私は聖女になります性女(娼婦)にはなりません

ブラックベリィ

039★もしかして、聖女候補の召喚って頻繁だった?

 つい考え込んでしまったエリカは、お姫様抱っこされたままで、アルファードとギデオンとレギオンの皇族専用天幕に運び込まれてしまったのだ。

 エリカの意識が戻ったのは、フカフカのクッションに降ろされたときだった。
 はっとして顔で、辺りに視線を向けるエリカは…………。
 自分の置かれた状況に、頭を抱えてしまいたくなるのだった。

 クッションに座ったエリカをヒョイっと持ち上げて、アルファードが座ってくれたから…………。

 「アル…どーして…

  エリカを
  抱き込んでいるの?

  ひとりで座れるよ」

 「姫君、貴女は今まで

  心ここに有らず
  という状態でしたよ

  …ですから…心配した
  アルファード団長が…

  姫君を抱えて
  座っているんです」

 オスカーの言葉に、エリカはちょっときょとんとした瞳で言う。

 「えっ…そんなに
  ぼんやりしていたの?」

 「はい、野営地に到着して…………

  シルファードから
  降りる頃から
  おかしくなりましたよ」

 そう言ってから、オスカーはハッとした表情で、恐る恐るエリカを見て聞く。

 「あのぉ~……
  もしかして………

  騎士達の会話が
  聞こえていましたか?」

 確認するオスカーに、エリカは困った顔で言葉に詰まる。

 〔あっ…やっぱり…
  あの色々な聖女様の話し

  聞かれたら
  不味い話しだったんだぁ……〕

 「うっ…」

 言葉に詰まったエリカを見て、オスカーが溜め息を吐いて、斜め後ろに控える騎士の名を呼ぶ。

 「その表情では

  完全に聞こえて
  いましたね

  フェリックス」

 「はい」

 「あの辺りで、噂話に
  興じていた者達を

  きっちりと
  調べておくように………

  厳重訓戒と減俸処分に
  しますから………

  それと…
  あの辺りでなくとも……

  聖女様の会話を
  声高にしていた者も

  対象に調べおきなさい

  必要と思われる人数は
  好きに使いなさい」

 「はい
  不注意な発言をしていた
  馬鹿を探し出します」

 フェリックスは、拝命すると騎士の礼をする。
 その後、すかさず天幕から出て行った。
 その姿を見送ると、オスカーは、更に命令する為に部下の名を呼ぶ。

 「クリストファー
 
  君は、中央騎士団の
  今回の責任者

  副団長のリーガルに
  不注意者の処分を

  そちらでも
  必ずするように

  申し入れして下さい」

 「はい」

 クリストファーもまた、騎士の礼を取ると天幕から出て行った。
 その姿を見送るとオスカーは、アルファードに向かって言う。

 「団長…これで…
  これでよろしいですか?」

 「ああ…頼む」

 「では、後ほど
  書類を作成させますので…………
  署名をお願いします」

 「わかった」

 事後承諾に近いことを提案して終わらせた?オスカーは、黒い笑顔でマクルーファに話し掛ける。

 「マクルーファ副団長

  君が書類を書くも良し
  君の側近に書かせるも
  良しだけど

  さっさと書いて
  提出して下さい」

 自分にお鉢が回って来るなんて、思っていなかったマクルーファは、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をする。
 驚いてしまって、舌も良く廻らないらしい。

 「えっ…なんで…俺が……」

 そんな彼に、ワザとらしく溜め息を吐き出すと、オスカーは噛んで含めるように説明する。
 その表情は、この程度も判らないのか無能者と雄弁に語っていた。

 「君は、相変わらず
  馬鹿ですね

  私は…今回姫君の
  付き添いでしか
  ありません

  正式に
  魔物討伐の任務で
  来ていませんので…

  権限がありません…
  わかりますか?

  だから、君が実務の
  責任者なんです

  いい加減…真面目に
  文官を雇うとか

  書記官を手に入れる
  とかしなさい

  君は、書類作成が
  苦手なんだから」

 オスカーの説明に、慌てたマクルーファは、その慌てたままで言う。
 その時、軽く頭を下げながら、何故か日本人のような手を合わせおがむような仕草をしていた。

 〔あの仕草……あっ…
  そっか聖女候補って

  何度も召喚されて
  いたから………〕

 その見覚えのある仕草に、もしかしたら、自分達以前に、聖女《召還》された少女達の中には、エリカの思っていたよりも大勢いて、日本の文化文明を伝えているかもしれないと…………。

 「ちょ…ちょっと待てよ…
  オスカー…なっ…

  同期の親友同士だろ…
  俺達…

  だからさ…
  つれないコト言わずに…

  手伝ってくれよぉ…
  頼む」

 どこかの大学のテスト前の学生のようなことを言うマクルーファに、オスカーは溜め息を吐きつつ言う。

 「しかたありませんね

  今回は
  早さが大事ですから…
  ミカエル」

 「はい」

 「話しは聞いていましたね」

 「はい
  ドナルドと手分けして

  魔法騎士団の
  騎士用の書類と

  念のために
  中央騎士団の書類を
  作成しておきます」

 「頼みましたよ」

 副団長であるオスカーの意思をきちんと汲んで、ミカエルは騎士の礼をして、サッとさがっていった。






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