戦神兄妹

ジェダ

第2戦 メガネっ娘の妹もいいね!

昨日はホントに疲れた。

今日から新しい学校生活が始まるのか…。

リリとサクヤ、二人の妹が現れてから僕の生活はこれからどうなるんだろう。

そろそろ起きないと…。

けど、何かとてもいい匂いがする…。

それに柔らかいものが身体に当たってる…。

まるで、一緒に女の子が寝てるような…。


って、女の子!?

僕はゆっくりと目を開けてみる。

すると、リリとサクヤが僕の隣ですやすやと寝ていた。

しかも二人の胸が僕の身体に密着している。



「うわあぁぁぁぁぁぁ!?」

僕は慌てて飛び起きた。

ある意味目覚まし時計より効果あるな…。

すると、二人が目を覚ました。

「あ、お兄ちゃん!おはよう!」

「お兄様、おはようございます。」

「どうして二人が僕の部屋に!?自分の部屋で寝てたんじゃないの!?」

「だって、久しぶりにお兄ちゃんと一緒に寝たかったんだもん!」

「やっぱり、駄目…でしたか?」

駄目って訳じゃないけど…、やっぱり僕達ちっちゃい子供じゃないんだし…。

…よし、こうしようか。


「やっぱり一人で寝かせて欲しい。二人と寝たい時はまた言うから、ね?」

「本当ですか、お兄様?」

「約束だよ!」

「うん、約束するよ。」

「ありがとう、お兄ちゃん!」

「ありがとうございます、お兄様!」

今こう言っておくしかないか。

「タカヤ、リリ、サクヤー!起きなさーい!」

一階から母親の声が聞こえる。

「もうこんな時間だ!降りないと!」

「うん、行こう!」

「はい!」

三人は慌てて一階に降りた。


一階では母親が朝ごはんを作って待っていた。

今日の朝ごはんは白ご飯とベーコンエッグだ。

今日は父親も一緒だ。

父親のタクマはイズモコロニー港湾局の職員で、母親のサユリは専業主婦だ。

父と母と僕、そしてリリとサクヤが加わって家がかなり賑やかになった。

「三人共、おはよう!」

「おはよう、父さん、母さん。」

「おはよう!」

「おはようございます。」

「ほら、早く朝ごはん食べなさい。今日はタカヤが新しい学校に行くんだから。」

「いただきまーす!」

今日は五人も揃った賑やかな朝食になった。



そして、父親は先に仕事に出掛けた。

「それじゃ、行って来るよ。タカヤ、新しい学校でも頑張れよ!」

「うん、ありがとう父さん。」

父親が出掛けた後、三人も学校の制服に着替えた。

これがこれから通う学校の制服か…。

僕はますます緊張して来た。

三人共着替え終わると、いよいよ出発の時が来た。

「それじゃ、行って来ます。」

「頑張ってらっしゃい。リリ、サクヤ、タカヤをお願いね。」

「はーい!」

「行って来ます、お母様。」

こうして、僕の新しい生活の幕が開けようとしていた。



三人は家を出ると、近くにあるモノレールの駅に向かった。

ここまでは前の学校と一緒だ。

三人はモノレールに乗るとそのまま終点の駅まで向かう。


暫くすると、モノレールの窓から前に見た巨大な学校が見えた。

「あれがこれから通う所だよね?」

「そうだよー!」

「イズモ軍ASスクール。軍直属のAS使い、[ランダー]を養成する学校ですわ。」

AS使いの事をランダーって言うのか…。

それにこれから僕がなろうとしている…。

「まもなく、イズモ港口です。」

「お兄ちゃん、もうすぐだよ!」

この駅で降りるのか…。

三人はイズモ港口駅でモノレールを降りた。


そして駅からしばらく歩くと、でっかい学校が目の前にあった。

前の学校とは規模が違う。

「これがASスクール…。」

「お兄ちゃん、早く早く!」

「お兄様、早く行きましょう。」

「う、うん!」

タカヤはリリとサクヤに引っ張られながらも校舎に入って行った。




イズモ軍直属のランダー養成学校、ASスクール。


次世代のAS使い、[ランダー]を養成する為に設立されたスクールである。

科目は普通科、メカニック科、AS科、AS特務科があり、ニュートロン耐性がない者は普通科、耐性がある者はメカニック科やAS科で学ぶ事になっており、イズモ軍の士官学校としての顔も持つ。

特にAS特務科はニュートロン耐性や実力が優れた生徒達で構成されており、軍からの要請で戦場に出る事もある。

そしてタカヤはASの扱いが未熟であるにも関わらず、ニュートロン耐性がもっとも強いという事で特務科に配属される事になったのである。



リリ達と一緒に校舎内を歩いていたタカヤだったが、規模の大きさだけでなく、ある事に気付いた。

それは女子生徒ばっかり見掛ける事である。

ランダーは女性が多いとは聞いていたが、こう女子が多いとタカヤは極度に緊張してしまう。

リリはタカヤがそわそわしているのに気付いた。

「お兄ちゃん、大丈夫?元気ないよ?」

「だ、大丈夫、緊張してるだけだから…。」

「すぐに慣れると思いますから大丈夫ですわ。」

慣れるのにかなり時間がかかりそうだけど…。

女性の方がニュートロン耐性が強いからか。

火星圏や木星圏では男性でも耐性が強い人がいるみたいだけど…。

最初は緊張するかもしれないけど、頑張るしかない。

しばらく歩くと、一人の女性が待っていた。

「あなたがタカヤ君ね、待っていたわ。私がこの学園の理事長を務めますキリエ・アルタイルです。ようこそ、ASスクールへ。」

まだ若い女性が理事長だなんて…。

「よ、よろしくお願いします!」

「おはようございまーす!」

「おはようございます。」

「リリさんとサクヤさんもおはよう。さすがあなた達のお兄さんは優秀ね。特Aランクの耐性の持ち主ですものね。」

「特Aランクって…、一番強いって事ですか?」

「そうですよ、あなたはニュートロンの毒にほとんど汚染されない体質の持ち主なのよ。」

耐性にランクがあるなんて。

そんなに僕は凄いのか…。

「それじゃ私と担任の先生で教室まで案内します。リリさんとサクヤさんは先に教室に行ってなさい。」

「わかりました、お兄様、また教室で。」

「お兄ちゃん、また後でね!」

二人は階段を上がって教室に向かった。

「さて、私達は職員室に向かいましょう。ついてらっしゃい。」


「は、はい。」

タカヤとキリエは階段を上がり、二階にある職員室へ向かった。



二人が職員室に入ると、そこには見た事のある女性が立っていた。

「おはよう、タカヤ君!昨日はご苦労だったわね。」

「え…、クリス…隊長?」

なんと職員室にはリリとサクヤの上司であるクリス隊長がいた。

「そう、彼女があなたのクラスの担任でもあるクリスチーナ・ブレイデスよ。イズモ軍第7特務中隊の隊長でもあるわ。」

「学校でもよろしくね、タカヤ君!」

「よ、よろしくお願いします。」

「それじゃクリス先生、タカヤを教室までお願いしますね。」

「わかりました。」

キリエ理事長はそう言って職員室を出た。

「じゃ、教室に行きましょうか。」

「はい!」

タカヤはクリスに連れられて教室へ向かった。



タカヤが配属されるクラス、[SSA-7]の教室では、多くの生徒が集まっていた。

配属されるのが男子であると言う噂を聞いて、女子生徒の間で話が盛り上がっていた。

このクラスの生徒の大半がやっぱり女子である。

男子生徒は数人がいる程度である。

そして教室に担任であるクリスが教室に入って来た。

「みんな席に付きなさい!」

クリスの呼び掛けで生徒全員が席に座る。

「いきなりだけど、このクラスに転入生が配属されます。さっそく紹介するわね。タカヤ君、入りなさい!」

教室の外で待機していたタカヤはかなり緊張していた。

「どうしよう…。」

タカヤはおそるおそる教室に入る。

すると!


前の学校より生徒が多い。

しかも大半が女子。

リリやサクヤがいるとはいえ、まともに喋れるかどうか…。

「さ、タカヤ君、自己紹介しなさい。」

タカヤは顔を真っ赤にしながら勇気を出して言った。

「タカヤ・シンジョウです…。よ、よろしくお願いします!」

その後長い沈黙に包まれた。

「それだけ、なの?」

「…はい。」

緊張してこれ以上何も言えなかった。

「彼は特Aクラスの耐性を持ち、前回の海賊掃討戦で活躍した期待の新人よ。仲良くしてあげてね!」

クリスの言葉で生徒全員がタカヤに注目する。

隊長、そこまで言わなくても…。

特に女子からの注目が集まってきて、タカヤの緊張は頂点に達しそうだった。

「じゃあ、タカヤ君の席だけど…。」

クリスがタカヤの席を決めようとしていた、その時!

「先生、あたしの隣空いてまーす!」

手を上げたのはリリだった。

「じゃあリリの隣の席に行ってね。」

「はい…。」

タカヤはリリの隣の席に向かった。

席に座ると、隣にリリがさらに隣にはサクヤが座っていた。

「お兄ちゃん、学校でも一緒だね!よろしく!」

「うん、よろしく…。」

リリがいるからいいけど、僕の周りは女子だらけだ。

勉強に集中出来るかどうか…。

「それじゃ今日の授業始めるわよ!ビシビシ行くからね!」

こうして転校して初の授業が始まった。


最初の授業はコロニーの歴史の授業だった。

どうやら普通の学校と同じ授業もあるみたいで安心した。

女の子が多い事を覗けば、なんとか慣れそうだ。

ところが、突然教科書が一冊ない事に気付いた。

「あれ?ない、ない!」

まさか緊張のあまり家に忘れたのか?

僕は完全に慌ててしまっていた。

と、突然隣に座っていた女の子が僕に教科書を差し出した。

「あの…、私ので良かったらこれ、どうぞ…。」

眼鏡を掛けた女の子だ。

緊張しているのか、顔を赤くして僕を見ていた。

しかも、サクヤに負けず劣らず胸が大きい。

僕は教科書を受け取った。

「あ、ありがとう…。教科書は、大丈夫なの…?」

「ノートに写してますから、大丈夫…です…。」

「後で返すね…。」

転校初日に教科書忘れるなんて情けない。

けど親切な子がいてくれて助かった。

そしてようやく一時間目が終了した。



それから三時間の授業が終わり、ようやくお昼休みの時間になった。

普通の学校と変わらないのは良かったけど、休み時間には女子から話しかけられまくりでかなり疲れた。

特務科は男子が少ないらしいから無理ないけど…。

これからお昼ご飯食べないと。

と、そこにリリとサクヤが来た。

「お兄ちゃん!一緒にお弁当食べようよ!」

「お兄様、屋上で食べましょう!」

二人は両手に弁当箱と水筒を持っている。

「う、うん、行こうか。」

「それじゃ出発ー!」

三人は教室を出て屋上へ向かった。


屋上にも結構な数の生徒が集まっていた。

この学校にも食堂はあるのだが、弁当の持参も自由である。

今日はいい天気だ。

と、言ってもコロニーの中だから他の都市も見えるのだが。

「ここに座ろ!」

「そうですわね。」

三人は空いているベンチに座った。

タカヤの隣にはリリとサクヤが座る。

こうして三人でのお昼ご飯タイムが始まった。

そう言えば気になっていた事がある。

何故、僕達兄妹はどうして離ればなれになったのか?

タカヤは弁当を食べている二人に聞いてみた。

「ねぇリリ、サクヤ、何で離ればなれになったの?」

「あ、言ってなかったね。あたし達は小さい時に軍の研究機関に預けられてたんだよ。」

「そうですわ。お兄様は覚えてないと思いますが、私たちは優れたニュートロン耐性があるって言われて新型ASのテストや研究に協力してたのですわ。」

リリ達が今まで軍の研究機関にいたなんて…。

僕には全く記憶がない。

「私たちはそこで戦闘訓練をしたり新兵器のテストをしたりしてましたわ。」

「お兄ちゃん達と別れるのが辛くて泣いちゃった事もあったけど、ホームステイ先のみんなが優しかったからやっていけんだよ!」

「私とお姉様は別々の家で暮らしてましたが、とても優しい人達で良かったですわ。」

「この実験が終われば家に帰れるからって言われて、ね!」

それで今まで家にいなかった訳か。

「だから、昨日お兄ちゃんに会えたのが嬉しかったんだよ。」

「私もですわ。」

そうだったのか。確かに妹の存在を忘れるのも無理はないかもしれない。

「そしてお兄ちゃんを軍に連れて来るようにって言われたんだよ!」

「お兄様が特Aクラスの特異体質を持っているからと言われて…。」

「そうだよー!」

いきなり現れて「一緒に戦おう!」って言われて戦場に連れて来られたのはそういう事か…。

「ごめんねお兄ちゃん、いきなりこんな戦争に巻き込んじゃって…。」

「お兄様、ごめんなさい。まさかお兄様が戦う事になるなんて思っていませんでしたの…。」

リリ達がいきなり謝ったのでちょっと戸惑った。

けど、それで妹達と再会出来たんだから、それでいいと思う。

戦争は正直恐いけど…。



「いいよ、こうして二人とまた会えたんだし、それに僕の力が少しでも役に立てるのなら…。」

二人は再び笑顔を見せた。

「お兄ちゃん、ありがとう!一緒にこれからも戦おうね!」

「これからもよろしくお願いしますね、お兄様。」

「うん!」

「お詫びにお兄ちゃんにあーんしてあげるね!」

「え、え?」

リリが箸でつまんだ卵焼きをタカヤの口元に差し出した。

「お兄様、私のもどうぞ。」

サクヤもリリと同様に、唐揚げを口元に差し出して来た。

「い、いい、いいよ、そんなの…。」

こんな所見られたらかなり恥ずかしいのに…。

「お兄ちゃん、あーん!」

「お兄様、あーん、ですわ。」

二人の卵焼きと唐揚げが口元に近づいて来る。

かなりの生徒に見られていた。

しかも男子生徒からの視線が痛い。羨ましそうに見ている。

『リア充め!お前は俺達の敵だ!』

そう言わんばかりに。

恥ずかしいのでタカヤは二人が差し出した卵焼きと唐揚げを急いで口に入れた。

「美味しい?」

「美味しいですか?」

「う、うん、美味しいよ…。」

「良かった!」

「良かったですわ。」

恥ずかしいけど、悪い気はしなかった。


「あ、そうだ!」

「お兄ちゃん、どうしたの?」

「しまった、僕あの子に教科書借りてたんだった…。」

もう少しで忘れる所だった。

あの子とは話すタイミングを逃してしまった為に教科書を返せずにいた。

「あの子って?」

「眼鏡掛けたおとなしい子なんだけど…。」

「その方はノエルさんですわね。確か図書委員にも所属してましたわね。」

「そうそう、ノエルちゃんだよ!今は図書室にいると思うよ。」

「本当!?」

「本当だよ!図書室に案内してあげるね。」

「うん!」

三人は弁当を食べ終えると教室に戻った。



タカヤはノエルって子に借りた教科書を手に図書室に向かっていた。

校舎内が広い為、リリとサクヤに案内してもらっている。

しばらく歩くと、図書室が見えた。

「ここが図書室だよ!」

図書室もかなりの規模の広さだった。

街の図書館と同じ、いや、それ以上だ。

三人はノエルを探し始める。

図書室を歩き回っていると、あの眼鏡の子が本の整理をしていた。

「ノエルちゃん!」

リリが眼鏡の子に声を掛ける。

この子がノエルだったのか。


「リリさん、サクヤさん…。」

「お兄ちゃんが借りてた教科書、返しに来たよ!」

「あの…これ…ありがとう…。」

「いえ、そんな…、いいんです…。」

ノエルの顔が真っ赤になっている。

男子と話すのが苦手なのかもしれない。

「…あの、皆さんにお願いがあるんですが…。」

「どうしたんですか?」

「一番上の棚にある本が取れないんですが…、手伝ってもらって…いいですか?」

一番上の本が取れなくて困っているらしい。

確かに背が高くないと苦労しそうだ。

この中で一番背が高いのは僕しかいない。

「僕が…やるよ。」

「あ、ありがとう…ございます…。」

「がんばって、お兄ちゃん!」

「お兄様なら大丈夫ですわ。」

こうして一番上にある本を取る事になったのだが、僕ならなんとか届きそうだ。

「この本で…いいんだよね?」

「はい…。」

どうやらASの歴史に関する本のようだ。

タカヤは本を抜こうとする。

しかし、固くて取れない。

「どうしたの、お兄ちゃん?」

「これ、固い…。」

固いけど少しずつだけど抜けて来た。

「お兄様、大丈夫ですか?」

サクヤが不安そうに見ている。

「大丈夫。後ちょっとで…、抜けた!」

ようやく本棚から本が抜けた。

しかし、それと同時に隣にあった本が次々とタカヤとノエルの頭上に落ちて来た。

「危ない!」

タカヤにとっさに落ちて来る本からノエルをかばった。

「お兄ちゃん!」

「お兄様、大丈夫ですか?」

「な、なんとか…。」

さすがに痛かったけど、ノエルは無事みたいだ。

「大丈夫?」

「は、はい…、あの…、手…。」

「へ?」

そう言えば、右手に柔らかい感触がする。よく見るとノエルの豊満な胸を鷲掴みにしていた。

「うわあぁぁ!ご、ご、ごめん!」

「キャアアア!」

タカヤは急いで胸から手を離すが、今の騒ぎで大勢の生徒がこっちを見ていた。

すると、タカヤの目の前には一人の大柄な男子生徒が立っていた。

「おい、俺の妹に何をした…?」

大柄な男子生徒がタカヤを睨み付けている。

確かに同じクラスにいたような…。

「ち、違うよ!こ、これは事故で…。」

「…あ?」

全く聞く耳持っていない。

リリとサクヤも必死に訴える。

「確かに触っちゃったけど、これは事故だよ!」

「そうですわ。決してわざとじゃ…。」

「貴様らは黙ってろ…!」

男子生徒はギラギラした目で二人を睨み付ける。

「妹の胸を触っておいてシラを切るのか?」

確かに触ってしまったけど…、事故なのに話も聞いてくれない。

と、男子生徒の口から意外な言葉が!


「貴様、タカヤ・シンジョウだな…?」

「う、うん…。」

「俺と勝負しろ。」

「へ?」

「貴様が勝ったら話は聞いてやる。俺が勝ったら、命はないと思え…!」

なんと一方的に勝負を挑まれてしまった。

「俺の名はゼル、ノエルの兄だ。次のAS訓練の時間で勝負だ。覚えておけ…!」

ゼルと名乗った男子生徒はそのまま去って行った。

「ご、ご、ごめんなさい、私のせいで…。」

ノエルはタカヤに謝った。

「い、いいよ、僕の方こそごめん…。」

「そんな、気にしないでください…。兄さんには私からも言っておきますから…。それじゃ…。」

ノエルはゼルを追いかけて行った。

転校初日からこんなトラブルに巻き込まれるなんて。

なんて日だ。

「お兄ちゃん!いきなり胸触っちゃうなんて!」

リリがタカヤに怒りだした。

事故とは言えいきなり女の子の胸を掴んでしまったのだから無理もない。

と、ここでサクヤの口から信じられない言葉が!


「私の胸ならいくらでも触って良かったですのに…。」

「え、えぇ?」

そういう問題じゃないのに…。

「サクヤちゃんずるい!あたしのも触っていいよ!胸は小さいけど…。」

話がだんだんズレてきた。

「そういう事じゃなくて!勝負挑まれたよ、どうしよう…。」

「次の授業の時だね。お兄ちゃんまだ素人なのに…。」

「ノエルさんが説得してくれるのを祈るしかないですわね…。」

しかし、その期待は裏切られる事になる。

そして、昼休みは終わり午後の授業が始まろうとしていた。



午後の授業はASによる戦闘訓練の授業だ。

ASの基本的な使い方の訓練や実戦訓練などが行われている。

授業中でもゼルはタカヤを睨み付けていた。

勝負が始まりそうな予感だ。



そして基礎訓練が終わり、実戦訓練の時間が来た。

教官で担任のクリスが全生徒に声を掛ける。

「みんな注目ー!これからチーム制の実戦訓練を行うから、組合せ決めるわよー!」

これからチームの組合せを決めようと言うのだ。

と、ここで一人の男が口を開く!


「先生、組合せは決まりました。」

なんとゼルがいきなり手を上げた。

「ゼル、もう決まったの?」

「はい、俺とノエルでタカヤと勝負します。」

やっぱり勝負になってしまった。

説得はダメだったようだ。

タカヤの顔に不安の色が。

「だ、そうよタカヤ君。リリ、サクヤ、あなた達がタカヤ君と組んであげて。」

「もとよりそのつもりだよー!」

「わかりましたわ。」

3対2で戦うことになったようだ。

「ゼル、いいの?3対2になるけど。」

「俺は別に構いません。」

「わかったわ。じゃあまずはタカヤ隊とゼル隊の実戦訓練を行います!」

こうして、タカヤにとって初めての実戦訓練が始まった。


クラスの生徒全員が見守る中、タカヤ隊とゼル隊の戦いが始まろうとしていた。

訓練は校庭で行われる。

校庭内でもRFが展開されている為、ASに深刻なダメージを受けても死ぬ事はない。

タカヤ達はそれぞれのASに装着している。

ゼルとノエルもASを装着していた。

ノエルのASはオレンジのカラーリングで名前は[ティンクルガード]。

ゼルのASはブラックとホワイトのカラーリングで名前は[アイアングリズリー]。

タカヤにとって二人の能力は未知数だった。

「お兄様、私たちがついてます。頑張りましょう!」

「う、うん…。」

「ノエルちゃん達はかなり強いからお兄ちゃん、気をつけてね。」

「わかったよ。」


二人はノエルと戦った事があるようだ。

ここはリリとサクヤを頼りにするしかない。

と、ここでノエルが声を掛けて来る。

「あの、説得出来ませんでした…。ごめんなさい…。」

「き、気にしないで…。僕はタカヤ、よろしく。」

「私はノエル…です…。よろしくお願いします…。」

そして、クリスからルールが説明される。

「ルールは各チームのリーダーのシールドゲージを0にしたら勝利よ。わかった?」

すなわちリーダーを倒せば勝ちと言う事だ。

「お兄ちゃんはあたし達が守るから安心して戦ってね!」

リリとサクヤがいつもの笑顔でタカヤを励ます。

「うん、ありがとう…。」

こうなった以上、腹くくって戦うしかない。

「戦闘開始!」

こうして実戦訓練が始まった。




ついにタカヤチームとゼルチームの戦闘が開始された。

タカヤ達はある作戦を実行しようとしていた。

「お兄様、私が射撃で引き付けますから、お兄様とお姉様は接近戦でノエルさんを撃破してください。」

「と、言う事だよ、お兄ちゃん!」

「わかったよ。何で、ノエルさんからなの?」

「ノエルさんは強力なシールドを装備していますので、先に倒せば有利になりますわ。」

まずは守り役を叩くという事か。

「お兄ちゃんのニュートロン・ブレードが頼りだよ!頑張ろうね!」

「うん!」

「行きますわよ!バズーカ・ランチャー!」

サクヤはバズーカ・ランチャーを転送させると、ゼル達に向けて実体弾を発射する。

ノエルは大型シールドからプラズマフィールドを展開させてそれを防ぐ。

「今だよ、お兄ちゃん!」

「う、うん!」

タカヤとリリはブースターを吹かせてノエルに向かって突進する。

「ファジー・ブラスト!」

リリは二丁のマシンガンを転送し、シールドを構えたノエルに向かって撃ちまくる。

しかし、弾はすべて防がれてしまう。

「無駄です…!」

「今だよ、お兄ちゃん!」

「うん!来い、グラディウス!」

タカヤの手元にニュートロン・ブレードが転送される。

グラディウスからニュートロン粒子の刃が形成された。

グラディウスは現時点では最強の威力を誇る武器。

たとえノエルのシールドが強力でも一刀両断に出来るはずだ。

「いくぞぉぉぉぉぉぉ!」

タカヤはグラディウスを勢いよく振り降ろした。

これでノエルは倒せる!

と思った、その時!


しかし、ニュートロン・ブレードの一撃は見事に防がれていた。

「な、何で!?」

タカヤだけでなく、リリとサクヤも驚いていた。

「こ、この盾には、ニュートロンコーティングが…施されて…いるんです…。」

「いつの間にー!?」

「聞いてませんわね…。」

リリとサクヤも知らなかった様子だ。

「兄さん、い、今です!」

ノエルの指示と同時に後ろにいたゼルが飛び上がった。

「くらえ…、ブリューナク!」

ゼルの手に巨大な大剣が転送される。

そしてゼルはタカヤに向かって急降下しながら大剣を振り降ろす。

「お兄ちゃん、逃げて!」

リリの警告でタカヤはとっさにノエルから離れる。

しかし、ゼルの攻撃で周囲に衝撃波が発生した。

ゼルの攻撃は何とか回避したが、凄まじい衝撃波でタカヤが吹っ飛んでしまった。

「うわあぁぁぁぁ!?」

「キャアアアアア!?」

タカヤだけでなくリリとサクヤも吹っ飛んでしまった。

ゼルの周りには巨大なクレーターが出来ていた。

吹っ飛ばされた三人は何とか立ち上がった。

しかし、衝撃波だけでシールドが少し減らされていた。

まともに食らったらシールドを一撃で貫通されていたかもしれない。

「大丈夫!?お兄ちゃん、サクヤちゃん?」

「私は大丈夫ですわ…。」

「いてて…、何とか大丈夫…。」

ノエルの盾にはニュートロン兵器が効かないと言う事がわかった。

こうなったら作戦を変更するしかない。

「お兄様、お姉様、お二人はゼルさんを狙ってください。」

「サクヤちゃん、どういう事?」

「ノエルさんの盾にはニュートロン・ブレードが効きません。私がノエルさんを引き付けます。」

「その間にあたし達でゼルを倒すんだね!」

「はい!」

「お兄ちゃん!それで行くよ!」

「わ、わかった!」

三人はゼルを集中狙いする作戦に変更した。

ゼルは手強いが、ニュートロン兵器に対処する兵器を持っていないはずだ。

「それじゃサクヤちゃん、よろしく!」

「わかりましたわ!フラット・ランチャー!」

サクヤはフラット・ランチャーを転送し、ノエルに向けて粒子弾を発射する。

しかし、ノエルのシールドに防がれてしまう。

「何回やっても…同じです!」

ノエルがサクヤに気をとられている隙に、タカヤとリリがゼルに攻撃を開始する。


「お兄ちゃん、あたしから行くよ!」

「う、うん!」

リリがブースターを吹かせてゼルに突進する。

「コールド・ダガー!」

リリの両手にナイフが転送される。

リリはナイフでゼルに斬りかかるが、全て大剣で防がれてしまう。

やはりゼルは相当な強さだ。

ニュートロン・ブレードで決めない限り、三人に勝機はない。

「お兄ちゃん、今だよ!」

リリの合図でタカヤがゼルに突進する。

「うおぉぉぉぉ!」

タカヤはグラディウスでゼルに斬りかかる。

それをゼルは大剣で受け止めようとする。

今度こそニュートロン・ブレードで一刀両断に出来るはずだ。

しかし!


タカヤの一撃はゼルの大剣を破壊出来なかった。

ノエルの盾と同様にニュートロン・ブレードを防いでいた。

「残念だったな…!」

「うそ!?あの剣にもコーティングが…!」

ゼルの大剣[ブリューナク]にもニュートロンコーティングが施されていたのだ。

ゼルとノエルもタカヤ達と同様に新型兵器の試験運用を依頼されていたのだ。

リリの[勇気号]、サクヤの[慈愛号]は新型エンジンのテスト。

タカヤの[希望号]は新型エンジンとニュートロン兵器のテスト。

ゼルとノエルは対ニュートロンコーティングのテスト。

軍は優秀なランダーに新型兵器のテストを任せていたのだ。


「調子に乗るな…!ニュートラル・ランチャー!」

ゼルの手にニュートラル・ランチャーが転送される。

タカヤが使用している物より大型だ。

ゼルはライフルをタカヤに向けて発射した。

弾はタカヤに命中した。

「うわぁっ!」

凄まじい威力で[希望号]のシールドゲージが大幅に減少した。

「お兄ちゃん、大丈夫?」

「い、痛いけどなんとか…。」

この二人はやっぱり強い。

三人がかりでも苦戦するなんて。

「やっぱり、素人の僕がいたんじゃ勝つのなんて無理なんだ…。」

タカヤはもうあきらめかけていた。

「お兄ちゃん、最後まであきらめちゃ駄目だよ!」

「そうですわ。まだ私達にも勝機はありますわ。」

「うん…、ありがとう。もう一回やってみる!」

「その意気だよ、お兄ちゃん!」

二人の笑顔と言葉に励まされたタカヤは再び剣を握る。


「遊びは終わりだ!俺達兄妹の力、見せてやろう…!」

今まで本気じゃなかったって事!?

三人の顔に緊張の色が。

「ノエル、行け!」

「はい、兄さん!」

ノエルはシールドを構えた。

「ティンクル・シールド、ブースト…オン!」

ノエルはシールドからプラズマフィールドを展開しながらタカヤに突進して来た。

「お兄ちゃん!避けて!」

しかし、スピードが早すぎて避けられない。

タカヤはノエルの盾による突進を食らって吹っ飛ばされた。

「うわぁ!」

そこにゼルが大剣で斬りかかる。

「グリズリー・ストラッシュ!」

さらにゼルの渾身の一撃を食らったタカヤは校舎ギリギリの所まで吹っ飛ばされてしまった。

[希望号]のシールドゲージは0になり、タカヤは気を失っている。

「お兄ちゃん!」

「お兄様!」

二人はタカヤの元に走って行った。

「勝者、ゼルチーム!」

リーダーであるタカヤのシールドが消失した為、三人の負けが決まった。



リリとサクヤが駆けつけた時には、タカヤは気を失って倒れていた。

「お兄ちゃん!しっかりして!」

「お兄様、しっかりしてください!」

クリスがすぐに救護班を呼んだ。

「救護班、怪我人が一名出たわ、急いで!」

そして数分後、救護班がタカヤを保健室まで運んで行った。

「リリ、サクヤ、あなた達も行きなさい。」

「はい!」

二人も救護班について行った。

クリスは戦闘を終えたゼルに声をかける。

「ちょっとやり過ぎたんじゃないかしら?」

「まだ手加減した方です…。」

「どう、タカヤ君は?」

「ASの性能はいいですが、まだまだ素人です…。」

「そうね、まだまだこれからね。」

ゼルはノエルと練習に戻って行った。

「さ、戦闘訓練はまだこれからよ!」

クリスは再び戦闘訓練を再会した。



タカヤは保健室のベッドにいた。

僕、負けたのか…。

吹っ飛ばされた所から何も覚えていない。

そして、ようやく目が覚めた。


タカヤが目覚めると、そこにはリリとサクヤがいた。

ずっとタカヤの側にいたようだ。

「お兄ちゃん、気が付いた?」

「お兄様、大丈夫ですか?」

「うん、大丈夫…。」

二人はタカヤに抱きついた。


「良かったー!」

「良かったですわ!」

「く、苦しいよ…。けど、ありがとう。」

「お兄ちゃんを守れなくて、ごめんね…。」

「ごめんなさい…。」

「い、いいよ、気にしないで。これは訓練だったんだから。」

「でも…。」

と、保健室に二人の男女が入って来た。

なんと、ノエルとゼルだった。

「大丈夫そうで…良かったです…。」

ノエルは心配そうに僕を見つめていた。

ゼルはやっぱり僕を睨み付けている。

確かに勝負に負けたら殺すとか行ってたような…。

タカヤはそうなる事も覚悟していた。

しかし!


「すまなかったな…。」

なんとゼルがタカヤに謝った。

タカヤはかなり驚いていた。てっきり殺されると思ったのに。

「え?け、けど僕…。」

「お前がそんな事するような男ではないのは、戦ってみてわかった…。」

「あ、ありがとう…。」

とりあえず誤解は解けたみたいだ。

ちょっと痛い目を見たけど。

「次はもうちょっと強くなれよ…。」

ゼルはそのまま保健室を出た。

「あの…タカヤさん、私のせいで…ごめんなさい…!」

ノエルは顔を真っ赤にして謝った。

「その、誤解は解けたし、もういいんだよ…。」

「あ、ありがとうございます…。これからも私で良かったら…これからもよろしくお願いします…。」

ノエルが初めてタカヤに笑顔を見せた。

「ぼ、僕はタカヤ・シンジョウ。これからも…よろしく。」

「ノエル・アストリアです…よろしく…お願いします…。それじゃ私図書室に戻りますので、また明日…。」

「う、うん、また明日…。」

ノエルは顔を真っ赤にしながら保健室を出た。

「お兄ちゃん、これからはまだまだ練習だね!」

「私たちも教えてあげますから、頑張りましょうね。」

「うん、僕はもっと…強くなりたい…!」

「まずは元気にならないとね!」

「うん!」

今日は無様な負け方をしてしまった。

これからはもっと強くなってリリとサクヤを僕が守らないと…!

タカヤはこれからもランダーとして戦う決意を固めた。

新たな仲間との出会い、そして初めての戦闘訓練。

だが、次回も新たな修羅場がタカヤを待つ!


一体、どうなってしまうのか!?




火星圏、マーズ・エンパイアコロニー。

そこにある火星軍研修施設に四人の男女が集まっていた。

親衛隊長のレオ・ブレイザーに隊員のミア・フィーリスにプレシア・プリステス。

そして、特別顧問のジョー・リュウモンがいた。

彼らは先日のオーディションで集まった新入隊員の指導の為に来たのだ。

前回のオーディションはうやむやのまま終わってしまったが、

『ランダーになりたい奴は誰でも来い!』

と言うジョーの呼び掛けで集まったならず者共はどれぐらいいるのだろうか?

「いよいよ今日メンバーが集まりますね!」

「あぁ…。」

いつにもまして気合いの入るジョー。

「今回の計画に彼らは欠かせないからな…。」

「隊長、計画って何ですか?」

「後でわかるさ…。」

隊員にも知らされていないとは、どんな計画なのか?

「でもたのしそう!」

プレシアはやっぱりこの任務が楽しそうだ。

「プレシア、少しは静かにしてなきゃ駄目よ。」

「はーい!」

ミアはプレシアにはしゃぎ過ぎないように注意する。

「それじゃ、行きましょうか!」

ジョー達は早速研修施設に向かった。

「隊長、あの不良達と関わるのはかなり疲れますね…。」

真面目なミアはならず者達と関わるのがかなりストレスになっているようだ。

「文句を言うな、これも任務だ。行くぞ。」

レオ達もジョーに続いた。


ジョー達は研修施設内の教室前にたどり着いた。

「それでは、入ってみましょうか。」

ジョー達は教室のドアを開けて中に入る。


そこには呼び掛けで集まったならず者達が集結していた。

結局集まったのは十三名…。

オーディションから来ていた者、そして今回初めて来た者。

とにかく新しい部隊の隊員が決まったのである。

何となくランダーになりたい者、ジョーの呼び掛けを挑発と捉えた者等様々だ。

いずれにしても友好的とは言えない雰囲気…。

と、ここでジョーが白い特攻服を着た隊員の元へ向かって行く。



「何だよお前、帰ったんじゃねぇのか?」

「ランダーになりたい奴は来いって言うから来てやったんだよ!」

そこには、オーディションで話を聞いていないと言う理由でジョーに強制退場させられた元宇宙暴走族、テツオの姿が。

一体何しにここへ来たのか?

しかも机の上に足を乗せて座っている。


「お前やる気あんのか、マジで!?」

「やらせろや!」

「わかったわ。足降ろせ!」

ジョーはテツオの足を机から降ろす。

「お前、出戻りだったら挨拶しなおせ!」

「あぁ?うるせぇよ!」

「他の奴らはいいよ。お前はこの前の話聞いてなかっただろ!」

「おめぇがよ、この前話聞いてなかったから帰したんだろ?違げぇのか?」

「そうだよ!」

「だったら今は聞いてんだからいいんだろこの野郎!態度なんて関係ねぇだろ!」

「じゃあ足乗っけとけぇ!」

ここで楽しそうにプレシアがはしゃぐ。

「のっけとけー!」

ミアはすぐにプレシアを止めた。

「おぅ!」


売り言葉に買い言葉…。

まるでコロニー戦争をケンカと勘違いしているかのような態度。

ジョーの言葉を挑発と捉えたのか、再び机に足を乗せ、

『話さえ聞けばいいんだろ!』

と言う隊員、テツオ。

他の隊員も似たり寄ったりである。

『リュウモン上等だ!戦争ぐらい戦い抜いてやるよ!』

と言わんばかりに。

ミアは呆れ果てた表情で見ている。

プレシアは楽しそうだが。

「隊長、まずは挨拶から始めましょうか。」

「それは特別顧問にお任せします。」

「わかりました。じゃあ挨拶に入ります。ジョー・リュウモンです、よろしくお願いします!」


「……。」


しかし、隊員は誰も挨拶しようとしない。

ジョーに反抗しているかのように。


「いつものクソ元気はどうしたんだよ?」

「…。」

「とりあえず挨拶から始めようぜ!起立!立てよ!」

誰も席を立とうとしない。

「おい、立てよ!立ってくれよ!」

一人の隊員が席を立った。

「よし立った!お前ら立て!じゃあ立ってください!これでいいっすか?」

他の隊員も次々と立つ。

しかし、テツオは座ったままだ。

「おい、お前立てよ!」

「立ってくださいだろ、コラ!」

「じゃあ、立ってください!」

テツオもようやく席を立つ。

「立ってください!オラ立てぇ!」

これで全隊員が席を立った。



改めてジョーが挨拶に入る。

「それでは、よろしくお願いします!」


「……。」


「何だよ、挨拶してくださいか?」

「立ってくださいの次は挨拶してくださいか?」

ジョーは一人の隊員の元に向かって行く。

黒い特攻服を来た男だ。

「何だよ、挨拶してくださいか?」

「あぁ!?」

「挨拶も出来ねぇのか?」

「うるせぇよ!」

「挨拶してくださいか?」

「ぐだぐだうるせぇんだよ!」

「お前挨拶ぐらい出来んだろ!?」

「おぅ!」

「じゃあ挨拶してくれよ!」

「よろしく!」

「おぅ、よろしく!」

その後も全員に挨拶を要求して行くジョー。

全員が「よろしく」と言うのにどれ程の時間を費やすのか…。



そして挨拶が終わった後、隊員全員のプロフィールに目を通すジョー。

そしてプロフィールを見たジョーから、とんでもない言葉が!


「ホームラン級の馬鹿だな、こいつら!」

「どうしたんですか?」

「ガイ、テツオ、ゲル、ゲラハ!お前ら高校行ってねぇじゃねぇかよ!」

ここでガイが吠える。

「悪いんか!」

「悪いよ!高校出てねぇでランダーになれる訳ねぇだろ!」


何と四人の隊員が高校を卒業していないという事実が!

火星圏コロニーの法律では、戦闘用ASを操れるのは、最低でも高校を卒業している事が条件である。

四人は作業用ASしか使えないのである。

このままガイ達を退室させるのか?それとも残すのか?

ここでジョーが決断する。


「おい、ガイ!お前は戦闘用使えないからってずれたりするなよ!足並み揃えてやれや!」

「そんな事するかアホ!」

「するなよ!」

「そんなカッコ悪い事するかアホ!」

「お前らもするなよ!」

「しねぇよ!」


『お前らを特別扱いはしない!』

四人の参加を認めるジョー。

しかし、他の隊員は不満げな顔をしている。

『明らかに四人は異分子…。この隊にいる資格はないんじゃないか?』

四人を睨み付ける。

「他のランダーになれる奴はどう思う?」

ジョーが他の隊員の意見も聞いてみる。

しかし、一人の隊員の発言で、教室が信じられない修羅場に!

「邪魔になるんちゃうん?」

隊員の一人、ゴモルが反対する。

「おい、何で邪魔なんだよ?」

「大体なぁ、三週間のしかないのになぁ…」

「何や!?はっきり言えコラァ!」

キレたガイが席を立つ。

「大体なぁ、あと三週間しかないのになぁ!」

「何や!?」

「大体なぁ、あと三週間しかないのになぁ!」

「何や!?」

「大体なぁ、あと三週間しかないのによぉ?」

「何やコラァ!」

ガイがゴモルの席の机を蹴り飛ばす。

すると、ガイとゴモルが掴み合いになって暴れ出した。

「三週間しかないのになぁ!」

「はっきり言えコラァ!」

外に待機していた兵士が乱闘を必死に止める。

「やめろ!やめろやめろやめろやめろやめろ!」



『ランダーになれない奴は邪魔!』

ゴモルの言葉にキレて襲いかかるガイ。

『あくまでジョーの呼び掛けで来ただけ。お前らに言われる筋合いはない!』

そう怒りを爆発させる。

乱闘が収まったが、またしても信じられない修羅場が!


「俺も邪魔やと思うけどな!」

白い特攻服を来た隊員、イービルも反対する。

「何!?」

「ランダーになれん中卒がおっても邪魔なんじゃ!」

「ジョーが参加認めてんだよバカ!」

「俺は認めてねぇっての!」

「おいおいおいおい!」

ジョーが口喧嘩を止めに入る。

すると、テツオが立ち上がり、イービルに向かって行った。

「中卒が悪いんかコラァ!?」

テツオとイービルが掴み合いになり暴れ出した。

また兵士達が乱闘を止めに入る。

「やめろ!やめろ!やめろやめろやめろ!」


『中卒をバカにしてんのか!?』

イービルの言葉にキレて襲いかかるテツオ。

『高校を出た!』『出ていない!』

彼らにとってそんな事はどうでもいい事だった。

ずっと他人を拒絶してきた彼らにとっては本能的な縄張り争いのようなもの。

くだらない、実にくだらない。

ミアは呆れ果てた表情で見ていた。

レオはそれを黙って見ているだけだった。

乱闘が収まった後、ジョーはの口から信じられない言葉が!


「最初に行っとくけど、お前らクズだから。」

「誰がクズじゃコラァ!」

ジョーの言葉に隊員が次々と吠える。

「うるせぇな!そうやって突っかかるからクズなんだよ!」

「うるせぇコラァ!」

「お前らみたいなクズがランダーになるなんて話自体が漫画だよ!」

「何が漫画じゃコラァ!」

「悪いんか!?」

他の隊員も次々と叫ぶ。

「悪いとは言ってねぇよ。俺が言いたいのはお前らがどこまでやれるかって事だよ!」

「…。」

「今はクズかもしれねぇ。お前らそれだけ言われたら反抗するだろ、クズって!」

「おぅ!」

「クズは嫌だろ!おい、クズ!クズ!クズー!」

「誰がクズじゃ!?」

クズ呼ばわりされた隊員が次々と叫ぶ。

楽しそうに見ていたプレシアまではしゃぎ出した。

「くずー!くずー!くずー!」

すると、隊員全員がプレシアを睨み付ける。

ミアはあわててプレシアの口をふさいで謝った。

「ごめんね、みんな…。」



「お前らがそこまで元気あるんだったら一発根性見せてみろよ!お前らの好きな根性っうのを俺に見せてくれ!」

「おぅ!見せてやるよ!」

ジョーの言葉にランダーになる決意を吠える隊員達。

しかし、彼らの本質的な問題は残ったまま。

二人がケンカをすれば、隣の奴までケンカに加わる。

まるで火薬庫…。危険、あまりにも危険過ぎる…。

何はともあれ、三週間の訓練のカリキュラムを説明する時が来た。

しかし、またしても信じられない事態が!




「それでは親衛隊のミア大尉から説明があるからよく聞いておけよ!」

ミアが訓練についての説明を始める。


「皆さんは三週間、私たちの訓練に参加してもらいます。まずは朝5時に起きて基礎訓練を行います。」

すると、次々と隊員の不満が爆発する。

「朝5時に起きれるわけないやんけ!」

「いつも俺が寝てる時間や!」

「無理に決まっとろうが!」

朝5時起床というルールに不満を口にする隊員達。

「あなた達ね、いい加減にしなさいよ…。」

キレかけたミアがハンドガンを取り出そうとした、その時!

「お前らなぁ、朝早いとか抜かすなや!根性あるんやたっら早よ起きてちゃっちゃとやらんかいコラァ!」

不満ばかり口にする隊員達にガイがキレた。

「ランダーなれん奴が大事ほざくなよ!」

サングラスかけた隊員、グラスが食ってかかった。

「何!?はっきり言えや!」

「ランダーなれん奴が大事ほざくなよ!」

「何!?大きい声で言えや!」

「ランダーなれん奴がなぁ!」

「何!?」

キレたグラスはサングラスを外すと勢いよく放り投げた。

グラスはガイの元に行くと、掴みかかって襲いかかる。

また兵士達が二人の乱闘を止める。

「やめろやめろやめろやめろやめろ!」


最悪…。不満を言い、すぐに暴れる、勝手気ままなならず者集団…。

彼らは何をしにここに来たのか?


「お前ら男だったらごちゃごちゃ言わずやれよ!」

「うるせぇよコラァ!」

「だから騒ぐなって!朝5時から訓練やれよ!」

「やってやるよ!」

「5時から叩き起こすからなぁ!」

「おぅ!やってやるよ!」

ついに三週間の地獄の訓練が始まる。

彼らはついて行く事が出来るのか!?



「隊長、こんな人達集めてほんと何するんでしょうね…。」

「まぁ、楽しみにしようじゃないか…。」



そして、次回も次々と信じられない光景が!


第3戦へ続く。











































































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