○○系女子の扱いには苦労する

黄緑 碧

6話―3「つけてきた」

 まぁ、天気はあいにくの曇り空であるが、このくらいが夏は丁度いい。
 柔らかい風を感じながら、足を進める。

 ブルブルッ。

「な、なんだ?」

 突然太もも付近が震えた。
 振動した部分へ手を宛がってみる。

「スマホか……」

 忘れてた。
 そう言えば家出る前ズボンのポケットに入れてたわ。
 短く震えたそれをポケットから取り出し、メールと思われることからスリープモードから復帰させてみた。

『諒:今から学校に来れないか?』

 諒からだった。なぜに今学校。
 メールを見てそう率直に感じた。
 日曜日に学校行く理由なんて無いからだ。

 何か企んで俺を誘うなら、もう少し高度な話術を駆使するべき。
 自分で言うのもなんだけど。
 つか、誰でも今の内容じゃ怪しむと思う。

 そんな怪しさ満載の親友に対し、断りのメールを返してやった。
 すると、即答で返信が来た。

『諒:何かおごるから頼むっ』

 仕方ない、引き受けよう。
 おごってくれるとあっちゃ、断る理由があったとしてもそれを投げうってでも喜んで頼まれるぜ。
 ただで食える食べ物ほど旨いものはない。

 俺は、了承のメールを送り、学校へ向かった。
 ……。…………。
 歩きでは結構あるな。
 痛む足をかばいながら門をくぐり昇降口に入ると、なぜか長田がいた。

「どうしたんだ?」
「……何も聞いてないのかしら?」
「? まったく何も」
「諒のバカ……」

 額に手を当て、ため息をつく長田。
 どうやら諒のやつ長田がいると言うのを俺に伝え忘れていたようだ。

「ところで、諒は来るのか?」
「来ないわ」
「は?」
「きゅ、急に伊津美にパシられたとか言ってたわ」
「……」

 だからって何の連絡も無しは酷いだろ。
 俺がもし女だったらキレて帰ってるな。
 今日は長田がいるから帰らないけど。

「そんなわけだから、あたしが諒の代わりにいるって訳」
「なるほど。んで、俺を呼んだ目的はなんだ?」
「分からないわ。まったく聞いてないし」
「……」

 呆れるわ……。
 そんなやつだとは思わなかった。

「か、代わりとは言ってはなんだけど、モデルになってくれないかしら?」

 まったく代わりになってないんだが。
 むしろ悪化してるし。
 でもなぁ、断りにくいんだよね。
 すんごいまっすぐな瞳で俺を見てくるから。

「別に構わないぞ、暇だし」
「じゃあ、美術準備室行くわよっ」
「お、おう」

 緊張の面持ちが一転パッと花が咲いたように見えるような笑顔を浮かべ、長田は俺の腕を掴み引っ張っていく。
 意外と長田って力あるんだよな。
 勝手なイメージで弱そうに見えてた。

 そう考えているうちに引っ張られながら美術準備室に到着。
 日曜日なので、美術室は元から静かなのに最奥の準備室に入ると、より一層静寂に包まれている。

「早速だけど……」

 引っ張っていた俺の腕を離し、踵を返す。
 フワッと香水のようないい臭いが柔らかくあたった。
 好みのタイプだったらイチコロだわ。

「そこのイスに左手置いてくれるかしら」
「分かった」

 どうやらもうすでにスイッチが入ったらしい。
 表情がキリッとした。
 女の子のこういう仕草がギャップ? を感じていいと、どこかのテレビ番組が特集を組んでいた気がする。

「あと、約束覚えてる?」
「約束?」

 そんなことした覚えがない。
 一体いつしただろうか。

「こすぷれしてモデルしてくれるっていう」

 ……なんかしたような気がするな。
 けど、あれは冗談じゃなかったのか? 

「もちろん強制じゃないけど」

 怖っ。目が笑ってねぇ。

「き、際どいものでなければやるよ」
「ありがとっ。みんなに良い報告が出来るわ」

 礼を言われても素直に喜べない。
 諒のやつ大変なんだろうな。
 こんな幼なじみじゃ。
 あ、ウチの幼なじみも似たようなもんか。

「出来たわよ」

 ウチの幼なじみを引き合いに出し顔を思い浮かべていたら、長田が終了宣言をした。
 今日は早いな。
 前回はだいぶかかったのに。

「見せてくれ」

 長田には前科があるからな。
 俺を女の子として描いたっていう前科が。

「いいわよ」

 と、臆することなく至って普通に完成したものを差し出してきた。
 さっきの体勢から直り、それを受けとる。
 今回は大丈夫かな。

「こ、今回も女子が練本だから」
「何でだよっ!」
「何でって、前にも言ったじゃない」

 き、期待した俺がバカだった……。


 ガラガラッ!


 な、なんだ!?

「ストープッ! ……あれ?」

 か、円芭っ?
 どうしてここが分かった。
 いや、なぜ円芭がここにいる。
 大股で息も絶え絶え、何やら焦ってここに来た感じだが。

「こっちの方が“あれ? ”よ」
「確かに」
「細かいことはどうでもいいの」
「いや、良くないし」
「……」
「……」

 アイコンタクトで黙れ指示を頂いたので黙ります。

「今日は日曜日だけど」
「それがなに? 私が学校に居ちゃ悪いわけ?」
「だから悪いって言ってんじゃないのよ」

 頬を掻いて少しキレ気味の円芭に苦笑いを浮かべる長田は続けて

「どうしてここを当てれるのよって言ってるの」

 問に問で返した。
 中々長田もやりおる。

「それは、たまたま祐の後ろ姿が見えたからつけてきたの。途中で見失ったけど」

 何て言ったこいつ今。
“つけてきた”って聞こえたような気がするんだけど。
 まさか気のせいだよな。

「……」

 長田も俺と同じフレーズに違和感を覚えたのか、まばたきをぱちぱちしながら言葉を無くしている。

「と、ところで二人して何してたの? こんなところで」
「モデルになってもらってただけよ」
「……」
「ホント?」
「なんで嘘つくのよ」
「……」
「さっきから練本黙ってるけど何か言いなさい。おたくの幼なじみが大きな勘違いしてるから」
「やましいことは何一つしていない」

 これで信じてくれなかったらもうそのまま勘違いされとこう。
 訂正するのがめんどくさい。

「……信じる」

 ヤダ、この人信じおった!

「え~……。円芭ってそんなに素直だっけ?」
「祐の目が嘘ついてなかった」
「さすが幼なじみね……」

 感心している場合じゃねぇよ。
 だいぶ由々しき事態だ。
 嘘ついた際の行動が円芭にバレてるみたいだからなっ。

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