私は聖女になります性女(娼婦)にはなりません

ブラックベリィ

085★どうやら、アルの妹さんは凄い方のようです

 エリカが、腕の中でどうしようと困っている間にも、キャロラインアルファードの会話は無情に続いていた。

 「で、母上、アレは良いのですか?」

 名を呼ぶのも厭だという意味を込めて、アレ呼ばわりするアルファードに、キャロラインが、一応はたしなめる。

 「アルファード、妹をアレと呼ぶのは止めなさいって
  何度も言っているでしょう」

 そういうキャロラインとて、娘の名を口にする気が無いのは事実で、アルファードがその言葉を聞くはずもなかった。

 「アレで、充分ですよ、俺やバードに気が付かずに、アンナコトを
  させようとするバカは、どこぞのバカに、投げてやれば良いんです」

 アルファードの冷え切った言葉に、エリカは小首を傾げる。

 〔アルの妹さん?何をやったのかな?優しいアルが、アレ呼ばわりするなんて
  じゃなくて、ギデオンとレギオンとは別に、同腹の弟さんがいるんだ
  アルバードさんていうのが弟さんね、アルはバードって呼んでいるんだ

  いや、それよりも…アンナコトって…なに?
  いったいどんなコトをさせようとしたの?
  いやいや、それより兄弟って気付かないの?

  ………いやいや、妹さんで現実逃避しても………
  アルとの結婚は回避できなさそうだから……

  いや、別にアルが嫌いとかじゃにいけど……むしろ、大好きだけど…
  皇太子妃は、ちょっと…できれば避けたかったんですけど………

  って、あれ? えっ……これって、もしかして……
 性女娼婦は回避されるってことじゃ……〕

 そこでようやく、エリカは性女娼婦落ち回避が出来ることに思い至り、どこかホッとする自分に肩を竦めていた。

 〔はぁ~…なんか、気分は地獄から天国ねぇ~………《召喚》されて
  聖女候補って言われて……

  側にいた少女達は美少女ばかりで、これは詰んだって思ったモン
  ………じゃなくて…現実逃避しないで

 きちんと会話を聞いて、後で聞かないと
 これ以上、大変なことになった嫌だモン〕

 心の中で折り合いが付いたエリカは、2人の会話に聞き耳を立てる。
 と、その原因をキャロラインが首を振って口にしていた。

 「ああ…アレね…失敗したわ、本当にね
  男の子しか生んでいない妹が、姫を育ててみたいって言うから…つい…」

 〔アルのお母様の妹さんて………いったい、どんな育て方したの?
  そこ、もっとくわしく聞きたいんですけど…話してくれないかな?〕

 エリカがどう聞けば良いか迷っている間に、話しは進んでしまう。
 そして、アルファードのにべも無い絶対零度のような言葉が紡がれる。

 「今更、どうしようも無い話しです、私はアレを妹と認識しない」

 きっぱりとそう言うアルファードに、キャロラインは重い溜め息を吐く。

 「はぁ~アルバードも嫌っているものねぇ~………
  ギデオン、レギオン、貴方達は少しはマシよね」

 希望観測の入ったキャロラインの言葉に、ギデオンとレギオンは声をハモらせて拒否の言葉を口にする。

 「「義母上、私達もアレを姉と認識出来ない」」

 その凍て付いた声での言葉に、エリカはきょとんとする。

 〔ちょっと…それって……凄すぎるわ…アルに、その弟のアルバードさんに
  ギデオンさんとレギオンさんにまで拒絶されるって……
  その上で、実の母親にさりげなく?忌避されるような育ち方って………〕

 びっくりしているエリカの前で、キャロラインは困ったような口調で言う。

 「そう、ダメなのね…それじゃ仕方ないわね
  アノ子は、カンパネラ伯爵の後継に降嫁させます
  彼なら、我が儘なアノ子でも大丈夫でしょう」

 最初から確定しているような口ぶりのキャロラインに、アルファードもああという表情をして頷く。

 「カンパネラ伯爵か…確かに…あの家は皇家の姫が、いまだに降嫁していない
  それに…成り上がりのダルージャ男爵の次男を、莫大な持参金を貰って
  婿にして継がせたはず………それが、現カンパネラ伯爵だったな」

 自分の認識を確認するように言うアルファードに、キャロラインは頷いて言う。

 「そうよ。アノ子の我が儘って、基本が、ドレスと宝石よ
  ダルージャ男爵家は、ドレスも宝石も扱っているわ

  それにカンパネラ伯爵の領地では最高級の絹を生産しているわ
  なんとかなると思うのよ」

 一応は、母親として気にしているらしい言葉に、エリカはどこかホッとする。
 母親に、拒絶されまくったエリカだけに、キャロラインの娘への認識と、好みに配慮した政略結婚に、思い遣りを見出して内心で無意識の溜め息を零す。
 が、次のアルファードのセリフに、ちょっと硬直する。

 「カンパネラ伯爵の後継は、かなりの遊び人だったが?」

 キャロラインは、アルファードの確認を含めた言葉に、クスッと嗤って言う。
 「その辺りは、世間知らずのアノ子を、上手に転がせると思うのよ」

 そんなキャロラインに、アルファードは冷たく言い放つ。
 
 「まっ、アイツに疲れて愛人を囲うなら上手くやれと言うだけだ」

 アルファードの冷淡な反応と言葉に、エリカは小首を傾げてしまう。

 〔アルどころか、弟さんにギデオンさんにレギオンさんにまで
  ここまで嫌われているって、どんだけ、酷い性格なのかな?

  エリカ、もしかしなくてもイジメられる?っと、そういえば
  大概のイジメって、淑女のマナーやたしなみの指摘からよね

  うわぁ…全然わからないんですけどぉ……〕



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