 既に何人かが来ている。
 女性は私だけで、後は冒険者らしき人達が多かった。
 待つこと数分、馬車がやって来て乗り込んだ。
 乗り合い馬車に乗ったのは初めてなんだけどお尻が痛い。
 クッションを持ってくれば良かった。
「お嬢ちゃん、こういう馬車に乗るのは初めてかい?」
 隣に座った商人が話しかけてきた。
「はい、初めてなんです。」
「それだったらこのクッションをあげよう。」
「商品じゃないんですか?」
「商品だった物だよ。売れ残りだからね、タダであげるよ。」
「ありがとうございます。」
 この商人さん、隣国の方で出稼ぎに来てその帰り道だという。
 私と同い年の娘がいるらしくて思わず声をかけてきたらしい。
「お嬢ちゃんは、旅をしているのかい?」
「えぇ、色々あってこの国を去らなければならない事になりまして・・・・・・。」
「そうかい、若いのに大変だねぇ。まぁ、きっと良い事があるよ。」
「ありがとうございます。」
 そうこうしている内に国境にやって来た。
 一旦馬車を出て検閲をしなければならない。
 国王様から渡された私の身分証明書を取り出した。
 パーティーの前日に私にくれた物だ。
 警備兵にそれを見せる。
 警備兵は私と身分証明書を見比べているが頷いて身分証明書を返してくれた。
 まぁ、犯罪を犯してはいないんだから特に問題はない、と思う。
 再び馬車に乗り込んだのだが何か様子がおかしい。
「何かあったんですか?」
「冒険者の人達、どうやら指名手配を受けていたらしい。」
「えぇっ!?」
「仲間割れとかでパーティーの一人を殺してしまって隣国に逃げる予定だったらしいけどギルドから手配されていたみたいだ。」
 そういえば、あんまり話したがらない人達だったなぁ・・・・・・。
 多少のトラブルはあったけど無事に国境を越えて私は入国する事が出来た。   

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