私は聖女になります性女(娼婦)にはなりません

ブラックベリィ

045★ちょっと一休み


 「………とまあ、これが
  寵愛の聖女様の
  お話です」

 長い寵愛の聖女の話しに、流石のエリカも疲れてしまう。
 
 〔確かに、オスカーさんの
  言う通りひとつで充分だわ

  残りの聖女様の話しは………
  後で聞こう

  今は…もう、聞きたく無いわ
  重いわ…メッチャ重い……はぁ~…〕

 黙っているエリカを心配したアルファードが話し掛ける。

 「大丈夫か?」

 「ちょっと疲れたかな?
  オスカーさんの言う通り

  確かに、ひとつしか
  聞けないわね

  後の聖女様の話しは…
  今日はパスします」

 「その方が良いですよ
  これは滋養強壮に
  なるモノです

  神糖果しんとうかという果物を
  干したモノです

  元は、かなり甘いモノですが
  食べ易いようにと

  ほのかな酸味が
  感じられるように

  レモネの汁とワインに
  潜らせてあります

  姫君、これを食べて下さい

  そして、お風呂の用意が
  整うまで

  しばし眠りなさい…
  良いですね

  団長もギデオン様も
  レギオン様も
  一緒に眠って下さい」

 「はい……そうします
  オスカーさん
  いただきます」

 エリカは、神糖果しんとうかを受け取るとゆっくりと食べ始める。
 アルファードも同じ物を受け取って、同じように食べ始めるのだった。
 そんな2人にお茶をいれて手渡すオスカーだった。
 その後に、渋々という態度で、ギデオンとレギオンとマクルーファに神糖果しんとうかとお茶を与えるオスカーだった。

 「マクルーファ
  書類は用意出来ましたか?」

 「ごめん…なんか…
  ヘロヘロで…ダメそうだ」

 「使えない男ですね
  では…全て代わりに
  やっておきましょう

  その代わり
  ここで眠って下さい

  貴方は豹だから
  音に敏感でしょう

  姫君と団長達の警護を
  兼ねているコトを
  忘れないで下さいね」

 「ありがとう…
  流石…俺の親友……
  助かったよ」

 「お礼は、何時ものように
  身体で返してもらいますよ」

 「おう…任せろ」

 「アルベルト殿、オーギュスト殿
  お疲れ様でした」

 「いえいえ…
  これぐらいでは………

  姫君へのお礼に
  なりませんが………

  少しは…お役に立てたと
  自身がほっといたしますので……」

 「では、この天幕に
  守護結界を重ね掛け
  しておきましょう」

 会話を終えたオスカー達は、寝息を立て始めたエリカ達を置いて静かに天幕を出て行った。

 ちなみに、神糖果しんとうかは、ハイエルフ族の住む領域にしかならないものなので、アルファードですら、オスカー以外の者からもらって食べたことは無かった。
 オスカーは、確かに男爵家の5男(オスカーだけ母親が違います)なのだが、母親はハイエルフ族の公爵家の姫だった。

 オスカーの父と恋に落ち、オスカーを生むとその情熱が綺麗に消え去り、公爵家に帰ってしまったのだ。
 その為に男爵家の5男なのだが、その公爵家の当主にすれば、可愛いし有能で力のある甥っ子なので、かなり甘やしてしまうのだった。

 自分の子供達よりも、出世していて、アルファードという第1皇子の側近というオスカーに、公爵家を継がせたいと思う程には…………。
 その思惑が判っていながら、欲しいモノはちゃっかりともらい、好き勝手に公爵を転がしているオスカーだった。 

 姿は白いハイエルフなのに、中身は、かなりダークエルフなオスカーなのである。
 なお、親友のマクルーファと同じように、慈愛の聖女の血を引いているし、皇族の血もがっつり入っているという優良物件です。

 そのコトを判っているので、貴族の姫君を微笑みひとつで転がして必要な情報を取りまくっています。
 そして、代わり(身代わり地蔵)に、ポイッとマクルーファを捨てていきます。

 でも、マクルーファも公爵家の跡取りなので、姫君達は喜ぶだけで、オスカーに騙されたとは思っていません。
 ちなみに、マクルーファは、ユキヒョウの獣人なので、女性と関係を持ってもその場限りで、ポイッと捨ててしまいます。

 猫科は、女性を抱き捨てるモノなので……その為に、ポイッとされた姫君もひと時楽しんだわぁ~と割り切った関係となっております。
 これは、これで、WINWINウィンウィンな関係と言えましょう…たぶん…きっと……。

 優しくて冷たいオスカーは氷雪の君(儚く見えるけど冷たくてお堅いから)と言われていますし、相方のマクルーファは風華の君(綺麗で冷たくてオスカーにふんわりと飛ばされているから)の君と呼ばれています。

 なお、アルファードは、氷雷帝(冷たくてお堅くて稲妻のように派手で逆らったら雷で瞬殺されるから)と呼ばれています。
 ギデオンとレギオンは、真紅の炎と紅蓮の嵐と呼ばれています。

 まっ髪の色と得意な魔法のセイです。
 ついでに、気性もかなり荒いので……。
 でも、アルファードに絶対服従ですし、オスカーに怯えていますので、これからの精進がまだまだ必要なんです。

 どの男達もエリカには、どうしても甘くなります。
 理由はそれぞれですが…………。

 これから、他の兄弟達や公爵達(本人または嫡男)や侯爵(本人または嫡男)に辺境伯爵(本人または嫡男)などがぞろぞろと出てきて、エリカや他の聖女候補をナンパ…げふんげふん…ではなく、アプローチをかけます。

 それと、魔法師団と神聖魔法師団の人間達や神官達も頑張ります。
 目指せ乙女ゲームという感じて進みたいんですが…………。
 閑話休題。

 オスカー達が出て行くちょっと前のエリカ達は…………。
 
 エリカとアルファードは、オスカーに言われた通りに眠ることにした。
 天幕の中には、重厚な絨毯が敷き詰めてあり、その上にふっかふっかの毛足の長い暖かい毛皮も敷き詰めた場所寝室もあった。

 その毛皮に羽布団を敷き、ブランケットを掛けてアルファード達は眠るのだ。
 エリカは、疲れていたこともあって、アルファードに抱き上げられて寝室に運び込まれた。

 眠くてぼんやりしているエリカのブーツと騎士服の上着だけを、脱がせたアルファードは、自分も同じようにブーツと上着を脱ぐ。
 そして、優しくエリカに話し掛ける。

 「一緒に寝るほうが暖かいし
  オスカーも一緒にいた方が

  イイっていったしな…
  ここは…広いし……」

 「うん、アル…もう…寝よう
  …こっちこっち…」

 ふんわりとした羽布団に座っていたエリカは、睡魔に勝てずに理性を失った。
 そんなエリカには、アルファードが、兄・大和(とにかくエリカを所構わず抱きかかえる男なので、アルファードのやっていることと何ら変わらなかったから)に見え初めていたのだ。

 子供の頃は、母親や姉に苛められて泣き寝入りするエリカを、大和は良く慰めて抱き込んで眠っていたのだった。
 そのことが頭に浮かんだエリカは、羽根布団をタシタシと叩いてアルファードに甘えを滲ませた声で呼ぶのだ。

 エリカのお誘いに、嬉しくて恥ずかしくてドキドキしていたアルファードは幸せそうに答える。

 「ああ、一緒に寝よう」

 そして、寝ぼけたエリカの一言に、奈落の底まで突き落とされる。

 「うん、お兄ちゃん
  おやすみなさい」

 それでも愛しいエリカを腕に眠れるんだからと気合で立ち上がり…いえいえ、横になってですが、ちゃんと挨拶する不憫なアルファードだった。

 「おやすみ…エリカ」

 こうして眠った二人に完全に無視されたギデオンとレギオンは、何時ものように、アルファードからちょっと離れた場所で一緒に眠る。
 一人ぼっちのマクルーファだったが、疲れていたのでそのまま眠ったのだった。
 天幕の中は、次にオスカー達が訪れるまで静寂に包まれた。




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