戦神兄妹

ジェダ

第1戦 お兄ちゃん、一緒に戦おう!

1人の少年が部屋のベッドで寝ていた。

時刻はもう朝の7時だ。

少年の顔からよだれがだらだらと垂れている。

気持ち良さそうな寝顔だ。

その時、少年の近くで目覚まし時計が鳴り響いた。

「うるさいなぁー、もう少し寝かせて…。」

僕は手探りで目覚ましのスイッチに手を伸ばし、押した。

目覚まし時計のアラーム音がようやく止まった。

「もう…こんな時間か…。」

僕はタカヤ・シンジョウ。

ごく普通の高校2年生だ。

いつも通りに平和な日常生活を送っている。

まぶたを開けようとすると、太陽の光が射し込んで来る。

まぶしい。

僕は必死で目を開けた。



しかし、タカヤの目の前に次々と信じられない光景が!


「お兄ちゃん、おはよっ!」

聞き慣れない女の子の声が聞こえる。

すると、僕の側に二人の女の子がいた。

「おはようございます、お兄様。」

二人の女の子が僕に向かって微笑みかけている。

訳がわからない。

きっと夢だ。

「お兄ちゃん、まだ寝ぼけてるの~?」

「そうみたいですわね。」

これは夢に決まっている。

タカヤは再び眠りにつこうとする。

と、その時!



1人の少女がタカヤの手をつかみ、自分の胸に押し当てた。

タカヤの手に小さいけど柔らかい感触が伝わる。

その瞬間、タカヤは一瞬で目が覚める。

「うわぁぁぁぁぁ!?」

「良かった、やっと目が覚めたね!」

「良かったですわ。」

タカヤは慌てて飛び起きた。

すると、そこには活発そうな女の子とおしとやかそうな女の子が座っていた。

「お兄ちゃん、久しぶりだね!」

「お久しぶりです、お兄様。」

いまだにタカヤの頭は混乱している。

「え?え?誰…?」

「お兄ちゃん、あたし達の事覚えてないの!?
あたしだよ、リリ・シンジョウだよ!」

思い出してみても、やっぱり僕には妹なんていたという記憶がない。

「覚えてない…。」

この活発な女の子がリリというらしい。

「じゃあ私の事も、サクヤ・シンジョウの事も忘れてしまわれたのですか?」

このおしとやかでリリより胸が大きい女の子がサクヤというのか。

「…ごめん、思い出せない。」

リリとサクヤは困惑した表情でタカヤを見つめる。

と、その時。


「タカヤー!いつまで寝てるの!早く起きなさい!」

母さんが一階から呼んでる。


母さんもこの娘達の事知ってるのかな?

とりあえずタカヤは部屋を出る事にした。

「まずはお兄様に私達が何故ここに帰って来たのか話す必要がありますわね。」

「そうだね。まずは朝ごはん!お兄ちゃん、行こっ!」

「う、うん…。」

タカヤはリリに引っ張られながら一階に降りた。 
一階に降りると、母さんが朝ごはんを用意してくれていた。

しかもリリ達のも含めて4人分も。

父さんはもう仕事に出掛けたようだ。

「ようやく起きたわね。 さ、早く朝ごはん食べなさい。ほら、リリとサクヤも!」

「はーい、いただきまーす!」

「それでは、いただきます。」

「い、いただきます…。」

朝ごはんは白ご飯に味噌汁だ。

いつもの光景と違う所は、リリとサクヤがいるという事だ。

「やっぱりお母さんのご飯は美味しいね!」

「本当にお久しぶりですわ。美味しいです。」

「ありがと。久しぶりなんだからどんどん食べなさい。」

「はーい!」

タカヤは母にリリ達の事を聞いてみる事にした。

「ねえ、母さん…。」

「どうしたの?」

「母さんはリリとサクヤの事知ってるの?」

と、ここで母親の口から意外な言葉が!


「何言ってるの、あんたの妹じゃない。」

「けど、妹がいたなんて記憶ないんだけど…。」

「やっぱり、覚えてないのね…。無理もないわ、小さい時にリリ達は施設に預けられて離ればなれになったからね…。」

僕が忘れてしまっただけなのだろうか?

母さんは一枚の写真を取り出した。

写真には、父さんと母さんと僕、そして二人の女の子が写っている。

「これがあたし達だよ!」

「そうです。でもこうして久しぶりに帰って来たのですわ。」

「本当、だったんだ…。」

母さんが言うからには間違いないのかもしれない。

けど、それでリリ達は何故突然帰って来たのか?

と、ここでリリが口を開く!

「あたし達が久しぶりに帰って来たのには理由が
あるんだよ。」

「理由?」

「お兄様はコロニー同士で戦争が行われているのをご存知ですよね?」

「うん、知ってるよ。」

ニュースでいつも言ってるなぁ。

コロニーに
被害が出る事はないから興味はなかったけど…。

「あたしとサクヤちゃんはね、コロニーの防衛軍に入ってるんだよ。」

まさかリリ達のような女の子が前線で戦ってるなんて…。

タカヤは驚きを隠せない。

「もちろん学校に通いながらですけど…。それでお母様達に連絡が出来なかったのですわ。」

学校に通いながらコロニーを守っていたなんて…。

リリ達は凄かったんだ。

タカヤは何故今帰って来たのか聞いてみる事にした。


「そうだったんだ…。二人はどうして帰って来たの?」

と、ここで二人の口から信じられない言葉が!!

「実は私達、お兄様をお迎えする為に帰って来たのですわ。」

「どういう事?」

「実は…。」

と、ここでリリが口を開く。

「お兄ちゃん、あたし達と一緒に戦って!」

「へ?」

「実は…、私達と一緒に戦争に参加して欲しいのです…。」

リリ達のいきなりの言葉に困惑するタカヤ。

戦争って…、僕も一緒に戦うって事!?

絶対無理だ!

タカヤは必死に断る。

「戦争って…、そんな僕なんかじゃ無理無理無理無理!」

「けど、ASの使い方はわかってるんでしょ?」

「まあ、授業で何回か装着したけど…。」

「それじゃ話は早いね!それじゃお兄ちゃん、レッツゴー!」


いきなりリリに腕を掴まれて訳も分からずに連れて行かれそうになるタカヤ。

「ちょ、待てよ!学校は学校はどうなるのさ?」

その時、母が笑顔で言う。

「大丈夫よ、もう転入届は済ませてあるから。じゃ行ってらっしゃい。」

まさか母さんまで…。

何がどうなっているのか…。

タカヤはもう頭がこんがらがっていた。

「さ、お兄様一緒に参りましょう。」

サクヤはタカヤの腕を組んで、身体を密着させる。

サクヤの大きい胸の感触が伝わる。

しかし、タカヤにはそんな状況に喜んでいる暇はなかった。

リリにも腕を引っ張られ、玄関まで連れて行かれる。

「それじゃお母さん、行って来るね!」

「行って来ます、お母様。」

「行ってらっしゃい、タカヤの事よろしくね。」

母が玄関で三人を笑顔で送り出す。

「聞いてないよー!」

タカヤがそのまま二人に強引に家の外に連れ出される。

家の前には軍が使用している輸送用のカーゴ・キャリアーが待機していた。

タカヤは二人にキャリアーに乗せられる。

そして、三人を乗せたキャリアーは発進する。

「それじゃお兄ちゃん、あたし達と一緒に戦場へしゅっぱーつ!」

「えーーーーーーーーー!」

こうしていきなり戦場へと連れて行かれるタカヤ。

そして、タカヤの前に次々と信じられない光景が!



一体、どうなってしまうのか!?





人類が宇宙に進出して百年。

人類は地球圏のみならず、火星圏や木星圏にまで大小様々なスペースコロニーを作り、そこを第二の故郷にし、生活していた。



そんな時代、宙歴1500年。

各コロニー国家は、深刻なエネルギー不足に悩まされていた。

地球と違ってエネルギーや水等が無限に供給される訳ではない。

その為、周辺の小惑星からエネルギーを採取するか、定期的に来る地球から送られて来る物資に頼らざるを得なかったのだ。

その為、各コロニー国家は少しでも多くのエネルギーを確保する為に、他のコロニーに侵略行為を始めた。

宇宙用強化装甲服、AS[アサルトスーツ]を使ったコロニー同士のエネルギー争奪戦が始まったのである。

ASは、宇宙服を大幅に進化させた戦闘用パワードスーツである。

ASは強力なバリアを持ち安全性も高い為、コロニー戦争での主力兵器となった。

このコロニー戦争で、エネルギーを根こそぎ奪われたコロニー国家はそのまま滅び、廃墟となってしまう。

希少なエネルギーを狙うのはコロニー国家だけではない。

宇宙海賊のような犯罪者もエネルギーを奪いにコロニーに攻めて来る事も多い。

そして、今もエネルギー資源を巡る争奪戦がコロニー間で続いている。

そしてタカヤもその戦いに巻き込まれようとしていた。

そして、次々とタカヤの前に信じられない修羅場が!



リリとサクヤによって無理矢理カーゴ・キャリアーに乗せられたタカヤは、窓はから街を眺めていた。

キャリアーは街の上空を飛んでいる。

タカヤの住むコロニー、[イズモ]の中にある街だ。

キャリアーの操縦席にリリ達が入って来る。

「フェリスさーん、お兄ちゃん連れて来たよー!」

キャリアーを操縦しているのがフェリスという女性だ。

「あんたが兄貴のタカヤかい?」

「は、はい!」

「あたしはフェリス。イズモ軍の一員さ。よろしくな!」

「よ、よろしくお願いします…。」

これから軍の世話になるのか…。

タカヤの顔に不安の色が。

「あと少しで戦場に着くからもう少し待ってなよ。」

「はい…。」 

それよりリリ達に何で僕が選ばれたのか聞いてみないと。

タカヤはリリに聞いてみる。

「ねえリリ、どうして僕なんかが選ばれたの? 他にも優秀な人はいるのに…。」

「それはね、え~と、なんだっけ? 説明するの苦手だから、サクヤちゃんお願い!」

「もう、お姉様ってば…。お兄様、私がご説明いたしますわ。」

「う、うん…。」

「お兄様にはニュートロンに対する耐性が強いのですわ。」

「ニュートロンって、AS に使われてる…。」

「そうです、ASの動力に使われているエネルギーですわ。」

ニュートロンとは付近の小惑星からしか取れない希少なエネルギーだ。

高い出力を持つ反面、高い毒素を持っており、扱いが非常に難しい為ASのような軍用兵器にのみ使われている。

ニュートロンの毒素に対する強さは個人差があり、弱い人間が大量に浴びると死に至ってしまう。

「僕がそんなに毒素に強いなんて…。」

「耐性の強い人はなかなかいませんの。お兄様はその数少ない人の1人なのですわ。」

「そうなんだよー!」

と、ここで操縦しているフェリスが口を開く。

「このキャリアーには大量のニュートロンを使用するASが積んであるからね。あんたでないと使うのは無理ってことさ。」

「そうだったのか…。」

それで僕が選ばれたのか…。

しかも、僕専用のASまで…。

「みんな、そろそろ基地に着くよ!」

「わかった!」

「もうすぐ戦場ですわね。」

もうすぐ戦う事になるのか…。

タカヤの顔には緊張の色が。


タカヤの顔を見てリリがにっこりと微笑む。

「大丈夫だよ、お兄ちゃん。あたし達が戦い方を教えてあげるからね!」

「そうですわ。頑張りましょう。」

「う、うん…。」

タカヤ達を乗せたキャリアーはイズモ軍の基地に到着した。 



「よし、リリとサクヤはシラサギに急ぎな! ほらタカヤ、あんたも急ぎな!」

「行くよ、お兄ちゃん!」

「あ、うん…。」

タカヤ達はドッグに停泊している攻撃艦[シラサギ]に乗り込んだ。

「行ったか、よし!例のブツを運びな!」

「はい!」

フェリスが部下に指示を出すと、キャリアーから一台のコンテナが出てくる。

その中にはタカヤ用のASが入っていた。

部下達はコンテナをシラサギに運び出した。



「隊長ー!お待たせしましたー!」

「ちゃんとお兄さんを連れて来たね。ご苦労様!」

シラサギの艦内では1人の女性が待っていた。

「お兄様、この方が私達の隊長のクリス様ですわ。」

「あたしがシラサギ隊の隊長であるクリスよ。挨拶は後にしてあなた達は出撃準備を急ぎなさい。」

「了解!」

「お兄様、行きましょう!」

「うん…。」

三人は急いで艦の格納庫へ急いだ。


格納庫ではリリとサクヤ用のASの整備が完了していた。

「サクヤちゃん!」

「はい!」

二人は同時に服を脱ぎ出すと、素早くASを装着する。 

「じゃーん! これがあたし達のASだよ!」

リリが着ているASは[NAS -015F 勇気号]。

青と白のカラーリングだ。

サクヤが着ているASは[N AS-016S 慈愛号]。

ピンクと白のカラーリングである。

「これが戦闘用AS…。」

始めて見る軍用のASに僕は見とれてしまっていた。

「ほら、お兄ちゃんも着替える!」

「お手伝いいたしますわ。」

リリ達に無理矢理服を脱がされ、いつの間にか黄緑と白のカラーリングのASを装着されていた。

「これが僕のAS …。」

と、格納庫のスピーカーからクリスの声が響き渡る。

「それが君専用のAS、[NA S-XXX 希望号]だ。ニュートロンエネルギーの搭載量が多い分、強力な武器を使える。毒性も半端じゃないから適正のない人が使うと数回着ただけで死んでしまうでしょうね…。」

そんな危ないブツを僕に…。

いや、だからこそ僕にしか使えないってことか…。

「三人共! 海賊がコロニーに近づいて来たわよ! 出撃しなさい!」

ついに戦場に行く事になるのか…。

タカヤやっぱり怖くなってしまった。

「リリ、サクヤ、やっぱり僕やめ…。」

やっぱりやめる。

そう言いかけた、その時!

「ほらお兄ちゃん、行くよ!」

[うわあっ!」

リリに無理矢理出撃用カタパルトに押し込まれてしまった。 

「サクヤちゃん、行くよ!」

「はい、お姉様!」

二人もカタパルトに入って行った。

タカヤがカタパルトに入るとさらに身体のあちこちに装甲が装着される。

「希望号、発進準備完了。出撃してください。」

結局無理矢理戦わせられるハメに…。

けどこうなったら、やるしかない!

「は、発進します!」

と、同時にタカヤはシラサギから勢い良く宇宙空間に飛ばされる。

「うわあぁぁぁぁぁ!?」

強烈なGがタカヤの身体に襲いかかる。

「やっぱり作業用とは違う…!」

タカヤは挙動不審になりながら宇宙空間を疾走して行った。

「勇気号、発進するよ!」

「慈愛号、行きます!」

リリとサクヤもタカヤに続いた。

タカヤ達が出撃してからしばらくして、クリスから通信が入る。

「前方から海賊の戦艦とASが接近中よ。 海賊だから楽勝だと思うけど、油断しないでね。」

「了解!」

「了解しましたわ。」

「あのー、クリスさんは出撃しないんですか…?」

まさかこの三人だけで戦えってことは…。

不安になりながらもタカヤはクリスに聞いてみる。

と、ここでクリスから信じられない言葉が!



「見ーてーるーだーけー。」

隊長は出撃なし!?

三人だけで海賊を倒せと?

「そんなー!?」

「大丈夫よ、あんな奴らくらい! 二人共、タカヤ君をしっかり見ててね!」

「はーい!
お兄ちゃん、海賊が来たよ!」

ヘルメットにレーダーが表示され、敵が接近して来た事を示している。

「武器がないけど、攻撃する時はどうすればいいの?」

「お兄様、武器の名前を言えば音声認識で武器が手元に転送されますわ。ほら、こういう風に。」

「フラット・ランチャー!」

サクヤが武器の名前を叫ぶと手元にバズーカ砲のような武器が転送される。

「凄い…!」

「お兄様も手持ちの武器を確認してくださいね。」

「自分の武器か…。」

ヘルメットに武器情報が表示される。

[ニュートロンセイバー グラディウス]と[ASW- 05 ニュートラルランチャー]。

これがタカヤの[希望号]に搭載されている武器である。

「なるほど…。」

「サクヤちゃん、敵が来たよ! お願い!」

複数の海賊のASがコロニーに近づいて来た。

「わかりましたわ。発射!」

サクヤが海賊達に向けてフラット・ランチャーを発射する。

ランチャーから放たれた粒子弾が海賊達を一掃する。

粒子弾の直撃を喰らったASは緑色の光を出しながら消滅した。

「凄い…! 海賊達、死んじゃったの?」

「あの人達死んでないよ。レスキューフィールド[RF]の範囲内ならやられたと同時に戦艦に転送されるから無事だよ。」

RFはASを運用する為には必要不可欠な緊急帰還装置の事だ。

ASが機能停止したと同時に中の人間を戦艦にワープさせる事が出来る。

「けど、RFの範囲外で撃墜されたら助ける事が出来ないので気をつけてくださいね。」

範囲外で攻撃を受けて撃墜される事は即、死を意味する。

RFの範囲内で戦う事がコロニー戦争の基本なのだ。


「まだまだ来る!お兄ちゃん!行くよ!」

「う、うん!」

「ファシー・ブラスト!」

リリが武器の名前を叫ぶと両手にマシンガンが転送される。

それと同時にリリはブースターを吹かせて一気に敵陣に突っ込む。

「行くよ!」

リリは海賊達にマシンガンを撃ちまくる。

マシンガンの直撃を喰らった海賊のASは次々と消滅していく。

海賊達もマシンガンで応戦するが、リリはそれを華麗に避け、敵を撃破して行く。

タカヤは二人の戦いに見とれてしまっていた。

「二人共凄いや…。けど、僕だって!」

役に立たないかもしれないけどこうなったらやるしかない!

「ニュートラルランチャー!」

タカヤの手にライフルが転送される。

「僕だって!」

タカヤは海賊に向かってライフルを撃ちまくる。

しかし、照準がずれてなかなか当たらない。

「当たれ、当たれ!」

撃ちまくっていると、ようやく1人、2人と命中した。

「やったね、お兄ちゃん!」

「その調子ですわ、お兄様!」

海賊達は次々と押されつつあった。

だが、複数の海賊の別部隊がタカヤに接近しているのに三人は気づいていなかった…。



そしてタカヤに戦争の過酷な現実が突き付けられる!

海賊の別部隊が慣れない動きで戦うタカヤに注目していた。

「見たか? あいつ素人だぜ!」

「よし、あいつから殺るぞ!」

海賊達はタカヤの動きから素人だと見抜いたようだ。

別部隊はタカヤに向かってマシンガンを撃ちまくった。


タカヤが海賊達に攻撃している時、敵が接近している事を示すアラートが鳴った。

「右から!?」

いつの間にか別部隊に接近されていた。

タカヤは逃げようとしたが、遅かった。

海賊の放ったマシンガンの弾がタカヤに直撃する。

「うわあっ!?」

だが、タカヤの[希望号]はバリアに守られて無傷だ。

しかし、海賊達は容赦なくタカヤに集中放火を浴びせる。

「うわあぁぁぁっ!」

バリアに守られているとは言え、衝撃はそのまま中の人間に直接伝わる。

マシンガンの攻撃を集中的に喰らっているタカヤの衝撃は相当なものだ。

弾が直撃する度にバリアゲージが減少していく。

このままではタカヤの身体がもたないかもしれない。

「お兄ちゃん!」

「お兄様!」

二人は助けに向かおうとするが、多数の海賊達に阻まれ、助けに行けない。

「やっぱり…、やっぱり、僕には無理だったんだ…。戦う事なんて…。」

タカヤも半ばあきらめ状態になっていた。

「お兄ちゃん、あきらめないで!」

「お兄様、今助けますわ!」

もう、いいんだ…。

やっぱり僕なんか足手まといだったんだ。

もうあきらめてやられてしまおう…。

と、思ったその時!



タカヤに攻撃していた海賊がマシンガンの直撃を受けて消滅する。

誰…?



「お兄ちゃん、お待たせ!」

リリが助けに来てくれた。

他の海賊も次々と攻撃を喰らって消滅していく。

「お兄様、大丈夫ですか?」

サクヤも来てくれた。

助かった…。

「お兄ちゃんはあたし達が守るからね!」

「そうですわ、あきらめないでくださいね。」

「うん、ありがとう…。」

「お姉様、海賊さんは後三人ですわ。」

「よーし、一気に行くよ!お兄ちゃんも行ける?」

「うん、なんとか大丈夫!」

「じゃ、蹴散らすよー!」

「はい!」

「うん!」

タカヤ達は残り三人の海賊に向かって攻撃を開始した。

「バズーカ・ランチャー!」

サクヤの手にバズーカが転送される。

「行きます!」

サクヤは海賊に向かってバズーカを発射する。

放たれた実体弾が海賊を直撃し、消滅させる。

「コールドダガー!」

リリの両手にナイフが転送される。

リリは海賊に突進し、ナイフで切り裂く。

海賊のASはバリアを貫かれ、消滅する。

「あと一人!」

リリは海賊のリーダーにナイフで斬りかかる。

しかし、リーダーはナイフを左手の高振動クローで受け止めた。

「くっ…。」

リーダーは戦闘用のASを装着していた。

リーダーもクローで斬りかかる。

リーダーは予想以上に出来る!

リリは若干押されつつあった。

「二人が必死に戦ってるんだ。僕も、やらなきゃ!」

タカヤは海賊のリーダーに向かって行った。

「グラディウス!」

タカヤが武器名を叫ぶと、手に長剣が転送された。

長剣からニュートロン粒子で形成されたエネルギーの剣が発生する。

ニュートロンエネルギーで出来た剣は、現時点では最強の威力を誇るが、反面ニュートロンエネルギーを大量に使用する。

[希望号]にしか搭載されていない必殺武器だ。

タカヤはグラディウスを構えて海賊のリーダーに突進する。

「こうなったら、やってやる!」

タカヤはリーダーに向かってグラディウスを降り下ろす。

リリに気を取られていたリーダーは避ける事が出来ない。

そのままリーダーはシールドごと切り裂かれ、消滅した。


「AS隊、全滅しましたわ。」

「さ、残りはどうするの?」

リリは海賊船にまだやるか?と呼び掛けた。

海賊船は投稿し、後から来たイズモ軍部隊に拘束された。


戦いがようやく終わった。

「ハァ、ハァ…。」

タカヤは初めての戦闘でひどく体力を消耗していた。

「お兄ちゃん、大丈夫!?」

「お兄様!」

ここでクリスから通信が入る。

「三人共よくやったわね。お疲れさま!すぐに帰還しなさい。」

「了解!」

三人は戦艦シラサギに帰還した。



ようやくコロニーに戻って来た三人だったが、タカヤはひどく疲れ果てていた。

「お兄ちゃん、歩ける?」

「無理はしないでくださいね。」

「なんとか…、大丈夫…。」

そこにクリスが話しかけて来た。

「今日はお疲れさま。特にタカヤ君、いきなり戦わせてしまってごめんね。」

「い、いえ…。」

「けどあなたのその力が戦いを終わらせるきっかけになるかもしれないから、頑張ってね。それじゃ次もよろしくね!」

僕の力が戦いを終わらせる…?

今疲れている僕には考えている余裕がなかった。

「それにしても[希望号]のニュートロン兵器、凄い威力ね…。」

[希望号]のニュートロンブレードは戦闘用ASのバリアを一撃で貫通してしまったのだ。

「あの武器あたし達も欲しいですー!」

リリがクリスにおねだりする。

「お姉様、あの武器は私達のASでは無理ですわ。」

「そうよ。ただでさえ毒性が高いし、あなた達のASのエネルギー量じゃ使えないわね。」

「そっか…。」

サクヤとクリスに指摘され、リリは落ち込む。

「それじゃ、あなた達も暗くならない内に帰りなさい。じゃあね!」

クリスは再び基地に戻って行った。

「お兄ちゃん、今日は頑張ったね!」

「お家に帰りましょう。」

「うん…。リリちゃん、サクヤちゃん…、今日はありがとう!」

「お礼なんていいの。あたし達兄妹なんだから!」

「そうですわ。これからも学校でよろしくお願いいたしますね。」

「うん…。って、学校って!?」

「あ、言うの忘れてた! あたし達これから同じ学校に通うんだよ!」

「え? いきなり転校!?」

「お母さんも行ってたでしょ?転入届は済ませたって。ほら、あそこ!」

リリが指差した先には、かなり規模の施設がある。

基地の一部かと思ってたけど、あれは校舎!?


「あれが私達の通う軍の養成校ですわ。お兄様もこれからお世話になる所ですわ。」

「と、いう事は…?」

「お兄様もイズモ軍に所属しながら学校に通うのですわ。」

「ま、マジですか…?」

「マジだよー! これからもよろしくね、お兄ちゃん!」

「うん、よろしく…。」

「今日は学校はお休みですし、帰りましょう、
みなさん!」

「そうだね、お家へレッツゴー!」





もうすっかり夕方になっ
ていた。

僕達はようやく家に帰る事が出来た。


それより、僕はこれから新しい学校生活が始まるというのか…。

これからどうなるんだろう…。






地球圏と資源を巡って今も争いを続ける火星圏。


火星圏コロニーの住民達は、本来は火星を地球のような惑星に変えて住むつもりであった 。

そう、コロニーは火星に人々が住めるようになるまでの仮住まいの筈だった。

火星圏コロニーによる[火星移住計画]は順調に進んでいるように見えた。

しかしある日、火星遺跡で原因不明の爆発事故が起き、多数の死傷者が出てしまった。

事故の原因はわかっておらず、上層部の判断で火星は危険地域と認定され、計画は中止され、 火星に行く事も禁止された。

その為火星圏のコロニー国家も深刻なエネルギー不足に悩まされ、資源を奪う為に地球圏コロニーへ侵攻を開始した。


そして、火星圏コロニーの一つ、[マーズ・エンパイア]の国軍基地では、新たなAS使いを養成する為に、大規模なオーディションが開かれようとしていた…。




マーズ・エンパイア軍の基地にあるオーディション会場に四人の男女が向かっていた。

一人の男性はエンパイア軍の親衛隊長、レオ・ブレイザー少佐。

若くして親衛隊長に抜擢された実力、人気共に高いエリートだ。

そしてレオの隣にいる少女がミア・フィーリス大尉。

レオの側近としてさまざまな任務をサポートする有能な少女だ。

ミアと手を繋いで歩いている小さな女の子は、プレシア・プリステス。

階級はないが、軍の中では重要な役割を担っているようだ。

そして最後に今回の為に呼ばれた特別顧問、ジョー・リュウモンだ。

四人はようやくオーディション会場にたどり着いたんだ。

「今回はどんな人材が来てるんでしょうか?」

ミアがレオに聞いてみる。

「さあな…、それは入って見てのお楽しみだ。特別顧問、お願いします。」

「わかりました!」

四人はオーディション会場へと足を入れる。

と、次々と信じられない光景が!



会場に入った四人、特にミアは唖然としていた。

会場にいる候補生のほとんどがガラの悪い連中ばっかりだった。

中には宇宙暴走族までいるのか、特攻服を着た奴も大勢いる。

しかも全員がレオやジョー達を睨んでいる。

一触即発の緊迫した空気が会場を覆う…。

そして!

「とりあえず挨拶しときましょうか、レオ少佐。」

「…そうですね。」

「それじゃ、これよりオーディションを始めます!ジョー・リュウモンです、よろしくお願いします!」


「……。」


ジョーの挨拶に対し、候補生は誰も返事をしようとしない。

痺れを切らしたジョーは声を荒げる。

「挨拶ぐらいしろやお前らぁ!」

それに押されたのか、候補生達は投げ槍に挨拶する。

「おぅ!」

「おぅ!」

と、ここでプレシアの口から信じられない言葉が!


「ねーねー、なんでみんなとっこーふくきてるのー?」

「しっ!静かにしてなさい!」

ミアがプレシアを叱りつける。

それを聞いた候補生達は一斉に吠える。

「何やコラァ!?」

「何やコラァ!?」

「静まれ!静まれ!」

ジョーが候補生達を静止する。

「これから軍のASの使い方とか説明するからよく聞いとけよ!」

そして、ようやくジョーによるAS使用の為の注意など、大まかな説明が始まる。


説明している時、一人の候補生が話を聞かずにだらけているが見えた。

ジョーは説明をやめ、白い特攻服を着た男に近づく。


と、ここで次々と信じられない修羅場が!



「お前話聞いてんのか!?」

しかし、白い特攻服を着た元宇宙暴走族のテツオはだるそうにジョーを見る。

「あぁ?」

「お前冷やかしに来たんなら帰れ!」

それを聞いたテツオは立ち上がり、ジョーを睨み付ける。

「うるせぇよ!」

「やる気ないんならとっとと帰れよ!」

ジョーはテツオに掴みかかる。

「やんのかコラァ!?」

テツオも激しくジョーに掴みかかる。

慌てて周りの兵士達が止めに入る。

「手ぇ出すな!やめろやめろやめろやめろやめろ!」

乱闘になってしまった状況を見て、レオはその様子を黙って見ている。

ミアはうんざりした様子だ。

プレシアは状況がわかってないのか、楽しそうに見ている。


乱闘が収まると、ジョーはテツオの腕を掴み、ドアの前まで引きずり出す。

「お前は帰れや!」

そしてジョーはテツオを会場から追い出してしまった。



『冷やかしの奴は帰れ!』

話を聞いていなかった候補生テツオを強制退場させてしまったジョー。

「お前らもアイツみたいに話聞いてないんなら帰れや!」

そのジョーの言葉に候補生は激しく反発する。

「ふざけんなコラァ!」

「話が難しいんじゃあ!」

一斉に吠える候補生にジョーが叫ぶ。

「うるせぇクズ!お前ら何しにここに来たんだ!?」

「軍に入りに来たんじゃ!」

「そうだろ!ギャーギャー言わずに話聞けコラァ!」

しかし、候補生は話が長い、難しいと反発。

それに対し、ジョーがとんでもない行動に出る!



「お前ら何の為にここに来たのか、頭冷やしてよく考えろ、な。」

そう言うと、ジョーは会場を出ようとした。

と、その時!


「てめぇ、このやろぉ!!」

いきなり不良候補生達が一斉に暴れまわり、ジョーに遅いかかった。

ジョーはドアから出ようとしたが、挟まれてしまった。


『頭を冷やせ!』

候補生の抗議を無視し、会場を後にするという行動に出たジョー。

それに対し不良候補生達が無軌道に暴れまわると言う前代未聞の非常事態に!

それを呆れた様子で見ていたミアはレオに言う。

「隊長、なんでこんな人ばっかり集まったんですか…?」

レオは冷静に乱闘の様子を見ながら言う。

「上層部に聞いてくれ…。」

しかし、このままでは埒があかない。

この乱闘を止めなくては。

と、ここでミアがとんでもない行動に出る!



ミアはハンドガンを取り出すと、暴れている候補生の一人を撃ち殺してしまった。

銃声が鳴り響くと同時に暴れていた不良候補生達が一気に静かになる。

「目障りです。静かにしてください。」

ミアの冷たい視線に、不良達はおとなしくなってしまった。

ようやく乱闘から解放されたジョーは候補生達に言う。

「よし、わかった!難しい話しない!今日決めろとは言わん、明日軍に入りたい奴は誰でもここに来い!明日から地獄を見せてやるよ!」

もうオーディションどころではなくなってしまった。

ジョーは軍に入りたい奴は明日また来いと呼び掛けた。

ここから先は地獄の苦しみ…彼らの覚悟を問いただす。

「これでいいですかね、少佐?」

「お任せしますよ。」

「決まりだ! 入りたい奴は明日来い! 解散!」


こうしてうやむやのままオーディションは終了した。


「はぁ、とんでもない人達だったわね…。」

ミアは疲れ果てていた。

「とてもたのしかったよー!」

プレシアは最後まで楽しかったようだ。

「これで何人集まるかだな…。」

と、ここで会場に一人の女の子が入って来た。

「隊長、失礼します!」

レオの部下であるアリア・ワイズマン中尉である。

「どうした?」

「地球圏の偵察部隊からの報告です。イズモコロニーが新型のASを開発したようです。」

アリアは写真を差し出した。

「見せてみろ。」

写真には黄緑と白のカラーリングのASが写っている。

「ついに地球圏も新型を投入したか…。面白い!ご苦労、下がれ。」

「はっ!」

アリアは会場を後にする。

「地球圏との戦いか…。ますます楽しみになって来たな。」 


戦力アップに励む地球圏コロニーと火星圏コロニー。

両者の対立は再び始まろうとしていた…。



第2戦へ続く。
















































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コメント

  • 激しく補助席希望

    凄いですね!1話何文字ぐらいで書かれてますか??

    1
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