転移した先は彼女を人質にとるムゴい異世界だった
第九話「ある日ある時-2」
理恵はすやすやと肩のあたりで寝息を立て始めた。
中一の時には入り浸った。美少女なわけだ。
最初の内は当然のことながら壁があった。ところがその都度見る彼女の火照り顔を見ていると、ついつい一線を越えたくなる。この頃からまた理恵に対する意識も変わって来た。従順で特に拒むことも無い彼女が、都合のいい存在というものに変わりつつあったに違いない。
それから中学を卒業すると、同意の上でとある辺境にある、日本の端くれのような村に移住した。山の麓の典型的な田舎である。俺と理恵は本当に切っても切れないような縁になった。三人で暮らすには少々苦労がいるけれど、親切な村の人が同情を寄せて手伝ってくれることも度々あった。中卒だ。理恵は高卒認定試験を受ければどうってことないと言うが、なんだかちょっと大切な物を欠かしたような気になる。
村に移り住んでから少したった頃。受け入れてくれた村の人の手伝いのもと、なんとか窮地を通り抜けたが、その時には動揺が隠し切れなかった。その時の俺は誰の目にもおののいているように見えただろう。
そこまでのことかどうか俺個人には判断つかないが、日々理恵のことを見ていると、とりとめのない罪の意識にさいなまれていった。ただ茫然とみていた。
世間からは失踪していたため、形ばかりで苗字を変えるということはしていない。そもそも法律的には俺は結婚できる年齢ではないし。
この時も、彼女の俺に対する気持は少しも変わらず、それどころかさらに勢いを増しているようだった。山の中を手をつないで連れられたり村を散策したりと、昔と何変わらぬようなことをし続けていた。二人の間の空気の違いを今更になって意識し始めた。
自分は悪くないというつもりもないが、彼女に出会わなければごく普通の生活を営んでいたであろうことは間違いのない事だろう。中卒で失踪して日本の辺境に籠って、育児なんて常識離れした生活なんてのはなかっただろう。
まあ楽観的に捉えれば中学生にして駆け落ちして隠居生活をしているにすぎないのだが、俺には重かったらしい。なさけないことに。
いつの間にか二人の間の温度差は増えて行く。それを意にも返さない彼女の態度に、狂気を感じたのだか、申し訳なさを感じたのだかはよくわからない。だからあの悪魔の、人面石の仕打ちも、あながち因果応報とか自業自得とか、そんな気持ちで受け入れているのかもしれない。
異世界に来たのだからきれいさっぱり忘れてしまって、俺の気持ちさえ変わればちょっと風変わりな家族というのにとどまるはずなのだから、早いうちにやり直してしまえばいい。
でもこの世界では以前の世界での事実もない。本当に戻る意味があるのか……。そこは落とし前をつけるべきなのか。
音もなくちっこい竜が頭から飛び降りて床に眠った。はっとそれを見た。そういやこいつの血は拭いてやらなかったけど大丈夫かな? まあ特に影響はなかったみたいだが。
そして俺はそっと横になり目を閉じた。明日から何をすりゃいいんだろうと考えながら。
中一の時には入り浸った。美少女なわけだ。
最初の内は当然のことながら壁があった。ところがその都度見る彼女の火照り顔を見ていると、ついつい一線を越えたくなる。この頃からまた理恵に対する意識も変わって来た。従順で特に拒むことも無い彼女が、都合のいい存在というものに変わりつつあったに違いない。
それから中学を卒業すると、同意の上でとある辺境にある、日本の端くれのような村に移住した。山の麓の典型的な田舎である。俺と理恵は本当に切っても切れないような縁になった。三人で暮らすには少々苦労がいるけれど、親切な村の人が同情を寄せて手伝ってくれることも度々あった。中卒だ。理恵は高卒認定試験を受ければどうってことないと言うが、なんだかちょっと大切な物を欠かしたような気になる。
村に移り住んでから少したった頃。受け入れてくれた村の人の手伝いのもと、なんとか窮地を通り抜けたが、その時には動揺が隠し切れなかった。その時の俺は誰の目にもおののいているように見えただろう。
そこまでのことかどうか俺個人には判断つかないが、日々理恵のことを見ていると、とりとめのない罪の意識にさいなまれていった。ただ茫然とみていた。
世間からは失踪していたため、形ばかりで苗字を変えるということはしていない。そもそも法律的には俺は結婚できる年齢ではないし。
この時も、彼女の俺に対する気持は少しも変わらず、それどころかさらに勢いを増しているようだった。山の中を手をつないで連れられたり村を散策したりと、昔と何変わらぬようなことをし続けていた。二人の間の空気の違いを今更になって意識し始めた。
自分は悪くないというつもりもないが、彼女に出会わなければごく普通の生活を営んでいたであろうことは間違いのない事だろう。中卒で失踪して日本の辺境に籠って、育児なんて常識離れした生活なんてのはなかっただろう。
まあ楽観的に捉えれば中学生にして駆け落ちして隠居生活をしているにすぎないのだが、俺には重かったらしい。なさけないことに。
いつの間にか二人の間の温度差は増えて行く。それを意にも返さない彼女の態度に、狂気を感じたのだか、申し訳なさを感じたのだかはよくわからない。だからあの悪魔の、人面石の仕打ちも、あながち因果応報とか自業自得とか、そんな気持ちで受け入れているのかもしれない。
異世界に来たのだからきれいさっぱり忘れてしまって、俺の気持ちさえ変わればちょっと風変わりな家族というのにとどまるはずなのだから、早いうちにやり直してしまえばいい。
でもこの世界では以前の世界での事実もない。本当に戻る意味があるのか……。そこは落とし前をつけるべきなのか。
音もなくちっこい竜が頭から飛び降りて床に眠った。はっとそれを見た。そういやこいつの血は拭いてやらなかったけど大丈夫かな? まあ特に影響はなかったみたいだが。
そして俺はそっと横になり目を閉じた。明日から何をすりゃいいんだろうと考えながら。
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