冬の稲妻
006★恐怖で判断力は0です
雅美は、毛布を頭から被って、まくらを持って、震える足取りで、廊下へと出た。
直ぐ近くの秀人の部屋のドアをノックする。
そのノックの音に、気配に敏感な秀人は直ぐに雅美と着付き、ベットからするっと降りる。
その姿は、まるで、ギリシャ神話の石像のように均等の取れた美しいと言ってはばかりの無い姿であった。
秀人は、全裸のままドアを開けてひょいっと顔を出し、雅美の格好を見て不思議そうに尋ねる。
「雅美、何やってんだ?
その格好はどうした?」
秀人の顔を見てほっとした雅美は、秀人の腕にぎゅっと縋り付き、我慢していた涙をぽろぽろと零しながら、必死に話そうとする。
「うん、あのね………
…あ…のね………
ぼくね…ヒック………」
が、まったく意味を成さない言葉の羅列に、秀人は首傾げる。
えぇーとぉ……やっぱり…これは…カミナリのセイかな?
涙ぐんだまま、既にパニック状態で理由を口にするコトの出来ない雅美を抱き寄せてやりながら、秀人はぼそっと言う。
「お前、苦手なんだな
その調子じゃ」
自分の状態を把握したセリフに、雅美はコクンと頷く。
「うん」
「ほら、毛布捨てて来い……ほら」
目の前で腕を伸ばしてくれた秀人に、雅美はカミナリ怖さに、何も考えずに縋る。
当然、秀人が全裸であるということに、雅美は気付いていなかった。
「うん」
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