転移した先は彼女を人質にとるムゴい異世界だった
第十二話「双竜」
身震いするような肌寒い中、靄は中々取れない。今更全身の筋肉の強張っているのに気付いた。
一歩二歩と慎重をつくし歩いたが、先が見えてこず歯がゆい思いに歩みを早めた。更に数十歩で、ようやく様子がわかってきた。乱れた足もそのまま、建物の陰に隠れて観察する。傷口の痛みも、二体の竜がそれぞれの乗り手と共に乱れ合っているのを見ると、構っている暇はなさそうだ。
二人とも長い髪をしきりに振り乱し戦っているが、ここからではまだ良く見えない。もっと近づかなければ。
一人はやはり先程俺が襲われた相手、赤髪ポニテの女だったが、もう一人もやはりというべきか、家で寝ていたはずの桜川理恵だった。寝ていたのかも怪しいが、とにかく何かできることは無いかと辺りを見回すも、足取りさえおぼつかない俺に何ができるというのか。思わず悪態をつきたくなった。
ここでみすみす眺め続けるというわけにもいかない、どうにかして止めないと……。
「え?」
不意に感じた肩の重みに目をむけた。鷲のような爪にわしづかみにされていた。だいぶ痛いのだが、こんな器用な真似も出来るのかと少し驚いた。肩に食い込む爪のくいこみに目もくれず、ガブリエルはふわりと飛翔。それからぐんぐん二人の方へ近づいていった。
もう数十メートルしかなくなってきたころ、俺は不意に思い出したのだ。ただ飛び込んで何になるんだ。
「あ、やばいやばい!」
満身創痍ながら必死に叫んでしまったが、当然打開策にもならない。
ところが、俺の接近に先んじて気づいた赤髪の女は、理恵から一歩引くと、その白い竜の尾でもって理恵を思い切り吹き飛ばした。それを認めて俺は意を決してそのまま突っ込んだ。
このとき理恵が遠くで呻く中、赤髪の女が何を思ったかはわからないが、
「精々次に会うときまでに、まともに乗れる人間を増やしておくことね」
とだけ吐き捨てて、理恵を放置して空へ飛び去ってしまった。俺を竜の爪に引っ掛けて。
一歩二歩と慎重をつくし歩いたが、先が見えてこず歯がゆい思いに歩みを早めた。更に数十歩で、ようやく様子がわかってきた。乱れた足もそのまま、建物の陰に隠れて観察する。傷口の痛みも、二体の竜がそれぞれの乗り手と共に乱れ合っているのを見ると、構っている暇はなさそうだ。
二人とも長い髪をしきりに振り乱し戦っているが、ここからではまだ良く見えない。もっと近づかなければ。
一人はやはり先程俺が襲われた相手、赤髪ポニテの女だったが、もう一人もやはりというべきか、家で寝ていたはずの桜川理恵だった。寝ていたのかも怪しいが、とにかく何かできることは無いかと辺りを見回すも、足取りさえおぼつかない俺に何ができるというのか。思わず悪態をつきたくなった。
ここでみすみす眺め続けるというわけにもいかない、どうにかして止めないと……。
「え?」
不意に感じた肩の重みに目をむけた。鷲のような爪にわしづかみにされていた。だいぶ痛いのだが、こんな器用な真似も出来るのかと少し驚いた。肩に食い込む爪のくいこみに目もくれず、ガブリエルはふわりと飛翔。それからぐんぐん二人の方へ近づいていった。
もう数十メートルしかなくなってきたころ、俺は不意に思い出したのだ。ただ飛び込んで何になるんだ。
「あ、やばいやばい!」
満身創痍ながら必死に叫んでしまったが、当然打開策にもならない。
ところが、俺の接近に先んじて気づいた赤髪の女は、理恵から一歩引くと、その白い竜の尾でもって理恵を思い切り吹き飛ばした。それを認めて俺は意を決してそのまま突っ込んだ。
このとき理恵が遠くで呻く中、赤髪の女が何を思ったかはわからないが、
「精々次に会うときまでに、まともに乗れる人間を増やしておくことね」
とだけ吐き捨てて、理恵を放置して空へ飛び去ってしまった。俺を竜の爪に引っ掛けて。
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