私は聖女になります性女(娼婦)にはなりません

ブラックベリィ

065★エリカの作る食事について・後編


 エリカに聞かれたオスカーは、少し考える素振りをしてから答える。

 「確かに、日常的に魔法で調理するのは
  不味いかもしれませんが………

  今回のように魔物討伐の任務の場合は
  積極的に魔法で調理しても良いと思います

  魔物との戦闘で大量に《魔力》を
  消費しますから………
  とても魔法調理は有効ですね」

 付与される《魔力》のお陰で、満たされる感覚が大きい食事は、とても幸せになれるのだ。

 「そうだぞ、消費した《魔力》の補充の為に
  疲れた身体を鞭打って
  必死になって食べるという作業が……

  エリカの作る美味しい食事をとるという
  楽しい状況になったから、昨日は幸せだった

  これからも…魔物討伐の任務に
  同行して欲しいと思ったなぁ~……」

 今までの食事を思い返し、ちょっと遠い瞳でそう言うアルファードに、オスカーも頷く。

 「良い考えだと思いますよ
  魔物討伐を終えたと思ったら、直ぐに

  次の魔物討伐任務が待っているなんて
  ザラにありますからねぇ………

  姫君の料理があれば《魔力》と体力の
  回復もかなり早まりますからねぇ………
  団長も私達も負担が減ります

  ただ…その分…姫君の負担に
  なってしまうかもしれませんが……
  出来れば一緒に行動したいものですね」

 そのセリフを聞いて、エリカはちょっとびっくりしていた。

 「料理をしていて、魔法って便利だなぁ~
  って、思って使っていただけで
  別に、何の負担も感じませんでした

  私も、出来ればアルやオスカーさん達と
  一緒に行動したいと思っています

  他の聖女候補の人達とも
  一緒に居たいとも思いますが……」

 エリカの言葉に、アルファードとオスカーはびっくりする。
 あれだけ使っても、なんの負担も感じていないということが見て取れるだけに、その《魔力》の多さを知る。
 だから、オスカーはにっこりと笑って言う。

 「ああ、そうですねぇ~……
  団長が魔物討伐に行く時のみ
  同行するというのはどうでしょうか?

  毎回、湧いた魔物討伐の後
  体力と《魔力》の回復をはかる為に

  辛そうに大量の食事をとっている団長が
  可哀想に思っていましたので……」

 エリカも、言葉の端々にアルファード(他のギデオンやレギオン等も)が、食事をとることに対する負担を口にしていたことを思い出して頷く。

 〔うふっ…胃袋ゲットぉ~…かな?
  エリカの料理が役に立つなら……

  アル達について歩きたい
  オスカーさん、ありがとう〕

 「わかりました
  アルが魔物討伐に行く時のみ
  同行したいと思います

  でも、許可はおりるんですか?
  エリカは、魔法騎士団にとって
  部外者だと思いますけど?

  まして、聖女候補なだけの異世界からの
  普通の人間ですから」

 ちょっと不安そうに言うエリカに、アルファードがニッと笑って言う。

 「それなら、大丈夫だぞ
  魔法騎士団の団長である俺が良いって
  言ったんだからな

  それに、これでも…第1皇子なんで
  それなりの権力もある

  エリカが気にする必要は無いから………
  俺と一緒に行動して欲しい」

 エリカの正面にまわり、その両手を握って嬉しそうに言うアルファードだった。     
 それに対して、エリカも自分が役に立つ嬉しさを感じながら頷く

 「うん、一緒に行くね」

 朝食の話しが何時の間にか、魔法騎士団の魔物討伐にアルファードが行く時のみエリカが同行する話しに代わっていた。
 それをエリカはおかしいと思わずに、了承していた。

 アルファードを心配していたオスカーは、エリカという存在で今までの辛い食事を解決できると喜んでいた。

 それに、エリカ自身の身を守る為にも、アルファードの心(恋心と嫉妬心と純粋にエリカの身を守りたいという気持ちなど)を守る為にも何時も一緒に行動するという状況を作り出せてほっとしていた。

 オスカーも、アルファードとエリカを一緒にしておけば、何時でも2人を守れると思ったから…………。

 皇妃は、アルファードに付いたエリカも込みで、何の感慨もなく暗殺しようとするだろうから…………。

 それに、今回の《召喚》で現われた聖女候補の中で、まず間違いなく1番《魔力》が有り、有能な聖女はエリカだと確信していたから……。

 エリカだけが、倒れた神官や魔法使い達に気が付き、窓の外の魔物にも気が付いていた。

 それだけではなく、その状態をどう対処すれば良いかまで自分で判断していた。
 そして、命令し責任も取ろうと覚悟していた。

 また、命令の対価として、異世界から持ってきた貴重な甘味なども平気でくれ散らかした。
 人の為に、罪を惜しまないで使うことも才能のひとつ。

 何より判断して行動に移すということを素早く行うし、迷いが無い(迷いがあっても、それを表に出さない)という思い切りの良さも、上に立つのに相応しい。

 いずれは、皇帝になるアルファードの隣りに立ち、補佐する能力が有る。
 何よりアルファード自身が求めている。
 そして、エリカもアルファードに絆されている。

 こんな幸運は無い、僥倖といえるだろう。
 だから、エリカにチョッカイをかける者は全員排除しようと心に誓うオスカーだった。

 アルファードやエリカ、オスカーが会話している間に、ギデオン達が天幕に戻って来た。
 そして、エリカ達に声を掛ける。

 「姫君、神官達も魔法使い達も
  姫君の朝食を食べたいと……」

 「姫君、中央騎士団の副団長リーガル殿も
  騎士達は、姫君の作る朝食を食べたいと
  言っています

  姫君と一緒に、魔物討伐に行く機会は
  あまり無いだろうから、今回だけでも
  食べたいと切々と訴えられました」

 「そうですか、では、下ごしらえをしますね
  その間、昨日作ったチョコチップクッキーで
  お茶していて下さい

  ただし、1人、3枚までですよ
  ご飯の前ですから……」

 「はい、そう伝えておきます」

 「じゃ材料を出して下さいね」

 こうして、エリカは、朝食の下ごしらえを、昨日と同じように魔法ですませたのだった。




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