私は聖女になります性女(娼婦)にはなりません

ブラックベリィ

074★聖女候補達を取り巻く環境


 魔法師団の団長アマディウス・クリフォード・ファルゼン、ファルゼン侯爵の跡取りは、エリカの内在する《魔力量》を見て口惜しそうに唇を噛む。

 〔アレが、消えた7人目の聖女候補か
  容姿的には、確かに他の聖女候補の方が
  はるかに良いが……

  《魔力量》は…とんでもないほど膨大だ
  容姿の劣りを補ってあまりある〕

 それは、他の聖女候補の美少女達の軽く10倍を超えていたから………。
 と、いうか上限を見切ることが出来ないほどの《魔力量》だったのだ。
 歴代の名のある聖女達もそうだったと、記録があるので、尚更に惜しいと思ってしまうのだ。

 〔……が、しかし、あの聖女候補の髪には
  既にアルファード様の瞳と同じリボンが……

  フッ…あのように仲睦まじいご様子では……
  私が割って入ることは不可能か………

  下手に声などかけたら……いや、不味いな
  あの女嫌いのアルファード様が、あのような
  蕩けきった表情をなさるのを初めて見た…〕

 アマディウスは、エリカが欲しいと思ったが、アルファードと戦って勝てる自信が、まったく無かったので、さっさと諦めてまう。

 〔そうだ、あの聖女候補が無理なら
  お2人の姫君に求婚すれば良いではないか

  ここは、きっちりと魔法師団の団長として
  アルファード様と聖女候補様と懇意にして
  将来の約束をもらえるように努力しよう〕

 そして、アルファードとエリカの恋愛を心から応援して、2人の間に生まれるだろう姫の婚姻相手になろうと考えたのだった。

 そういう見切りが出来る者が、聖女様の子供を得られる可能性を引き上げるということも、しっかりと知っていたアマディウスだった。

 神聖魔法師団の団長オルディス・ハーラン・ヴァイアス、ヴァイアス公爵の跡取りは、エリカの内在《魔力》にクラクラしていた。

 〔はうわぁ~…なんという《魔力量》だ
  あれだけの《魔力量》を持つ聖女候補様が
  産むだろう子は………

  いったいどれだけの《魔力量》を継承し
  内包するのだろうか?
  欲しい……あの聖女候補………〕

 その膨大な《魔力》が、我が子に遺伝するなら、歴史に残る神聖魔法の使い手になるだろうと思ってしまう。
 そして、エリカの性格が慈愛の聖女と同じだったら良いのにと思ってしまうのだが…………。

 〔いや、愛情は無くても良い、そう……
  わずかばかりの情と子供がもらえるなら……
  ……って、無理だよなぁ~……はぁ~……〕

 しかし、立ちはだかる障壁は限りなく高く強固な、魔法騎士団の団長アルファードなのだ。

 〔あれだけ、アルファード様が私の愛しい者を
  誇示しているんだから……ふっ…だったら…

  まだ、完全には、婚約とか決まっていない
  他の聖女候補の誰かを狙うか………〕

 神聖魔法師団の団長オルディスは、アルファードがとても怖いので、他の聖女候補と婚姻しようと思いなおすのだった。
 それ程に、第1皇子のアルファード自身が内在する《魔力量》は膨大なモノだった。
 だから、魔法騎士団の団長を務められるということを思い返して、神聖魔法師団の団長オルディスは、エリカから視線を外し、他の聖女候補達へと視線を向けるのだった。

 〔できれば、そう…できれば…他の聖女候補の
  中で1番《魔力量》がある者を………〕

 神聖魔法師団の団長オルディスが、意識をエリカから引き剥がし、さっさと思考を切り替えて、他の聖女候補達へと向けた、その頃。

 〔おぉ~…凄い《魔力量》を内包している…
  今回《召喚》した聖女候補の中で1番だな〕

 〔いやぁ~…惜しいな…もうお手つきかよ
  容姿はイマイチだが…あの内包する《魔力》
  聖女様の子供には…継承されるんだよなぁ…〕

 〔確かに、もの凄い《魔力量》だな
  ………でも、容姿的にはかなり地味だ〕

 〔いやいや、流石…魔法騎士団だな
  《召喚》した中で、1番《魔力量》のある
  聖女候補を確保しているとは………〕

 各騎士団の副長達は、初めて見る7人目の聖女候補・エリカの《魔力量》にクラクラしたままだった。

 だが、それを表に出してアルファードの不興を買うような馬鹿なマネはすまいと心に誓っただけだった。
 それぐらい、アルファードはエリカに向けてとろけるような甘い表情をしていたのだ。

 神聖魔法師団の団長オルディスから遅れること数分で、各騎士団の副長達は、全員が意識をかっちりと切り替えていた。

 そう、得られるはずのない高望みをするよりも、手が届くかも知れない、他の聖女候補の中から、婚姻相手を探そうと…………。
 ただ、人数がいるので、ハズレ(魔女や性女娼婦)がいるかもと、僅かな不安を抱えながら…………。

 そして、彼等に共通するソレは、エリカ達ほど、容姿にこだわってはいないということだった。
 ただ、こだわるのは《魔力》と、その性格だった。

 このドラゴニア帝国では、地位が高い者達ほど内在する《魔力量》も多いという常識があったから……。
 その常識をひっくり返すのは、聖女の子供達だった。

 聖女の血を引く者達は、かなりの高確率で内在する《魔力量》が皇族並に豊富になるのだ。

 それを知っているだけに、貴族達は聖女候補をちやほやして妻にしたいと思うのだった。 

 そんな野心を持つ者達が、狙いを定めたのは……。
 アルファードにがっちりと確保(婚約の紫紺のリボンを装着)されている、エリカ以外の聖女候補の美少女達だった。

 そう、まだ皇子方の所属するそれぞれの騎士団や師団の保護に入っている、聖女候補達は、まだ、正式な相手がいないので、すきあらば、相手が皇子であろうと、掻っ攫おうと狙っているのだ。





「私は聖女になります性女(娼婦)にはなりません」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く