私は聖女になります性女(娼婦)にはなりません

ブラックベリィ

042★エリカは、過去の聖女と性女(娼婦)の話しが聞きたい


 エリカの言葉に頷いたオスカーは、天幕の片隅(怖くてここまでさがった)に控えている騎士に声をかける。

 「そうですか…では…
  ジャスティー」

 「はい」

 「アルベルト殿と
  オーギュスト殿を
  呼んできなさい」

 「はい」

 オスカーの命令にコレ幸いと思い、ジャスティーは騎士の礼をとると、素早く天幕を後にした。
 その姿を見送ったエリカは、ふと思う彼はどんな獣人なのかな?と何となく思う。

 そして、エリカは改めて自分の回りに居る騎士達を見詰める。
 自分にプロポーズされたと思って、オスカーに投げられたユキヒョウの獣人で白髪と紫の瞳のマクルーファを………。

 次に、未だに自分を抱き締めている、銀髪に紫紺の瞳のアルファードを……。
 そして、白金に水色の瞳の何時も優しいオスカーを……。
 双子のような赤髪に緑の瞳のギデオンとレギオンを……。

 そして、影のように気配を消して立っている、日本人には有り得ない瞳と頭髪の色をまとう騎士達を……。

 エリカは、日本人に有り得ない大柄な体躯とまとう色に、本当の意味で気が付いたのだ。
 そう、やっと現実に意識がそこで追い付いて来たのだ。

 自分が、異世界に召喚された聖女候補のひとりだというコトを、自覚する。
 そして、異世界に転移した自分が、もう、2度と日本に帰れないというコトも、同時に自覚した。

 魔物が居て、身体を蝕む瘴気がある世界は、力も知識も常識も持っていないエリカには、住み辛い世界いや命の危険しか無い世界だと………。
 その自覚によって、自分の回りにいる騎士達の姿をはっきりと自覚したのだ。

 が、しかし、所詮は危機感の無い日本人なので、騎士達を見て乙ゲーを思い出してしまうのは仕方の無いコトだった。
 そんなエリカに、アルファードが声をかける。

 「エリカ、どうしたんだ?

  なんか…初めて…
  俺達を見たような顔を
  しているぞ

  そんなに…俺達の会話が
  怖かったか?」

 自分を気遣うアルファードに、エリカは首を振って言う。

 「ううん…
  マクルーファさんの
  尻尾を見て

  異世界に居るって
  思ったの………

  それと…今…気が付いたけど………
  アルって…皇子様なの?」

 そうエリカに問い掛けられ、アルファードはオスカーの顔色を窺がう。
 ほんの少し前に、マクルーファが投げ捨てられたのを見ていたので、自分の答えしだいで、ペッとエリカから引き剥がされて捨てられると思ったのだ。
 だから、恐る恐るオスカーにお伺いを立てたのだ。

 「オスカー…答えても…良いか?」

 アルファードのセリフに、オスカーはちょっと考える素振りをしてから、エリカに言う。

 〔どちらも、衝撃が
  強そうなんですよねぇ

  でも、まだ、団長の
  立場の方がマシかな?

  いや、選択肢を奪うのは
  良くないですね

  とりあえず、姫君の為にも
  答えないと……〕

 「姫君、聖女様の話しを
  先にしますか?

  それとも、団長の話しを
  先にしますか?

  どちらも、かなり長い
  話しになると思うので

  どちらかひとつですよ」

 オスカーの優しい笑顔(妹認定のエリカ限定)での言葉に、エリカは小首を傾げながら聞く。

 「選ばないとダメですか?」

 エリカの問い掛けに、オスカーは困ったような表情で言う。

 「ひとつだけの方が
  良いと思いますよ

  内容が…ちょっと…
  アレなモノですから……

  私としては…
  団長の話しの方が

  まだ…マシなので……
  できれば、そちらにして
  欲しいぐらいですよ」

 オスカーの言葉から、エリカは即座に言う。

 〔もしかして
  この機会のがしたら………

  聖女様のお話し…
  なかなか聞けないかも……〕

 「聖女様の話しが
  知りたいんです

  私も、聖女候補ですから………」

 エリカとオスカーが、会話している間に、神官のアルベルトと魔法使いのオーギュストがそっと天幕に入って来ていた。
 そして、エリカの聖女について知りたいという強い意思に従うことにした。

 本来ならまだ話すべきでは無い内容を、アルベルトは話すコトにしたのだった。
 アルベルトは、静かにエリカに話し掛ける。

 「姫君、聖女様の話しを
  聞きますか?」

 〔流石に、性女(娼婦)には
  なりたくない

  だったら、頑張って
  聖女目指すもん………

  聖女と性女(娼婦)の
  話しを聞けば

  きちんと、聖女になる方法が
  聞けるはず〕

 心で握りこぶしをしながら、アルベルトに聞きたいと言う。

 「はい…聞きたいです
  ………その……特に
  性女(娼婦)と薔薇の館について……」

 エリカの心情をなんとなく読み取ったアルベルトは、優しい微笑みを浮かべて頷く 。

 「わかりました…では………
  とても長い話しになりますが……」





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