私は聖女になります性女(娼婦)にはなりません
071★皇妃リリアーナの暗躍の裏で紡がれる真実・前編
皇妃リリアーナの元から下がった魔術師エルダールに、皇妃守護騎士長のピョートルが話し掛ける。
「エルダール殿、少々話したいのだが?」
そう改まった表情で言われ、魔術師エルダールは疑問符を浮かべる。
が、やっと、我が儘姫の癇癪から何とか解放され、ホッとしているだけに、同じ気持ちなのだろうと思って快諾する。
「はい、構いません」
皇妃守護騎士長のピョートルは、周囲を確認してから、手直にあったドアのある小部屋へと入る。
その行動に、ちょっと不思議そうな表情で、魔術師エルダールは続いて入る。
室内に入った後、ドアを閉めた皇妃守護騎士長のピョートルは、おもむろに口を開く。
「皇妃リリアーナ様を幻惑の魔法にて
おとなしくさせることは
貴方に可能ですか?」
唐突で不敬な言葉に、警戒心を滲ませながらも、皇妃守護騎士長のピョートルからの言葉なので、一応は答える。
「幻惑の魔法に掛けることは出来ますが?
それが、何の役に立つのですか?」
不快感を感じていますという冷たい声音に怯むことなく、皇妃守護騎士長のピョートルは、淡々と言う。
「はっきりと言いましょう
これ以上、皇妃リリアーナ様に
暴走されるのは、迷惑なのです」
その言いざまに、カチンときたらしい魔術師のエルダールは、皇妃守護騎士長のピョートルに冷たい声で確認するように言う。
「貴方は、姫様の守護騎士でしょう?」
だが、皇妃守護騎士長のピョートルもここで引き下がるわけにはいかないのだ。
皇妃リリアーナと自分自身と、自分の部下達の為に…………。
「皇妃リリアーナ様を守る為にも
これ以上、アルファード様を
怒らせるのは得策ではありません
あの方が、皇妃リリアーナ様に
一切抵抗していないのは
何時でも簡単に殺せるからなのです
そして、皇妃リリアーナ様を殺したなら
迷うことなく、一気呵成に
サラディール王国を攻め滅ぼすでしょう」
あまりに、自分の母国サラディール王国を軽くみる、皇妃守護騎士長のピョートルの言葉に、唖然としてしまう。
〔そんなに、我が母国サラディールは
弱くなんてありませんよ
いくらドラゴニア帝国とはいえ
馬鹿にしすぎではないですか?〕
「はぁ…なんですか? …それは……」
魔術師エルダールの表情から、内心を読んだ皇妃守護騎士長のピョートルは、深い深い溜め息をひとつ吐いてから、その認識を叩き壊す為に言う。
「アルファード様やアルフレッド陛下が
皇妃リリアーナ様の我が儘に耐えているのは
輸入している岩塩の為です
それは貴方でも、お理解りですよね
それを、手にする一番簡単な方法は
サラディール王国を征服することです
その力を、我がドラゴニア帝国は持っています
いいえ、ここは魔法騎士団長の
アルファード様はと言った方がイイですね」
その口調に、思うところはあったが、グッと我慢して魔術師エルダールは務めて平静な口調で聞く。
「では、聞きましょう
何故、今まで動かなかったんですか?」
その問い掛けに、皇妃守護騎士長のピョートルはあっさりと言う。
「それは、とても簡単な理由ですよ
支配する国が増えるということは
政務も魔物討伐も倍ですまないと
判っているからです
その面倒を嫌って、今までは
何もしていませんでした
私の言っている意味は
お理解ですよね」
皇妃守護騎士長のピョートルに、確認するように言われて、魔術師エルダールは紡ぐ言葉が見付からずに黙り込む。
「…………」
そんな魔術師エルダールに、皇妃守護騎士長のピョートルは畳み込むように言う。
「もし、皇妃リリアーナ様が地位をかさに
アルファード様の聖女候補様に手をだせば
その怒りでもって、皇妃リリアーナ様も
その故国も滅ぼす可能性があります
それを心にとめて、自重するように
貴方がしむけて下さい」
皇妃守護騎士長のピョートルの言葉に、魔術師エルダールは不快そうに言う。
「それは、貴方個人の意思か?」
魔術師エルダールの詰問に近い言葉に、皇妃守護騎士長のピョートルは首を振って答える。
「いいえ、これは、陛下の意思です
これ以上の我が儘は、許さぬと
自重せよと………」
予想外の言葉に、魔術師エルダールは沈黙する。
「…………」
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